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近年、ビジネスシーンで使われるようになった「コミットメント」。しかし、正しい使用方法や意味を理解しないままで、なんとなく使っているという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、コミットメントの意味や類語、メリット、分野別の意味などを解説しています。コミットメントを高める方法についても紹介していますので、正しい意味や使い方を知り、適所で使えるようにしておきましょう。
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コミットメントとは
コミットメントとは「委託・関与」「約束、公約」「参加」「責任」といった意味を持つ英語を語源とする言葉です。動詞形では「コミット」となり、「ゆだねる」「約束する」という意味になります。
コミットメントは、ただ約束したり参加するだけでなく、責任をもって関わっていくことを公約する意味で使われます。「〜することを約束する」「誓う」という場合に、「〜にコミットする」「〜にコミットメントする」と使うことが多いようです。
ビジネスシーンでのコミットメントの意味
ビジネスシーンで「コミットメント」を使う場合は、主に以下の2つの意味で用いられます。
公約・約束・承認する
コミットメントは公約・約束・承認するといった意味で使われることが一般的であり、ビジネスシーンにおいても良く見られる表現です。
「上司のコミットメントが得られた」「取引先の社長のコミットメントが不可欠」などと使用し、この場合は確約や承認といった意味を持っています。ビジネスシーンで使う場合は、約束よりも責任の所在を明らかにしておく意味で使用されることが多い言葉です。
責任をもって関与・参加する
コミットメントには、約束するという意味のほかに「参加する」「関与する」という意味もあります。軽く関わる、参加するというよりも、主体的な姿勢で真剣に関わるというニュアンスを持った表現です。
「会議にコミットメントしてほしい」といえば、参加者として出席することに加え、責任を意識して率先して議論に取り組んでほしいという意味が込められています。
「プロジェクトにコミットメントする」という場合は、プロジェクトメンバーになるだけでなく、全力でプロジェクトに取り組む姿勢であるという意味が含まれています。
コミットメントを会話で使う際の注意点
ビジネスシーンで使われるコミットメントには、「責任感を持って取り組む」「成果を約束する」というような重いニュアンスを伴います。覚悟や実践力が求められるため、軽々しく口にするのではなく、真剣に取り組む姿勢を整えてから使うようにしましょう。
確実にやり遂げる自信がない場合は、「誠意をもって取り組みます」など日本語で伝えた方が無難です。ビジネスではしっかりと言葉の意味の重みを理解してから使うべき言葉であると覚えておきましょう。
コミットメントの類語
コミットメントは幅広い意味合いがあるため、類語や同じような言い回しの言葉もよくあります。ここでは、コミットメントと似たような意味を持ち、ビジネスシーンでよく使用される言葉について、違いや使い方を解説します。
モチベーション
モチベーションは、やる気・動機を意味する言葉です。コミットメントとは意味が異なりますが、ビジネスシーンでよく使われるため、耳にすることも多いのではないでしょうか。
「○○さんはモチベーションが高い」「成績がアップしてモチベーションが上がった」などと使います。モチベーションは、目標の魅力×危機感×達成可能性の総量で決まるといわれています。
プロミス
プロミスは約束する、誓約することを表す言葉で、コミットメントと似た意味を持っており、より一般的に使われています。コミットメントが「責任を持って取り組む」「成果を約束する」ことを表すのに対し、プロミスは将来的な願望や期待を約束するというニュアンスに近い言葉です。
コミットメントのような自ら成し遂げるという意味は含まれていませんので、混同しないようにしましょう。
コミットメントが与えるメリット
ビジネスで、個人が目的を持ってコミットメントすることで、成果につながりやすくなったり、仕事で支援を受けやすくなったりします。コミットメントが与える主なメリットには以下の3点があげられます。
成果につながりやすくなる
コミットメントすると結果への意識が高まり、結果的に成果につながりやすくなるメリットがあります。「どうすれば目標を達成できるか」実効性のある計画を立て、期日を設定して仕事に臨むようになります。スケジュールに沿ったTODOを明確にして、行動力を発揮していけるでしょう。
コミットメントをしない人と比較すると、達成意識が強く、適切な行動をとれるので、個人としての成果を出しやすくなるのです。
一貫性を保とうとする
コミットメントすることで、宣言したからにはやらなければ、という意識が生まれます。人は思想・行動・感情に食い違いがあることを許容したくないため、一度ある決定をすると一貫性を保とうとする傾向があります。
このような言行一致を図ろうとすることを「コミットメント効果」と心理学では呼びます。
目標達成に対して意識が低下しているときにこのコミットメント効果を利用すると有効だとされています。コミットメント効果をうまく活用していきましょう。
周囲の支援・応援を得られる
コミットメントすることで周囲の人はその人が何を実現したいのかがわかりやすくなります。それによって周囲からのサポートを受けやすくなったり、応援してもらいやすくなったりといったメリットがあります。
1人でコツコツ取り組む場合と比べ、メンタル面や実務でサポートが受けられることで成果が実現しやすくなるでしょう。
使用される分野別のコミットメントの意味
コミットメントは学術分野では別の意味で使われるケースがあり、区別する必要があります。ここでは心理学、経済学、金融分野におけるコミットメントの意味を解説します。
心理学におけるコミットメント
心理学の分野では「コミットメント効果」という言葉があります。コミットメント効果は、何か新しいことを始めたり、目標に向かってやり遂げようとしたりするときに、他者に宣言することで自分を追い込み、緊張感を持つことにつながるというものです。
宣言することで目標に向けた行動が強化され、目標達成率が上がり、実現しやすくなるという効果があります。また、カウンセリングでは「覚悟を決める」「決断する」という意味合いで、コミットメントが用いられることもあります。
経済学におけるコミットメント
経済学で使われるコミットメントは、「その行動しかとれないようにするような実効性のある仕組みを作ること」を意味します。一般的に使われるコミットメントの用法とは異なりますので注意しましょう。
たとえば、「他店より高い場合は、さらに価格を安くします」などと、「最低保証価格」を約束するPRをし、ここで買うしかないと思わせるようなケースが当てはまります。
金融分野におけるコミットメント
金融分野では、「コミットメントライン」という言葉があり、金融機関が企業に対して一定の期間、一定の融資枠を設けて維持することを指します。融資を受ける会社は、設定した融資枠の中で必要に応じて何度でも借り入れを行うことができ、いちいち審査などの手続きも要りません。
ただし、コミットメントライン契約をすることで通常に金利とは別に契約手数料がかかるデメリットがありますし、契約の審査も厳しくなっています。
組織コミットメントの種類
組織コミットメントとは、組織に所属する社員の、組織に対する帰属意識を指しています。
「愛社精神」や「忠誠心」のようなものです。組織コミットメントは以下の3種類に分けられます。
情緒的コミットメント
情緒的コミットメントは、個人が持つ感情や価値観など、情緒的な要素によって生じるコミットメントのことです。愛社精神やエンゲージメントといった言葉にも置き換えられます。
自社のサービスや職場の人が好き、といった気持ちから生まれる「この職場で働き続けたい」「ここで働くことが誇らしい」などの感情・価値観を持つことを、情緒的コミットメントが高いといいます。
本人の志向、能力、適性に合う業務、役職に携わることで、情緒的コミットメントを高めることが可能です。
功利的コミットメント
功利的コミットメントは存続的コミットメントとも呼ばれます。組織にいることで得られる評価・報酬によって生まれるコミットメントです。損得勘定によって生まれる点が、情緒的コミットメントとの違いです。
「労働条件や報酬が良い」「ここよりも高い年収の高い就職先がない」など、良い報酬が得られるからというものばかりでなく、リスクを懸念して生まれるものも含まれます。
規範的コミットメント
規範的コミットメントとは、会社や組織に所属するからには、そこに尽くすべきという忠誠心によるコミットメントのことです。組織には従うものの、受動的で、自分の意思では行動しようとはしない傾向があります。
社内の人間関係や労働しやすさに満足感を得られると、規範的コミットメントを高めることができるようになります。
組織コミットメントを高める方法
組織コミットメントの高い社員は遅刻・欠勤や離職することが少ないといわれています。組織コミットメントを高めることは優秀な人材を確保することになり、結果的に組織の強化や生産性の向上につながります。
ここでは組織コミットメントを高めるためにはどのような取り組みをすればよいのか紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
個人の能力・資質に適した職務や役割に配置する
「仕事が自分に向いている」「自分のスキルを活かせる」と感じると、情緒的コミットメントが高まります。社員個々の能力・資質を適切に評価し、それぞれに適した仕事・部署・役割に配置することが重要です。
役割を与えるためには普段の仕事ぶりを観察し、現在の業務状況や今後のキャリアプランなどについてコミュニケーションを重ねていく必要があります。また、責任のある立場につくことでやりがいを感じ、コミットメントが高まるという人もいます。
定期的に企業理念や経営方針を共有する
職務へのコミットメントが高くても、組織へのコミットメントが低ければ、「この職場でなくてもいい」という転職意識が芽生えることもあります。これを避けるためには企業理念や経営方針を社員にしっかり伝え、企業の団結力を高めることが重要です。
企業理念や経営方針を共有することで、社員の中に共感や理解が生まれ、「この会社が好き」という情緒的コミットメントが高まります。「この会社だからこそ自分の仕事に価値を感じる」と社員が思うよう、企業の方向性を共有し、個人がどのような役割を果たすかを明確にしておきましょう。
働きやすい職場環境を作る
組織コミットメントを高めるために、働きやすい職場環境を作ることも大事です。そのためには、社員の意見・提案が通りやすい仕組みが整っていたり、意見交換やコミュニケーションが盛んなオープンな職場を作ることが必要です。
福利厚生が充実しているのはもちろんですが、それだけでなくどんな環境であれば社員が働きやすいのか考えましょう。それにより生産性が高まったり、離職率を下げたりすることができるといった効果が見込めます。
社員間のコミュニケーションを活性化させる
社員間のコミュニケーションを活性化させることにより、組織コミットメントの中でも規範的コミットメントを高めることができます。コミュニケーションを高め、良好な人間関係を築くと、感謝の気持ちが生まれ、規範的コミットメントが高まります。
社員の中には「自分の仕事は自分でするべき」と、抱え込んでしまうまじめな社員もいるでしょう。その状態で孤立することが続くと組織コミットメントが低下しますので、同僚や上司が協力・支援できる風土をつくることが重要です。
コミュニケーションの活性化は課題の発見や解決策の考案、アイディアの創出にもつながります。それにより競争力の強化や会社の発展なども期待できます。
コミットメントの意味やメリットを理解して、ビジネスで活用してみよう
コミットメントは、「責任を持ってやり遂げる」ことを宣言する、という意味合いがあります。ビジネスでは、成果を約束したり、責任の所在を明確にする際に使われる表現であり、重めのニュアンスを持つ言葉です。各分野で違った意味で使用されることもあり、使う際には十分な注意が必要です。
ビジネスでは、コミットメントを利用することで個人にとっても組織にとってもメリットがあります。組織コミットメントを高めると、社員の定着率を高めたり、生産性を上げる効果が期待できます。
コミットメントの正しい知識を身に着けて、上手に利用し、目標達成などに活かしてみてください。