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「30代から財務への転職はもう遅いのだろうか」そう考える方も多いでしょう。近年企業が求める財務人材像は変わりつつあり、30代からでもチャンスがあります。単なる数字管理ではなく、資金繰りや経営分析を通じて「組織全体のお金の流れ」を捉え、経営を支える役割が重要になっているためです。
本記事では、30代未経験から財務職を目指す方法を紹介します。基礎学習からキャリア形成まで、実践的な進め方をわかりやすく解説。財務職への転身に必要な知識・経験・戦略を体系的にまとめたので、参考にしてみてください。
財務とは?経理との違いと役割を理解しよう
財務と経理は「お金を扱う仕事」という点では共通していますが、担っている役割は大きく異なります。ここではまず、財務とは何か、経理とどう違うのか、そして今なぜ財務が注目されているのかを整理します。
財務の定義
財務は「会社のお金の流れを未来に向けて設計・管理する仕事」です。企業が活動を続けるためには、日々の支払いや給与に必要な資金だけでなく、成長に向けた投資や備えとなる資金も確保しなければなりません。
財務は、銀行からの借入・投資家からの資金調達といった「お金を集める力」、集めたお金をどの事業にどれだけ使うか判断する「資金配分の力」、そして資金が不足しないように日々のキャッシュフローを管理する「運用の力」を担っています。つまり財務は、数字を扱うだけでなく、経営戦略と密接に結びつきながら、会社の成長と安定を支える舵取り役のような存在といえるでしょう。
経理との違い
経理と財務は混同されがちですが、役割の方向性が異なります。経理は「起こった取引を正しく記録し、報告する仕事」。仕訳、月次決算・年次決算、税務申告など、法律や会計ルールに基づいて数字の正確性を保つことがおもな役割です。
一方、財務は「記録された数字をもとに、会社の将来を動かす判断を行う仕事」です。資金繰り計画、資金調達、投資判断、銀行や投資家との折衝など、これからどうお金を動かすかを考えます。
つまり、経理が「過去と現在の数字を整える役割」だとすれば、財務は「未来のお金の流れを設計する役割」です。両者は連携しながら、会社の土台と成長の方向性を支えています。
財務職が注目されるのはなぜ?
近年、財務職の重要性は大きく高まっています。理由の1つは、経営におけるお金の動きがますます複雑になっていることです。
金利・為替の変動、新規事業やM&Aの増加、内部統制やガバナンス強化など、企業はこれまで以上に「資金をどう確保し、どう使うか」を戦略的に決めなければなりません。さらに、資金繰りが悪化すれば、どれだけ良いサービスであっても会社は存続できないでしょう。だからこそ、会社全体のお金の流れを俯瞰し、投資と回収のバランスを見極められる財務人材へのニーズが高まっています。つまり財務は、単なる数字管理ではなく企業の未来を左右する「経営のパートナー」として注目されているのです。
30代未経験でも財務職を目指せる理由
財務は専門性が高い印象がありますが、実は30代からの転身が十分に可能な職種です。ここでは、その背景と企業側のニーズを整理し、なぜ今「未経験の30代」がチャンスを掴みやすいのかを解説します。
「育成を前提に採用する企業」が増えている
財務領域では即戦力人材が慢性的に不足しており、「ポテンシャル採用」が拡大しているためです。特に、スタートアップや成長フェーズの企業では、経営に関わる数字管理の仕組みが整っていない場合が多く、財務担当を育てながら組織基盤を固めたいという需要が高まっています。
さらに、DX(デジタル化)によって経理業務の自動化が進み、企業は「数字を扱えるだけでなく、経営判断に関わる人材」を求める傾向が強まっています。そのため、実務経験よりも、論理的思考力・コミュニケーション力・学習意欲といった基礎力が重視される傾向にあるのです。「素地のある30代」は十分に評価される土台を持っているといえるでしょう。
社会人経験から培った基礎力が財務適性に直結する
30代は、業務を遂行するうえでの「基本スキル」が既に整っているケースが多い点が強みです。たとえば、社内外との調整力、課題発見と改善提案の経験、数字を使った報告資料作成などは、財務の現場でそのまま活かせます。
財務は経営層や事業部門と協働しながらお金の流れを管理するため、人との対話を通じて物事を整理する力が不可欠です。そのため、未経験であっても社会人としての経験が積み上がっている30代は、視野の広さや責任感という点で評価されやすいでしょう。「数字が得意かどうか」よりも、「状況を理解し、必要な情報を整理し、相手に伝えられるか」が大切であり、多くの30代はこの基礎力をすでに持っています。
前職で培ったスキルを財務に転用しやすい
財務は経験の横展開が効きやすい職種です。
たとえば、営業経験者であれば、数字目標の管理や顧客折衝の経験から資金調達に必要なコミュニケーション力を活かせます。事務職であれば、正確性と業務プロセス管理の力が財務の基礎業務に直結するでしょう。経営企画や広報などで資料作成の経験があれば、資料の論理構成や経営視点を持つ下地になります。
このように、財務はゼロからのスキルではなく「既に持っている力に知識を上乗せすることで成長できる領域」といえます。だからこそ、30代はキャリアの蓄積が活きやすく、未経験からでも現場に溶け込みやすいのです。
30代の財務未経験でも採用されやすい職種・ポジション例
財務といっても、いきなり高度な資金調達や投資判断に携わる必要はありません。まずは「入口」となるポジションから経験を積み、徐々に専門性を高めるキャリアパスが現実的です。ここでは、未経験の30代でも挑戦しやすい代表的な職種と、評価されるポイントを整理します。
財務アシスタント
財務アシスタントは、財務担当者のサポートを行う入口ポジションです。資金繰り表の更新、支払・入金管理、銀行との書類対応、稟議(社内承認手続き)の補助など、日々の資金の動きを正確に管理します。難しい分析よりも、丁寧な作業と正確な記録が求められる仕事です。
<30代が評価されるポイント>
- 期日管理や業務の抜け漏れを防ぐ力
- 対人折衝や社内調整の落ち着いた対応
- 社会人としての基本的な正確性・責任感
財務の基礎となる「お金の流れを日々把握する力」を身につけられるため、未経験者が最初に挑戦しやすいポジションといえます。
経営企画サポート
経営企画サポートは、事業計画や予算管理、KPI管理、経営会議資料の作成など、数字と経営をつなぐ役割を担います。経営層・事業部門・財務部門の中間に立ち、情報の整理と可視化を行うポジションです。
<30代が評価されるポイント>
- 報告資料・提案資料をロジカルに組み立てられる
- 業務の背景や目的を理解して動ける
- 多部署と調整しながら進めるコミュニケーション力
即時に財務専門性がなくても、「数字を使って全体を俯瞰する力」が評価され、財務企画や戦略財務へステップアップしやすい職種です。
資金管理担当
資金管理担当は、毎日のキャッシュフロー(入出金の流れ)を管理し、将来の資金不足を防ぐ役割です。銀行との折衝、資金繰り表の作成、借入手続き、投資計画に合わせた資金配分など、財務の中核に近い業務が含まれます。
<30代が評価されるポイント>
- 数字を継続して追い、変化に気づける
- リスクや不確実性を考慮した判断ができる
- 責任感を持って「会社のお金」を管理できる姿勢
資金管理は企業運営の生命線であるため、ここで得られる経験は財務キャリアの土台になるでしょう。
30代の未経験者が財務職を目指すためのステップ
未経験から財務を目指す場合、「何から始めればいいのか」「どんな順番で進むべきか」が分からず、足が止まってしまうこともあるでしょう。ここでは、知識習得 → 実務に近い経験 → 転職・キャリアアップの3段階で進める、現実的なロードマップを紹介します。
STEP1 基礎知識の習得
最初に土台となる基礎知識を固めましょう。おすすめは「簿記2級」の取得です。財務は経営とお金の関係を扱うため、まずは数字がどのように作られるかを理解する必要があります。簿記2級は決算書の構造を理解でき、会社のお金の流れを読む基礎力となるでしょう。
並行して、FP2級があると金融の全体像が掴みやすく、ビジネス会計検定は決算書分析の視点を身につけるのに役立ちます。さらに、財務モデリング(財務状況や将来の財務パフォーマンスを定量的に分析するためのツール)を学ぶと、実務と結びつきやすいです。
ポイントは「資格を取ること」ではなく、実際の会社の数字が理解できるようになることです。焦らず、着実に基礎を固めましょう。
STEP2 財務に近い職種経験を積む
いきなり財務にこだわらず「財務と接点のある仕事」で経験を積む方法もあります。たとえば、経理は財務に最も近い職種で、月次決算や支払管理を通じてお金の流れを実務で体感できるでしょう。また、営業企画・経営管理・事業管理など、数字と戦略を扱う部署に関わることも有効です。
さらに、社内異動やプロジェクト参加で経験を積む方法も考えられます。「財務に関心があり、学んでいる」と明確に伝えることで、プロジェクト参加や一部業務の兼務が可能になるケースがあるでしょう。重要なのは、学んだ知識と現場の数字がつながり始めることです。「実務で数字を扱う経験」を積むことで、財務への説得力が大きく高まります。
STEP3 転職・キャリアアップへの挑戦
基礎知識と実務接点ができたら、いよいよ転職フェーズです。成長企業やIPO準備中の企業は、財務人材の需要が高く、「育成しながら任せる」というスタンスを取る場合が多いもの。SYNCAなら管理部門の求人に強いため、財務領域の求人に効率的にアクセスできます。
転職時に大切なのは「できること」ではなく「これまでの経験が財務でどう活きるか」を言語化することです。たとえば、「営業で数字に基づく提案をしてきた → 財務では銀行折衝や収支計画に活かせる」といった形です。財務は一気にプロになる必要はありません。段階的に「できること」を増やしていくことで、キャリアは着実に積みあがっていきます。
30代未経験者が財務職になるために必要なスキル・マインドセット
財務は専門知識だけでなく、相手と対話しながら物事を整理したり、先を見据えて判断したりする力が求められる仕事です。ここでは「ハードスキル」「ソフトスキル」「マインドセット」の3つに分けて、財務に必要な力を整理します。
ハードスキル
財務に必要なハードスキルは「数字を正しく読み、将来の流れを見通す力」です。具体的には、決算書を読む基礎として簿記の知識が必要になります。加えて、売上・利益・費用・資金繰りといった数字がどう変化しているのかを分析する「財務分析力」も重要です。
資金調達や投資判断に関わる場面では、事業計画を数値に落とし込む「財務モデリング」やExcelでのシミュレーション作成が役立ちます。また、資金管理ではキャッシュフロー(お金の入出金)の見える化が欠かせません。これらのスキルは、参考書・オンライン講座・実務経験を通じて段階的に身に付けることができます。
ソフトスキル
財務は「経営・現場・金融機関」など、さまざまな相手とコミュニケーションを取りながら仕事を進めていきます。そのため、相手の意図を理解し、必要な情報を整理し、分かりやすく伝えるスキルがとても重要です。
たとえば、事業部に対して「なぜこの支出が必要なのか」を確認しながら予算をすり合わせたり、社内会議に向けて経営陣に数字の根拠を説明したりする場面があります。数字そのものよりも、「数字が表す意味」を言葉にする力が求められるでしょう。また、関係者との調整や折衝が発生するため、落ち着いた対話姿勢や誠実さも評価されやすいポイントです。
マインドセット
財務は、会社全体のお金の流れを預かる仕事です。そのため、常に「会社全体を俯瞰する視点」を持つことが大切です。目先の数字だけでなく、「この判断が3か月後、1年後にどう影響するか」を考え、先を見通して行動する姿勢が求められます。
また、財務の現場では、あいまいな情報から状況を判断しなければならないことも多く、「わからないまま進める」のではなく、「必要な情報を取りに行く主体性」が問われます。責任感と誠実さ、そして学び続ける意欲がある人ほど、財務では成長しやすい傾向があるでしょう。
30代未経験から財務職を目指す成功パターンと注意点
未経験で財務に挑戦するうえでは、「どのような準備をした人が成功しているのか」「逆に、何が原因でつまずきやすいのか」を知ることが重要です。ここでは、成功者に共通する行動と、注意すべき落とし穴を整理します。
成功者に共通する行動・準備
未経験から財務への転身に成功する人は「学びながら実務につながる経験を積む」プロセスを意識的に踏んでいます。
まず、簿記やビジネス会計などで基礎知識を固め、決算書や資金繰りが理解できる土台づくりが欠かせません。そのうえで、経理・営業企画・事業管理といった「数字に触れる業務」に関わり、現場の数字と実務の動きを結びつけていきます。
また、財務はただ知識を持っているだけでは評価されません。銀行や事業部など多くの関係者とコミュニケーションを取るため、「相手の意図を理解し、数字の意味を言語化して伝える力」が重要です。成功している人の多くは、学習と職務経験、そしてコミュニケーション力の3点をバランスよく伸ばしています。これが、30代からでも財務に転じられる理由です。
失敗しやすいパターン|理由をおさえて正しい準備を
未経験から財務を目指す際、つまずきやすいポイントも存在します。よくあるのは「資格だけを取って満足してしまうこと」です。簿記は基礎として非常に重要ですが、資格取得そのものは目的ではなく入口にすぎません。現場で数字がどう動くかに触れなければ、財務に必要な判断力は身につかないでしょう。
また、「なんとなく転職を急ぐ」ことも危険です。財務は会社の中枢に関わるため、業務領域や企業フェーズによって求められる役割が大きく異なります。情報不足のまま応募すると、ミスマッチが起こりやすく、入社後にギャップが生じてしまうでしょう。
もう一つの落とし穴は「自己PRで経験の活かし方を言語化できていない」ことです。営業・事務・企画などの経験が財務にどうつながるのかを説明できないと、ポテンシャルを評価されにくくなります。
30代未経験が財務職を目指すならSYNCAを活用しよう
財務は、会社のお金の流れを通じて経営に関わる重要な役割です。30代からでも、基礎知識の習得と現場に近い経験を積むことで、着実にキャリアを築くことができます。大切なのは、「何を学ぶか」よりも「どの順番で積み重ねるか」。そして、自分の経験が財務にどうつながるかを言語化することです。
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