目次
「やぶさかではない」は、本来とは異なった意味で覚えている人が多い言葉の一つです。最近あまり使われなくなりましたが、ビジネスにおいて目上の人や上司が使っているのを聞いたことがあるかもしれません。
この記事では「やぶさかではない」の正しい意味や語源、ビジネスシーンでの使い方や類義語などについて解説しています。ポジティブな意味の言葉ですので、本来の意味や類義語などの使い方を覚えて、ビジネスシーンに役立てましょう。
※時間がない方へ・・記事を読む時間が無い方でバックオフィス系の転職を検討中の方は、まずは「WARCエージェント」に無料登録してみましょう!
「やぶさかではない」の正しい意味は?
「やぶさかではない」は、「やぶさか(吝か)」と「ではない」の2つの単語で構成された言葉です。
「やぶさか」は、「物惜しみする」「ケチ」「やりたくない」「ためらう」「気が進まない」といった、行動や判断に踏み切れない、思い切りの悪い状態を示す言葉です。漢字の「吝」はケチを意味する「吝嗇(りんしょく)」という熟語にも使われています。
物事に対して後ろ向きで消極的な様子を意味する「やぶさか」に、打ち消しの「ではない」をつけた「やぶさかではない」は、何かをする努力を惜しまないという意味になります。
つまり「やぶさかではない」は言い換えると「前向きに〜します」「喜んで〜する」になり、依頼された際に、積極的に肯定する「喜んでやります」と答えるときに使用するのが正しい使い方です。
「やぶさかではない」の語源
「やぶさかではない」の由来は、平安時代に使われていた「やふさし」「やふさがる」と言われています。「やふさし」は形容詞で「けちである」、「やふさがる」は動詞で「ものを惜しむ」を表していました。
「やふさ」に接尾語の「か」がついて「やふさか」になり、鎌倉時代の半ば頃には「やぶさか」と濁った言葉に変化したようです。その後、「やぶさか」の意味を否定する「やぶさかではない」が広く使われるようになったという経緯があります。
「やぶさかではない」のよくある間違った使い方
「やぶさかではない」は、自ら進んで行う前向きな気持ちの表現であるのに、「仕方なくする」「納得できないが渋々承諾する」のように本来の意味とは異なるニュアンスで使っている人も多いようです。
文化庁による「平成25年度『国語に関する世論調査』」(※1)では「喜んでする」という本来の意味で正しく認識していた人は33.8%でした。43.7%の人は「仕方なく~する」という意味だと勘違いしている、という結果になっており、間違って覚えている人の方が多いという結果でした。
消極的な意味のある「やぶさか」が先行するため、逆の意味で捉えている人が多いのかもしれません。本来の意味で「やぶさかではない」を使う場合は、「嫌々ではなく、積極的にやりたい気持ちを持っている」と伝わりやすいように、意欲がアピールできる前向きな言葉を添えるようにしましょう。
(※1)出典:文化庁「平成25年度『国語に関する世論調査』」
「やぶさかではない」を使えるビジネスシーンと例文
「やぶさかではない」を違う意味で覚えていると、ビジネスシーンでは使いづらいと感じているかもしれません。本来は前向きに取り組む気持ちを表すものなので、ビジネスシーンでも積極的に使っていきましょう。
目上の人に対して使用するケース
「やぶさかではない」は、「喜んでする」という気持ちを控えめに表現する言葉であり、上から目線ではないので目上の人にも失礼なく使えます。ただし、やや古風な回りくどい言い方になるため、シチュエーションによっては別の言い換え表現を使う方がよい場合もあります。
また、相手が意味を間違えている場合もあるので、否定的な意味に取られないように注意が必要です。誤解を避けるためには前向きな表現とともに使うようにすると、相手に真意が伝わりやすくなるでしょう。
目上の人に使う場合は、敬語表現である「やぶさかではありません」「やぶさかではございません」を使うようにしましょう。
<例文>
- そのご依頼をお引き受けするにやぶさかではありません、何なりとお申し付けください。
- ビッグプロジェクトを手掛けるのですから、地方への異動もやぶさかではありません。
前向きな意味を込めた表現として使用するケース
「やぶさかではない」は前向きな意味を込めた表現で使う際に適切な言葉であり、ビジネスシーンにおいては2通りの使い方ができます。
「喜んでする」という意味で使うときは「〜にやぶさかではない」、「快諾する」という意味で使うときは「~ならばやぶさかではない」のように使用します。
「〜は、やぶさかではない」という形は間違いですので、間違って覚えている人は注意して「〜に、やぶさかではない」に直しましょう。
<例文>
- 次長命令であれば、業務を見直すことにやぶさかではありません。
- 長年の彼の功績を評価するに、やぶさかではない。
- 社長のご希望となれば、やぶさかではございません。
感情を抑えた表現として使用するケース
「やぶさかではない」は直接的な感情を抑えた表現であるため、控えめな慎ましい態度を示したい場面でも使用されます。喜んで行う意思をオブラートに包んで伝えるような場面に最適です。
<例文>
- 姉の業績を高く評価することにやぶさかではありません。
- 他の部署と合流するのにやぶさかではない。
「積極的に〜したい」という直接的な言葉ではなく、遠回しに気持ちを伝える表現方法は、あいまいさを残した日本語独特の表現といえるでしょう。
「やぶさかではない」を使用する上での注意点
「やぶさかではない」は誤用が多い言葉ですので、ビジネスシーンで使用する場合は以下のことに注意しましょう。
否定的な意味ではないことに注意しておく
「やぶさかではない」は「喜んで〜する」という積極的な肯定の意味を持つ言葉です。しかし、「仕方なく〜する」「気が進まないが、渋々〜する」という否定的な意味だと勘違いしている人が多いようです。
「仕方ないですね。私の方からA社にお願いするにやぶさかではありません」などと誤用しないようにしましょう。
また、本来の意味で使っている場合でも、否定的な内容の文章で使用すると間違って伝わることがありますので、注意が必要です。
<例文>
- 「連休中は多忙となりますが、お引き受けすることはやぶさかではありません」→「忙しいけれど仕方なく引き受ける」と誤解されやすい
「やぶさかである」という表現は逆の意味になる
「やぶさか」は「物惜しみする」「気が進まない」という意味があるため、「やぶさかではある」という表現にすると物惜しみをしている様子を表します。
そのため、「やぶさかではありますが」は、「気が進まない」「躊躇している」という意味になり、積極的に物事に取り組む「やぶさかではない」の反対の意味になります。
<例文>
- やぶさかではありますが、長い付き合いなので引き受けましょう。
このようにやりたくないが仕方がない、という後ろ向きな気持ちを表現するときに使います。「やぶさかではある」は誤解を招きやすいため、ビジネスにおいては使うべき相手やシチュエーションを間違えないように気をつけて使用しましょう。
「やぶさかではない」の類義語は?
「やぶさかではない」はポジティブな意味を持つ言葉ですが、最近ではあまり使われず、勘違いされることの多い言葉です。同じような意味合いの類義語を覚えて時と場合に応じて使い分けし、実際のビジネスシーンでの会話に活用しましょう。
①喜んでお引き受けします
「喜んでお引き受けします」は、行為を惜しまない様子や、積極的に協力したい気持ちが伝わりやすい表現です。「やぶさかではない」は、やや古く回りくどい言い方であるため、ストレートに受け取ってもらえる「喜んでお引き受けします」が使える場面は多いでしょう。
ビジネスシーンでの会話やメールでもよく使われる表現なので、受け取った相手も戸惑うことなくスムーズに受け入れられるでしょう。
<例文>
- 力仕事には自信がありますので、引っ越しの手伝いを喜んでお引き受けします。
- 来週の会議の司会は、喜んでお引き受けします。
②お安い御用です
「お安い御用」とは、簡単にできる仕事という意味の「安い」に接頭語である「お」をつけた「お安い」と、「用事」を丁寧な言葉で表現した「御用」とが組み合わさった言葉です。
「お安い御用です」は頼まれた依頼が面倒ではない、というポジティブな姿勢を示すのに使えます。ただし、「お安い御用です」はあまり改まった表現ではありませんので、使う相手には注意が必要です。気心の知れた上司や同僚などであれば、安心して使用できます。
<例文>
- 会議資料のコピーならお安い御用です。
- あいさつ回りの同行なら、お安い御用だよ。
③願ってもないお話です
「願ってもない」とは、願っても簡単に実現しそうにないことが、運よく実現したという状況を指す言葉です。ですから「願ってもないお話です」は期待以上の良い話であったり、待ち望んでいた、という気持ちを伝える表現になります。
ビジネスシーンでは「望んでいた以上の良い依頼なので、積極的に取り組みたい」姿勢を伝えるときに使います。
<例文>
- 大変ありがたいご提案で、願ってもないお話です。
- こんなに早く御社との取引が行えるとは、願ってもないお話です。
④異存はない
「異存はない」は、異なった考えはなく、賛成する、同意するという意味の言葉です。提案や申し出に対して、「それをすることに賛成する」という気持ちを表すときに使います。
「やぶさかではない」には「それに対して反対意見はない」という意味がありますので「異存はない」も類語になります。
<例文>
- 課長からの出張依頼に異存はありません。
- 異存はないが、もう一度検討してみてほしい。
⑤快諾する
「快諾する」は、相手の申し出に対して気持ちよく承諾する、という意味です。「やぶさかではない」には「喜んで〜する」という意味があるので類語になります。
「快諾する」は、自分で引き受ける場合ではなく、「快諾してもらえた」など状況を説明するときに使う言葉であり、依頼を引き受けてもらった際のお礼のメールでもよく使われます。
<例文>
- この度は突然のお願いにもかかわらず、ご快諾いただきありがとうございました。
- 次回の会議の日程変更について、快諾してもらえました。
「やぶさかではない」の対義語は?
「やぶさかではない」の対義語も覚えておきましょう。対義語には気が進まないときに使う「渋々」や、やむなく認める場合に使う「不本意ながら」があげられます。
①渋々
「渋々」は、「乗り気ではないが、仕方なくする」「気が進まないけれど、やむを得ずにする」という意味を持つ表現です。「やぶさかではない」には快く引き受けるという意味合いがあるため、「渋々」は対義語になります。
消極的な姿勢で、不本意な気持ちながら仕方なく賛成・承知・実行する、というときに使います。
<例文>
- 渋々やり始めた仕事ですが、今ではライフワークだと感じています。
- 本当は公休なのですが、急な呼び出しがあり渋々出社しました。
②不本意ながら
「不本意ながら」は、自分の理想や望みとは違う場合に、「不本意だったが承諾するしかなかった」ときに使います。「やぶさかではない」には賛成するという意味が含まれているため、「不本意ながら」は逆の意味になり、対義語といえます。
ややかしこまった言い方で、礼儀も感じられるため、「拒絶」や「不服」をやわらかい表現で伝えたいときに便利です。
<例文>
- 参加部門が変更となったため、不本意ながらこのプロジェクトからは撤退いたします。
- 不本意ではございますが、今回の採用は見送らせていただきます。
「やぶさかではない」と「まんざらでもない」の違いも把握しておこう
「まんざらでもない」は「やぶさかではない」と混同されやすい言葉ですが、意味合いはまったく変わります。どちらも打ち消しの「ではない」が付いていることで、似た意味だと捉えられることが多いのですが、混同しないようにしましょう。
「まんざらでもない」は、漢字では「満更ではない」と書き、「満更」は「まさに」「まったく」という意味があります。打ち消しの「ではない」をつけることで「必ずしも〜ない」ということを表します。
「まんざらではない」は「それほど悪い気持ちではない」「嫌ではない」「むしろ嬉しい」という意味になり、前向きな表現ではありますが、積極性という面では低くなります。
<例文>
- 「出席するのはまんざらでもありません」→出席は嫌ではないの意
- 「出席するのにやぶさかではありません」→積極的に出席するの意
「やぶさかではない」はポジティブな表現であるが、注意点に気をつけて活用しよう
「やぶさかではない」は、努力を惜しまず喜んでする、という積極的な肯定を表す言葉です。しかし、「仕方なくする」と否定的な意味に捉えている人も多く、本来の意味通りに伝わりにくい面があります。
自分で使う場合は前向きな言葉とセットにしたり、前後の文脈を工夫するようにすれば、ビジネスシーンでも活用できます。相手が使っている場合には、どのような意味で使っているのかに注意しましょう。
このシリーズではビジネスに役立つ正しい言葉遣いについて解説しています。ぜひ、他の言葉についても目を通して、一歩抜きん出た国語力を身につけましょう。
用語集の記事
ビジネス用語の関連記事
敬語の関連記事
敬語の意味の関連記事
時候の挨拶の関連記事
漢字の読み方の関連記事
[PR]"好条件"の管理部門転職なら
管理部門・バックオフィスで転職するならSYNCA(シンカ)。
経理、総務、法務、労務、情シスなどの職種や細やかなスキル設定により 採用企業から一人ひとりに合ったスカウト求人が直接届きます。
まずはスキルに応じたあなたの適切な年収を無料で診断しましょう。