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企業会計を第三者立場で監査する専門家、公認会計士の活躍の場である監査法人は令和3年3月末現在で国内に262カ所あるとされており、規模ごとに年収や仕事環境にも違いが見られます。公認会計士の国家資格取得から登録までのプロセスを含め、監査法人で長きに渡って働くための方法や収入、業務状況についてご紹介します。公認会計士を目指している人、監査法人での勤務に興味のある人は参考にしてください。
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監査法人とは
監査法人とは企業会計をチェックして、適切に処理されていることを証明する機関を指します。昨今は企業がステークホルダーからの支持や社会的信頼を得るカギとして、コーポレートガバナンスや国際基準に適合したファイナンス管理の緊要性が叫ばれています。監査法人は金融商品取引法や会社法などに基づく監査を通してクライアントの財務管理の透明性を保証する役割を担っており、企業の公正な経済活動を後押しする働きも担う存在と言えます。
監査法人の種類
監査法人は収入や規模などに応じて以下の種類に大別されます。
【監査法人の種類】
- 大手監査法人(BIG4)
- 準大手監査法人
- 中小監査法人
大手監査法人(BIG4)
公認会計士・監査審査会「令和4年版 モニタリングレポート」では国内上場企業を概ね100社以上監査し、常勤の監査実施者を1000人以上抱える4法人を大手としています。以下の4法人は4大グローバルネットワークの事務所に加盟しており「BIG4」と呼ばれています。ネームバリューも突出していて、大企業の案件も多数抱えています。
【大手監査法人(BIG4)】
- 有限責任あずさ監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- EY新日本有限責任監査法人
- PwCあらた有限責任監査法人
レポートによると監査法人に所属する公認会計士の7割は大手に所属しています。「大きな組織の中で活躍したい」というモチベーションの高い人や高収入を望む人にとってはうってつけの職場で、海外勤務のチャンスをうかがう人も多いです。ただし作業量も膨大で長時間勤務になりやすいため、ハードワークを苦に感じないタフな精神力やバイタリティーが求められます。
準大手監査法人
先に挙げたレポートでは、大手に準ずる規模の準大手として以下の5法人を挙げています。
【準大手監査法人】
- 仰星監査法人
- 三優監査法人
- 太陽有限責任監査法人
- 東陽監査法人
- PwC京都監査法人
レポートによると準大手監査事務所に所属する社員は30~100人、常勤職員は200~800人を目安としています。大企業の案件を担当するなど活躍のチャンスにも恵まれる一方で、大手に比べると比較的ワークライフバランスの取れた環境とも言えます。 実際に大手法人経験者が中途入社するケースもしばしば聞かれます。業務量、収入、プライベートのバランスを重視しながら監査やコンサルティングの仕事を続けたいという人におすすめです。
中小監査法人
大手、準大手以外の法人は中小監査法人に位置付けられます。中小監査法人の業務ではクライアントとは互いに比較的規模が小さいこともあり関係が密になりがちで、監査だけでなく実務や経理のアドバイザリーの役割を兼ねるケースも想定されます。また規模が小さいためマネジメント職などへの昇格も比較的スムーズです。そのためコミュニケーションやマネジメントスキルの高い人にとって、長く勤めやすい環境と言えます。
監査法人の仕事内容
監査法人で公認会計士が手掛ける主な仕事の内容は、以下に大別されます。
【監査法人の仕事内容】
- 監査業務
- コンサル業務
監査業務
賃借対照表や損益計算書など財務諸表をもとに財政や経営、キャッシュフローの状況が適切に示されているかどうか監査し、内部統制に対する評価も下します。業務の中ではクライアント先に足を運んで各種帳票や資産を確認したり経営状況に関するヒアリングを行ったりする場合もあります。
クライアントは一般企業に限らず、学校法人や独立行政法人、社会福祉法人などの監査を手掛けるケースもあります。
コンサル業務
企業の経営戦略や国際財務報告基準、株価・知的財産の評価、不正・誤謬防止システムなどに関するコンサルティングや業務支援を行います。企業の上場、M&Aなどの折に会計の専門家としての視点からの指導・助言するケースもあります。
監査法人の年収相場
監査法人の年収について、令和3年賃金構造基本統計調査の公認会計士・税理士の職種の「きまって支給する現金給与額」「年間賞与その他特別給与額」から相場を割り出します。なお企業規模1000人以上の数値を大手、100~999人の数値を準大手、10~99人の数値を中小の法人に当てはめています。
【監査法人の年収相場】
- 大手監査法人の年収相場: 800万円
- 準大手監査法人の年収相場:800万円
- 中小監査法人の年収相場: 600万円
令和2年民間給与実態統計調査によると給与所得者の平均給与額は433万円とされているため、監査法人勤務者は規模に関わらず高収入と言えます。サラリーマンの倍近くの収入を得ているケースも珍しくありません。
監査法人で働く方法
監査法人で働き続けるには、以下のステップを踏むことが要件となります。
1. 公認会計士試験に合格する
2. 法人監査に就職する
3. 公認会計士として登録する
1.公認会計士試験に合格する
監査法人に就職する人はほとんどが公認会計士の試験合格者のため、まず公認会計士試験にパスする必要があります。
難易度
公認会計士は日本の三大国家資格とも呼ばれ、弁護士・医師に続いて資格取得の難易度が高いと言われています。公認会計士とそのほかの資格の合格率や勉強時間、偏差値を比べると以下の通りです。
資格の種類 | 合格率 | 勉強時間 | 偏差値 |
---|---|---|---|
公認会計士 | 7.7% | 4000時間 | 74 |
簿記2級 | 26.9% | 500時間 | 58 |
宅建士 | 17.0% | 400時間 | 60 |
税理士 | 19.5% | 4000時間 | 72 |
医師免許 | 91.7% | 5000時間 | 74 |
弁護士(司法試験) | 45.5% | 8000 時間 | 75 |
受験資格
難関で知られる資格ですが、公認会計士は三大資格の中では唯一年齢や学歴を問わずに受験することができます。ロースクールや医学部出身者といった学歴を気にする必要もないため、商学部出身者でなくても独学で勉強をしたり、資格の専門学校に通ったりして受験に臨めます。
試験内容
試験は
短答式試験 4科目(財務会計論、管理会計論、監査論、企業法) 年に2回実施
論文式試験 5科目(会計学、監査論、企業法、租税法と経営学や民法など選択科目)年に1回実施
の2段階方式になっています。論文式試験で不合格でも、短答式試験をパスしている場合は合格以降2年の間は短答式の受験が免除されます。また論文式試験でも相当の成績をおさめた科目については2年間受験が免除されます。
勉強方法
公認会計士の試験にパスするのにかかる目安の勉強時間は4,000時間と言われています。1日6時間勉強する余裕がある場合でも2年近くの年数を要する数字であり、社会人生活を送りながら受験に備える場合はさらに長い日数がかかる可能性も高いです。
前述した通り資格の専門学校に通うほか、中には独学で試験に挑戦してパスする人もいます。仕事のある日は通勤・休憩時間などの合間を縫って暗記など知識のインプットに取り組み、時間のある休日には問題の解き方を理解する、という風に、生活のリズムに合わせて計画的に受験勉強を進める努力と効率が重要になります。
2.監査法人へ就職する
監査法人の採用は公認会計士試験の論文合格者を対象にしているため、一般の就職活動とはスケジュールが異なります。公認会計士の合格発表がある11月中旬ごろから就活が始まると考えておいた方が良いでしょう。いざ就活シーズンに入ると適正テスト、1次面接、2次面接を経て12月中に内定が出るため、かなりスピード感のあるスケジュールをこなさなければいけません。
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3.公認会計士として登録する
公認会計士を名乗るには一定の要件があり、資格を取得して監査法人や会計事務所などに就職したからといってすぐに名乗れるわけではありません。公認会計士として登録されるには、試験にパスした後に以下の要件をクリアする必要があります。
【公認会計士に登録するための要件】
- 業務補助:監査法人などで実務経験を2年積む
- 実務補修:会計教育研修機構による補修。原則として3年間補修所に通学
- 修了考査:日本公認会計士協会による考査
資格を取得して実務経験を積むだけでなく、公認会計士として登録されてはじめて真に監査法人で勤務し続けられる人材として認められるのです。
まとめ
会計・財務のスペシャリストとして知識と経験を積み、息の長い活動をしたい人にとって監査法人は理想的な職場と言えます。資格取得、実務経験を積んだ後の考査など監査法人で勤務し続けるためには何段階もの要件がありますが、たゆまぬ努力でステップアップする姿勢が着実に公認会計士として活躍する未来を引き寄せます。クライアントをファイナンス面からけん引し職場でも頼られる人材になることを目指して、できることから取り組んでみましょう。