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ビジネスシーンにおける「失念しておりました」。忘れたということを相手からのイメージを損なわずに伝える表現ですが、誤った使い方をすると失礼に当たってしまいます。
今回は「失念しておりました」の意味や適切な使い方、例文などを紹介しますので、ぜひ最後まで読んで正しく使えるようにしてください。
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「失念しておりました」の意味とは
「失念」は「しつねん」と読み、うっかり忘れてしまったことを丁寧に伝える表現です。
ビジネスシーンでは「失念しておりました」と自分がやるべき、または予定していた行動を忘れていたことを目上の人に対して伝えるときに使います。かしこまった表現であるため、日常生活ではあまり使われることがありません。
「忘れていた」の敬語表現
「失念しておりました」は「忘れていた」の謙譲語にあたります。謙譲語とは、自分がへりくだる際に使う言葉であるため、主体は「自分」になります。
約束していたことを忘れたり、やるべき業務を忘れてしまったりすることもあるでしょう。そのようなシーンにおいて「忘れていました」というと、相手や立場によっては軽視されていると感じたり、ぞんざいな扱いを受けていると誤解されたりする可能性があります。フォーマルな場では「忘れた」という言葉はやや軽い表現という印象を与えてしまうからです。
そのような時に「失念しておりました」を使うと、謝意や敬意を表現しつつ忘れたことを伝えられるでしょう。相手を敬えるため、誠実な印象を与えられます。
「失念しておりました」の正しい使い方
「失念しておりました」は、とるべき行動を忘れてしまっていたという意味であるため、物に対して使うことはできません。そのため、「家の鍵を失念しました」「職場に財布を失念しました」などの言い方は適切ではありません。
加えて、「失念」は自分以外の相手の行為に対して使うことができないことも覚えておきましょう。「お客様がご来店のお約束を失念しておりました」といった表現は不適切です。目上の人や取引先の行為に対しては使わないようにしましょう。
また、「失念」には「思い出せない」というニュアンスも含まれているため、覚えていなかったり覚えていないことを伝える場合にも「失念しておりました」が使えます。
「失念しておりました」のメールへの返信
もしビジネスシーンにおいて、相手から「失念しておりました」というメールが届いた時はどのように返信したらいいのでしょうか。「失念しておりました」というメールに返信する際は、「大丈夫なので気にしないでくださいね」というニュアンスを入れつつ、相手を気遣いながら返信するといいでしょう。
たとえば「大丈夫です」や「お気になさらないでください」と添えると、こちらが気にしていないという事を上手に伝えることができます。また、「こちらこそ配慮が足らず、申し訳ございませんでした。」という一文を加えると、「こちらも気遣うべきでした」と相手を思いやる形で返事をすることができます。
相手との関係性や状況に応じて使い分けるといいでしょう。
「失念」を使う際に注意すること
「失念しておりました」は、本当は知っていることをうっかり忘れてしまったという意味をもちます。不適切な使い方をしてしまうと印象が悪くなってしまうため、使い方を理解したうえで使いましょう。
まず、「失念」は覚えていたことを忘れてしまったときに使う言葉であるため、最初から知らないことに対して使うのは不適切です。
最初から知らないことを伝える場合は、「知らない」の敬語表現である「存じません」を使いましょう。
加えて、「失念する」は「自分の行動」に対して使う言葉であるため、たとえば「財布を失念してしまった」のように物に対して使うことや、相手の行動に対して「A部長が電話を失念された」というように使うのも正しくありません。
「失念」の類語・言い換え表現
ここまで、「失念」の意味や使い方などについて解説しました。では、「失念」を別の表現で言い換えるにはどのような言葉を選んだらいいのでしょうか。「失念」は時に「放念」や「忘失」といった言葉で置き換えられることがあります。ここでは、似た意味を持つ「放念」と「忘失」について意味と例文を紹介します。
「放念」
「放念」は「ほうねん」と読み、心にかけないことや心配しないことを意味しています。ビジネスシーンにおいては、相手に対して「気にしないでください」と伝えたい時に「ご放念ください」と表現します。仕事でもプライベートでも使うことができ、メールやメッセージなど、主に文章で伝える際に使う言葉です。基本的には相手の行為について使う言葉なので、自分が忘れていたという場合に「放念した」などと表現するのは避けた方がいいでしょう。
<例文>
* 「ぜひともご相談に伺いたいところですが、ご無理であればご放念ください。」
* 「私にもミスはあります。先日のことはすっかり忘れておりますので、くれぐれもご放念くださいませ。」
「忘失」
「忘失」は「ぼうしつ」と読み、ある事柄をすっかり忘れてしまうこと、持っていたものをどこかへ置き忘れて無くすことという意味です。記憶だけでなく、物理的にものを無くした時にも使え、主に自分の行為に対して使うことが多い言葉です。口頭で使うことよりも、ビジネスシーンなど形式ばった文脈や、文学的な表現で使われることが多いでしょう。「失念」が行動に対して使う表現であり、物に対して使うのは不適切であるため、状況に応じて「忘失」と使いわけてみてください。
<例文>
* 「取引先の担当者様のお名前を忘失してしまいました。」
* 「申し訳ございませんが、パスワードを忘失してしまったため、再発行をお願いいたします。」
ビジネスシーンにおける「失念」を使った例文
実際のビジネスシーンにおいては、「失念しておりました」をどのように使ったらいいでしょうか。ここからは、会議やミーティングなどへの参加を忘れていた時や返信するべきメールを忘れていた時、自身が行う業務を忘れてしまっていた時などのシーン毎に、口語で使う場合とメールで使う場合の使い方を紹介します。
会議やミーティングのような行事ごとへの参加を忘れてしまった時
会議やミーティングのような行事ごとへの参加を忘れてしまった時の例文です。
<口頭での例文>
* 「大変申し訳ございませんが、本日ミーティングが開催されることを失念しておりました。」
* 「ミーティングルームへの参加パスワードを失念してしまい、入室できておりません。大変申し訳ないのですが、再度お教えいただけますでしょうか。」
<メールでの例文>
* スケジュール帳への記載を失念していたために、本日のミーティングに参加することができませんでした。
大変なご迷惑をおかけすることになり、心よりお詫び申し上げます。
謝罪メールでは「失念しておりました」を正しく使うことはもちろん、ビジネスメールのルールを守りつつきちんと謝意を伝えましょう。
返信する必要があるメールを忘れていた時
「失念」は、メールの返信を忘れており、返信が滞ってしまったときなどに使える表現です。返信漏れに気づいた場合は、その時点でできるだけ早く謝罪の連絡をしましょう。
取引先との大切なメールへの返信や、対応が大幅に遅れた場合などには、謝罪とともに、その原因やその後の改善策を説明すると丁寧です。
<例文>
* 「◯◯を失念しておりました。こちらの不手際で申し訳ございません。今回の件は、◯◯が原因だったため今後対処して参ります。」
* 「◯◯様から△月△日にいただいたメールに、返信するのを失念しておりました。お返事が遅くなりまして、大変申し訳ございません。
お問い合わせいただいた内容につきましては、まとめた資料を本メールに添付いたします。」
自身が行うべき業務を忘れてしまった時
自身が行うべき業務を忘れてしまった時も「失念」を使います。気づいた時点で謝罪するとともに、すぐさま業務に取り掛かりましょう。
<口頭での例文>
* 「〇〇さんから依頼されていた業務を、失念しておりました。今すぐに取り掛かります。」
<メールでの例文>
* 「ご依頼いただいていた見積もりの送付を失念しており、大変申し訳ございません。この度のメールに添付しておりますので、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。」
「失念しておりました」は文末表現ですが「失念しており、」や「失念していたために、」とすることで、文章を繋げることができます。「失念しておりました」で終わる文章が失礼という訳ではありませんが、その後の行動も合わせて伝えるようにしましょう。
忘れ物をしてしまった時
忘れ物をしてしまったことをお詫びする時も「忘れた」とストレートに言わず、「失念」を使うといいでしょう。
<口頭での例文>
* 本日は、打ち合わせに〇〇を持ってくることを失念してしまい、誠に申し訳ございません。
<メールでの例文>
* 本日はお忙しい中、貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございます。
その際、私の不注意により打ち合わせに必要な〇〇を失念してしまいご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
この時は、「持ってくる」という記憶を「失念した」という意味になります。「大事な書類をデスクに失念しました」や「お店に傘を失念しました。」など「忘れ物」の場面で使用するのは誤った使い方になるので、間違えないようにしましょう。
正しく使えるように意味を把握
「失念しておりました」は、忘れたことを相手からのイメージを損なわずに伝えられる表現です。自分に非がある時に使う表現なので、適切に使えるようにしておきましょう。もちろん、ビジネスシーンにおいては、なるべく使うことがないよう、しっかりと確認や事前準備をしておくことも大切です。
このほかにも、さまざまなビジネスシーンで使える言葉を紹介しているので、ぜひ他の記事も参考に、ビジネススキルの向上に役立ててください。