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監査役とは?役割や権限、報酬や適した人物など徹底解説

シンカキャリア編集部

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更新日:2024/07/11

企業の監査を行う「監査役」は、健全な経営に欠かせない重要な存在です。しかし、「監査役はどのようなことをしているのか」「誰でも監査役になれるのか」と疑問を持っている人もいるでしょう。この記事では監査役の基礎知識から役割、業務内容、報酬、監査役に適した人材などを解説しています。これから監査役を設置する予定の企業や、監査役へのキャリアアップを考えている人に役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

企業の監査を行う「監査役」は、健全な経営に欠かせない重要な存在です。しかし、「監査役はどのようなことをしているのか」「誰でも監査役になれるのか」と疑問を持っている人もいるでしょう。

この記事では監査役の基礎知識から役割、業務内容、報酬、監査役に適した人材などを解説しています。これから監査役を設置する予定の企業や、監査役へのキャリアアップを考えている人に役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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監査役とは?

監査役とは、株式会社において取締役の職務執行状況を監督・監査する役職のこと。取締役と同じく会社の役員です。

取締役は、会社における業務の執行に関して意思決定を行う役職です。取締役が違法行為を行う、またはそのおそれがないか監査役が調査し、不正が発覚した場合は是正します。

監査役は取締役とは違う角度から企業経営に携わり、会社や株主、従業員の利益を守る役職だといえるでしょう。企業のガバナンスやコンプライアンスが重視される現代では、監査役の重要性が高くなっています。

監査役の役割

監査役の役割には、取締役の職務の執行を監査する「業務監査」と、決算などに関わる「会計監査」の2つがあります。

業務監査は経営目標の達成を支援することを目的としており、会計監査は株主や金融機関などのステークホルダー(利害関係者)を保護することを目的とします。監査して不正が見つかった場合には、取締役会に差止請求したり、株主総会で報告するのも監査役の役割です。

業務監査

業務監査とは、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているか、経営目標達成のために適切かつ合理的に業務が行われているかチェックすることです。監査役は取締役から事業の状況を報告してもらい、会社の業務や財産の状況について調査します。

一般的には「適法性監査」と呼ばれていて、取締役の作成した事業報告書が適法であることを確認し、取締役の不正などによって会社や株主、従業員などが不利益を被らないために行います。業務監査が終わった後に監査報告を作成するのも監査役の業務です。

業務監査は会社の経営目標達成を支援し、コンプライアンスを徹底するうえで重要な役割を果たします。

会計監査

株式会社では決算時に損益を計算する書類の作成が必須となります。計算書類は定時株主総会に提出される前に会計監査が行われ、株主総会の招集通知時に、会計監査と業務監査の結果が記載される「監査役会の監査報告」が株主に提供される流れです。

会計監査では、取締役などが作成した経理上の計算書類が公正妥当な会計基準に基づいて作られているか、会計基準に基づいた表示がされているか確認します。

その際には、法的な不正や、株主に不利益な会計操作がないかなどもチェックして、監査済みの計算書類であり信頼性のあることを株主に提示する役割があります。そのため、会計監査を行う監査役には会計の専門知識を持った、信頼性を確保できる人材を選ぶことが大切です。

監査役の選出方法

監査役は取締役と同様に会社役員となるため、会社法第341条に則り、株主総会の普通決議によって選出されます。

まず、監査役としての選定基準を満たす候補者を選び、就任を依頼します。条件によっては断られる可能性もあるため、複数の候補者をピックアップしておき、雇用方法や報酬を検討しておくことが必要です。

絞られた候補者について監査役または監査役会の同意を得られたら、株主総会で決議します。また、現時点で監査役が2名以上いる場合は、その過半数から同意を得なければ新たな監査役の選任はできません。

監査役の任期

監査役の任期は、会社法により原則4年と定められています。株式の譲渡上限を定めている非公開会社の場合は定款によって10年まで延長が可能です。

取締役の任期が2年なのに対し、監査役の任期は倍以上長くなっています。これは監査役の実効性を高めるためで、同じ人が任期満了後再任されることもあります。役員の変更があった場合は役員変更の登記手続きをすることが法律で決まっており、再任の場合でも監査役の変更登記が必要です。

監査役の設置が必要な企業とは

以前は、株式会社には「取締役会」「株主総会」「監査役」が必須でした。しかし、2006年の会社法施行により、一定の条件を満たした会社は監査役設置が任意になりました。

現在も監査役が必要な企業は「取締役会設置会社」「会計監査人設置会社」の二通りになります。また、一定の条件を満たす企業は「監査役会」の設置もする必要があります。

取締役会設置会社

取締役会設置会社とは取締役会を置く株式会社のことです。会社法では取締役会設置義務のある株式会社が定められていますが、それ以外の会社は取締役会設置が必須ではありません。

しかし、取締役会を設置すると、株主総会を開かなくても経営の重要な決定ができるなどのメリットがあるため、多くの会社が取締役会を設置しています。定款に定めることによって取締役会の設置ができ、その場合は原則として監査役の設置も必要になります。

ただし、非公開会社で会計参与を設置している場合は、取締役会を設置していても監査役設置は必要ありません。

会計監査人設置会社

会計監査人とは会計監査を職務とする会社内の機関のことであり、会計監査人設置会社とは会計監査人を設置する株式会社のことです。

資本金5億円以上または負債200億円以上の会社を大会社と言いますが、大会社には会計監査人設置が義務付けられています。会計監査人設置会社には監査役設置が前提となっており、大会社では監査役の設置は必須の条件になります。

大会社において違法行為や不正が発覚すると、ステークホルダーだけでなく、社会的に大きな影響が出るおそれがあるため、監査役は非常に重要です。

監査役の種類

監査役にも種類があり、「社内監査役」「社外監査役」「常勤監査役」「非常勤監査役」に分かれます。複数の監査役によって形成される「監査役会」についても解説します。

社内監査役

社内監査役はその会社の役員や従業員であった経歴を持つ人が監査役に就任するケースです。社内監査役は会社の内部事情に詳しいため、業務監査において問題点を発見しやすかったり、豊富な社内人脈によって監査のための情報収集や調査がしやすいメリットがあります。

一方で、外からの視点で監査がしづらいなど客観性に欠ける点や、社内でつながりのある人間関係や経営陣に厳しく対応することが躊躇されるなどの問題点もあげられます。

一般的には社内監査役が常勤監査役になるパターンが多いようです。

社外監査役

社外監査役は社外出身の監査役のことで、企業のコーポレートガバナンス強化のための要件を満たした人材が選ばれます。

社外監査役には、就任の前の10年間にその会社、または子会社の業務執行取締役や会計参与、支配人、または従業員などの経験がないことなどが求められます。当該企業の経営陣との慣れ合いが想定される人を排除して、監査役としての独立性を担保するための規定です。

一般に企業内部と接する機会の少ない非常勤監査役が社外監査役になる傾向があります。

常勤監査役

常勤監査役は、他に常勤する必要のある仕事についておらず、会社の営業時間中はその会社の監査役として職務に当たっている監査役のことです。勤務する日数については会社法では決まりがなく、一般的な企業では週に3日から4日以上出社する監査役は常勤とみなされるようです。

常勤監査役は社内監査役でもあることが多く、会社の内部を熟知していて調査しやすい反面、客観性に欠けやすく、十分なチェック機能が働かない可能性も指摘されています。

非常勤監査役

非常勤監査役は常勤監査役以外の監査役を指します。出社するのは月に数回の取締役会や監査役会出席のみのことが多く、常勤のように頻繁には出社しません。

一般的に非常勤監査役になるのは社外監査役であることがほとんどです。当該企業以外の業務を持っている人や、知見・経験の豊富な人材を選任することで、監査の深度が増すことが期待できます。

そのため、非常勤監査役には弁護士や公認会計士など、法律や会計に関する知見が豊富な専門家が選出されることが多くなっています。

監査役会

監査役会とは複数の監査役によって形成された、取締役会の業務を監査する機関のことです。監査報告書の作成や常勤の監査役の選定・解職、監査の方針、業務及び財産の状況の調査方法などを決定するのが業務になります。

大会社かつ公開会社の場合は「監査役会」の設置が義務付けられており、監査役会には3人以上の監査役と、そのうち1人は常勤監査役であることが必要です。

監査役会を設置することで、監査役が正しく機能しているかのチェックができ、監査の実効性が上がり、社会的な信用も高められます。

監査役の主な権限

監査役は独立性を持って、事業の状況を調査しなくてはなりません。監査役はその職務や役割を遂行するために、会社法においてさまざまな権限が与えられています。

①報告要求・調査

監査役は、取締役会の報告では情報が足りないと判断する場合には、追加の報告を依頼することができます。また、いつでも取締役および使用人に対して事業の報告を求めたり、会社の業務・財産の状況を調査することが可能です。

さらに、一定の条件の下で子会社に対しても報告の要求や、その業務・財産の状況を調査する権限を持っています。取締役は監査役からの要求がない場合でも、会社に著しい損害をおよぼすおそれがある事態を発見した際は直ちに監査役会に報告しなければなりません。

②取締役の違法行為の阻止

監査役は取締役会で違法、または著しく不当な決議がされないように、すべての取締役会の会合に出席し、未然に防がなくてはなりません。

取締役会の場に限らず、取締役の不正行為またはそのおそれ、法令・定款違反の行為、また著しく不当な事実があると認めた場合には取締役会を招集できます。取締役会に出席し、意見を述べたり、取締役の不正・違法な行為に対して当該行為を止めるように請求する権限があります。

③会計監査人の選任議案

大会社かつ公開会社の会計監査では、株主総会において公認会計士または監査法人を会計監査人として選任しなければなりません。その際の選任議案の内容は監査役会に決定権限があります。

監査役が会計監査人の選任・解任・不再任議案などの内容を決定し、会計監査人の報酬については取締役が定める権限を有しています。また、監査役は他の監査役の人選について株主総会で意見を述べる権利があり、監査役を辞任した後もその権利は保有されます。

④会社・取締役間の訴訟

会社・取締役間の訴訟は監査役が会社を代表します。監査役は会社と取締役の間でなんらかの不当行為が見つかった際に訴訟を起こせる権限を有しています。

会社の違法行為を是正したり、差し止めるための請求を行うこと、取締役の違法行為による損害賠償のための会社訴訟提訴、株主総会における監査結果報告なども監査役に与えられた権限です。

監査役の報酬相場

監査役の報酬は、定款または株主総会の決議によって決められます。決議により監査役の報酬総額が決定され、その後で監査役同士の協議によって個別の配分が決定されます。

報酬額は会社の規模や、常勤か非常勤かなどによって異なり、非常勤の方が低くなる傾向があるようです。一般的には常勤監査役で500〜1,500万円程度、非常勤監査役で100〜500万円程度が目安です。

大手企業によっては数千万円にのぼることもあり、企業による差や、監査役の経歴などでも違ってきます。

監査役になれないのはどのような人?

監査役を選ぶ際には、欠格事由に考慮が必要です。以下のような監査役になれない条件がありますので確認しておきましょう。

監査役の欠格事由

会社法では取締役の欠格事由を監査役でも準用しています。以下の条件に当てはまる人は監査役にはなれません。

  1. 法人
  2. 成年被後見人・被保佐人
  3. 会社法や金融商品取引法などの法律において罰則や刑に処され、執行後から2年を経過していない者
  4. 3以外の法律による禁固以上の刑に処され、執行が終わるもしくは執行を受けなくなるまでの者

監査役の兼任禁止の条件

監査役は、監査を行う会社もしくはその子会社の「取締役」「会計参与」「執行役」「使用人」は兼任できないことが会社法で定められています。

つまり、会社の取締役は自社の監査役には就任できず、監査役が取締役になることもできません。これは監査する側とされる側の立場を明確に分ける必要があるためです。

監査役に適した人物とは

監査役には、職務を遂行するに足る専門知識や能力のある人を選任しなければなりません。

どのような人材が監査役に適しているのか、一般的にふさわしいとされている職種や人材について紹介します。

弁護士

業務監査では、法律に則った事業運営が行われているかをチェックします。そのため法律の専門家である弁護士などは監査役にピッタリです。

業務において、たとえば産地偽装などの法律違反を犯すようなことがあれば、企業の信頼は失墜し、株価は暴落して株主の利益を害することになります。当然売り上げは低下し、従業員の年収にも影響が出るでしょう。

そのような事態を未然に防ぐためにも、弁護士を監査役に迎える会社が多くなっています。

公認会計士・税理士

公認会計士は、企業会計の監査ができる独占資格であり、税理士と共に会計・税務の専門家として監査役に適しています。

公認会計士・税理士による会計監査は、粉飾決算の防止など、会社のダメージになる大きな損害を未然に防ぎ、ステークホルダー(利害関係者)を守ることができます。

また、公認会計士・税理士はさまざまな企業の監査を行っているため、会計上の問題になる点を熟知しているため監査役にふさわしい存在です。

内部監査経験者

内部監査とは、業務上の不正の防止や業務の改善を目的として、企業が自ら行う監査のことです。

内部監査の担当者は法務・税務、どちらも監査していた経験があるので、関連する法律や会計の知識を持っています。業務部門では気づかない問題点も発見してくれるなど、観察眼もあり、コンプライアンス意識が高い人が多く、監査役に適しています。

監査役へのキャリアアップを検討している人は、法務や税務の知識を習得し、内部監査担当者にまずは就任することもキャリアパスの一つといえるでしょう。

監査役は企業の適切な経営を守る重要な役職

監査役は、企業の適切な事業運営と経営を監督・監視する役割を持つ重要な役職です。監査役の業務内容や権限を理解し、信頼のおける自社にとって有利な人材を選ぶことが大切です。

新たに監査役設置を検討している企業においては、企業のコーポレートガバナンス強化に大変役立つことが理解できたのではないでしょうか。監査役への転職を考えている人は、内部監査担当を経たキャリアパスも検討してみてください。

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