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ビジネスシーンにおいて「鑑みる」「〜に鑑み」との表現を、正しく使いたいと考える人は多そうです。そもそもの由来や間違えやすい使い方を知っておくと、社会人として適切な振る舞いにつながるでしょう。
この記事では「鑑み」の意味や類語、間違いやすい使い方を例文を交えて解説します。
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「鑑み」の意味とは
「鑑み」は「鑑みる」という動詞の連用形として、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。単語が持つ意味や用いる際の注意点を知り、言葉のニュアンスを理解しましょう。
何かを深く考えそれを判断の基準にするという意味を持つ
インターネット辞典(※1)では「鑑みる」の意味を、以下のように説明しています。
“何かを深く考え、それを判断の基準にするという意味を持つ言葉である。”
(※1)参考:weblio辞典「鑑みる」
深く観察し、状況を見つめたうえで判断するというニュアンスを持つ言葉です。「鑑み」は「鑑みる」の連体形なので「〜に鑑み」と使うときは「(話の前提となる)状況をよく熟考したうえで」という意味として使えます。
「鑑(かがみ)」一文字の意味
「鑑みる」に「状況を深く考え、判断の基準にする」とのニュアンスがあるように、「鑑」一文字だと模範や手本という意味として使えます。「鑑」のよく使われる例文は、以下の通りです。
- あの人は非常に生徒思いの先生です。教師の鑑だと思います。
- 彼は素晴らしい人物だ。まさに人間の鑑と言えよう。
上記のように「鑑」には、ある対象を手本ととらえ判断基準にして考えるという意味があります。「鑑」一文字の意味が転じ「鑑み」が使われるようになったとの考え方もあるようです。
「鑑みる」の使い方の注意点
「鑑み」に格助詞の「を」をつけて「〜を鑑み」と使う人が多いですが、正しくは「〜に鑑み」です。「鑑みる」は「照らし合わせる」という言葉と近い意味を持ちます。「照らし合わせる」を用いるとき「〜に照らし合わせる」と使うのが一般的です。「鑑み」の使い方がわからなくなりそうな人は「〜に照らし合わせる」のように「に」がセットであることを意識して覚えましょう。
類語や言い換え表現と「鑑み」との違い
「鑑み」の意味や使い方がわかったところで、似ている言葉との違いが気になった人も少なくなさそうです。類語のニュアンスをとらえ「鑑み」との違いを理解しましょう。
顧みる
「顧みる」は、後ろ側は過去などを気にかけて、振り返るという意味の表現です。「顧みる」を例文にすると、以下のように表現されます。
- 自身の行動を顧みる余裕はなかった
- 背後を顧みず、ひたすら前に進んだ
- 妻子を顧みず、仕事に明け暮れた
振り返る対象は過去のできごとだけでなく、後方や人物を用いてもよいです。過去のことを思い返すという点では、「鑑み」と似た言葉といえるでしょう。ただし「顧みる」だけでは、「鑑み」のような「照らし合わせる」というニュアンスには欠ける印象があります。
踏まえる
「踏まえる」は、ある事実や状況を基準としてものごとを考えるという意味の表現です。「踏まえる」を例文にすると、以下のように表現されます。
- 今の状況を踏まえると、大きな判断はできない
- 今までの発言を踏まえると、なにか別の方策を打ち出すに違いない
- アンケート結果を踏まえ、業務の改善に努めてまいります
「事実や状況を基礎として考え行動を起こす」という一連の流れに使われる言葉です。ただし、「踏まえる」は現状の照らし合わせにも使えるため、過去のできごとを振り返る「顧みる」とは用いる領域が若干異なります。
考慮する
「考慮する」は、なにかを決める前に関連の情報をよく考え、評価するという行為を指す言葉です。「考慮する」を例文にすると、以下のように表現されます。
- 少数派の意見を考慮して、決断を下そう
- 昨年の人手不足による混乱をご考慮いただき、スタッフ増員を検討していただけますと幸いです
- 取引先の勤務時間を考慮し、メール送信を控えた
よく考えるという意味では「鑑み」と似ていますが、「考慮する」は過去のできごと以外にも使用可能です。判断や行動を起こす前に、さまざまな状況や要素を並べて考えるという場合に使えます。
勘案する
「勘案する」は、さまざまな情報や要素を総合的に判断するという行為を指す言葉です。「勘案する」を例文にすると、以下のように表現されます。
- 各部署からの意見を勘案し、次の計画を立てましょう
- 物事の損得を勘案したうえで結論を下す
- 行動する前に、さまざまな事情を勘案すべきでした
「考慮」と同じように、考える対象となる事例は過去のできごと以外でも構いません。ただし、考える対象となる事例は1つだけでなく、複数ある場合にのみ使える言葉です。要素が1つしかない場合は使えないので、注意しましょう。
「鑑み」を使った例文
「鑑み」の意味や使い方がわかったところで、実際のシーンでの用い方が気になる人も多そうです。ビジネスシーンに加え、コロナ禍でよく用いられるようになった使い方を例文で解説します。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンでの「鑑み」は、以下のように仕事におけるさまざまな状況で使用できます。
会議にて
- 例年に鑑みると、今年のプロジェクトは相応の対策を打たなければならないように思います
- ここ10年で最大の円安状況に鑑みると、決して油断はできません
部門内にて
- Aさんは新しい部門に配属されて間もないので、過去の事例に鑑み、適切な教育を行ってほしい
前述のとおり「〜を鑑み」は間違いであるため「〜に鑑み」と使うように、気をつけましょう。
コロナ禍でよく見る使い方
コロナ禍では、以下のような使い方で「鑑み」に触れる機会が多かったものです。
- 新型コロナウイルスの蔓延状況に鑑みて、本イベントは中止とさせていただきます
- 感染状況に鑑みて、まん延防止等措置法を適用します
また、今後はアフターコロナ対応として、以下のような使い方が増えてくるでしょう。
- 流行状況に鑑み、当院では面会の制限を一部緩和することといたしました
- 昨今の状況回復に鑑み、通常営業を再開することといたしました
上記のように、ポジティブな状況を知らせる場合にも「鑑み」の使用は可能です。
「鑑み」の意味を理解しビジネスシーンで正しく使おう
「鑑み」は、何かを深く考えそれを判断の基準にするという意味です。文章で用いる際は「〜に鑑み」というように格助詞には「に」を使い、状況を熟考したとのニュアンスで使います。
「鑑み」の使い方をマスターし、ビジネスシーンで正しく使えるようになりましょう。