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自分自身のキャリア構築を考える際に、管理部門への転職を考える人も多いのではないでしょうか。しかし「年収はどの程度か」は気になるでしょう。
管理部門は、営業などの事業部門よりも年収が低めだといわれます。また、個人の技量や貢献による成果を測りにくい部署ですので、年収アップにつながる働き方もわかりづらいです。ここでは、管理部門の年収に着目し、その実態、年収の上げ方について説明します。
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管理部門とは
管理部門とは、他部署の活動を支え会社全体を運営・管理する部門です。生産や開発、営業、販売のように直接利益を産む部門とは違い、会社の運営、資金管理、従業員の管理などを担当し、「バックオフィス」ともいわれます。
管理部門の代表的な職種が、人事・労務、経理、総務です。また、より経営に近いところで機能する財務・会計、経営企画、法務、広報・IR、情報システムなどの職種も管理部門に分類されます。
管理部門の平均年収は低い?高い?
管理部門の平均年収は、職種によって差異があります。管理部門全体を見ると、平均年収よりも少し低い傾向にありますが、経営企画や財務・会計では比較的高い傾向にあります。また、経験や部署内でのポジションによっては、高い年収を獲得できることもあります。
民間の平均年収
民間企業の従業員の平均年収は、443万円です。これは、国税庁が2021年の実績を調査した「民間給与実態統計調査」によるもので、男女別では、男性545万円、女性302万円となっています(※1)。
(※1)参考:国税庁「民間給実態統計調査 令和4年9月」
管理部門の平均年収
管理部門の平均年収は、各部署によって異なります。それは、ルーティン業務に携わる単純労働の人たちが多い部署と、担当分野のスペシャリストが多い部署の偏りがあるからです。
また、専門的な部署ですので、経験が長く対応できる業務の範囲が広がるほど、給与が上がる傾向にあります。
管理部門の部門別の平均年収は?
管理部門の平均年収は、人事院の2022年度調査によると、事務職一般として考える際、係員で33万7376円、主任で40万5703円、係長48万1262円、課長で60万0209円となっています(※2)。
(※2)参考:人事院「民間給与の実態(令和4年職種別民間給与実態調査の結果)」
経理の平均年収
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」(※3)によると、経理に相当する「会計事務従事者」では
- 月給 30万3200円
- 賞与その他特別給与 86万1700円
- 年収(単純換算) 450万100円
全職種の平均年収と同程度の給与水準であることがわかります。
経理の業務は、日々のデータを入力するルーティンなものから、企業の経営判断を左右する管理会計データの分析・作成まで幅広く、ポジションや業務の難易度により収入が変わります。また、公認会計士や税理士の資格を持つと特別な業務に携われますので人材としての価値が高くなります。
(※3)厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
人事の平均年収
人事の平均年収は、同調査結果(「庶務・人事事務員」の項目を人事とみなす)によると、
- 月給 32万200円
- 賞与その他特別給与 106万4600円
- 年収(単純換算) 490万7000円
です。
経理よりやや高くなっています。人事も採用や労務のアシスタントから、経営に関わる戦略人事までさまざまなポジションがありますので、年収の幅は広いです。労務分野の専門家として社会保険労務士の資格を取得していると、労務関連の法令に基づき社会保険手続き、各種制度設計、労使間トラブルの解決などの業務を担うことができ、幅広い業務を担当することができます。
経営企画の平均年収
経営企画の平均年収は、同調査(「企画事務員」の項目を経営企画とみなす)によると、
- 月給 37万4200円
- 賞与その他特別給与 137万7100円
- 年収(単純換算) 586万7500円
です。
経営企画は、財務情報や環境分析をもとに、会社の経営方針を策定したり、M&Aや事業買収などを進める重要な部署です。社長や取締役会直下で会社の成長を支えますので、年収も比較的高くなっています。
総務の平均年収
総務の平均年収は、同調査(「総合事務員」の項目を総務とみなす)によると
- 月給 32万5000円
- 賞与その他特別給与 99万9500円
- 年収(単純換算) 489万9500円
です。
総務は、会社の備品や装備の管理から、各種催事・イベント等の運営を担います。大企業では株主総会を運営したり、役員や社員の社葬を取り仕切ったりもします。会社の活動が滞りなく進むように支える重要な職務であり、総務出身の取締役も多く存在します。
法務の平均年収
法務の平均年収は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」には適した項目がありません。大手転職サイトである「転職会議」(※4)のデータによると全世代平均で581万円というデータがあります。また、転職サイト「doda」の「平均年収ラカキング(職種別)2022年12月」(※5)を参照すると、年収634万円です。
法務は、管理部門の中でも、法令に対する理解や各種契約書類の管理、紛争への対応など法律家に近い業務を担うこともあり年収が高めになっています。
(※4)参考:転職会議「法務の年収まとめ (給料/平均年収/企業名などを集計)」
(※5)参考:doda「年収の高い職業は?平均年収ランキング(職種・職業別)【最新版】」
管理部門が年収を上げるためにすべきこと
管理部門にいながら、高い年収を稼ぐにはどうしたら良いでしょうか。ひとつには、担当する管理部門の中でキャリアアップをしていく方法があります。また、専門性を活かせる別の業種・職種に転職するという方法もあります。いずれの場合も、企業の管理部門で通用する以上の実力とスキル、実績が必要になります。
資格の取得
管理部門は高い専門性が求められるものですので、資格を習得すればスキルや知識が高まり、人材としての価値を上げることができます。
職種 | 必要な資格 |
---|---|
経理 | 日商簿記2級以上、公認会計士、税理士 |
人事 | 社会保険労務士、キャリアコンサルタント |
総務 | 中小企業診断士 |
法務 | 司法書士、行政書士 |
経営企画 | 中小企業診断士、経営学修士(MBA) |
習得の難易度が高い資格や学位がありますが、それらの獲得を目指して学習することにより、関連法令や判例に詳しくなるなど、業務の幅が広がり、より上位の業務を取り仕切ることができます。実績を築くことで、主要ポストへの着任やマネージャーへの昇進に至ることも可能です。
インセンティブの獲得
企業が運用しているインセンティブ制度による報奨獲得を目指すのも、収入を上げる打ち手になります。
企業では、モチベーションの向上や優秀な人材の獲得・離職防止のために、規定の給与以外にインセンティブ制度を運用している場合があります。管理部門の場合、営業や販売のように利益を生み出す部署ではないため、目標達成や成果の評価はそれ以外の軸になります。
人事では目標の採用数の獲得に成功した、経理では業務効率化で残業をゼロにした、総務では株主総会等の大イベントの予算を大幅に削減できたなどの成果が評価ポイントになるでしょう。
会社それぞれで、インセンティブ制度の内容はことなりますので、確認して、獲得を目指すのも良いでしょう。
転職をする
管理部門が大幅に年収を上げたいと考えるとき、効果的なのは転職です。同じ職種でも、大企業に転職することで年収、生涯給与が増えることが期待できます。また、ベンチャーやスタートアップでは、経験と専門性を生かし、CXO、CXO候補の地位に就任すると年収アップにつながる可能性もあります。
また、各職種での経験と専門性を生かし、専門のサービスベンダーに転職する、自分で起業・独立するという道もあります。管理部門はアウトソーシングされることもあり、スペシャリストを集めたサービスベンダーも多いです。実績や知識、スキルが高い場合は、そのような企業で実力を発揮し、高い年収を得ることができます。
また、各職種の経験が活かせる国家資格等を習得することで、士業として独立することも可能です。
管理職を目指す
管理部門が年収を上げるためには、部課長クラスの管理職を目指すこともひとつの方法です。スタッフレベルでは、平均年収よりも低い年収も、課長、部長になると大幅に給与が増えます。
人事院の「民間給与の実態(令和4年職種別民間給与実態調査の結果)」(※6)によると事務職全般の平均給与は、
役職 | 月給 |
---|---|
係員 | 33万7376円 |
主任 | 40万5763円 |
係長 | 48万1891円 |
課長 | 60万0209円 |
部長 | 71万1958円 |
です。賞与を2.5月分と仮定すると、課長で約870万円、部長では1,032万円を超えます。
また、管理職には、管理職手当がつきますので、それだけでも月々数万円単位の増加になるでしょう。管理職を目指し実績を積み重ねながら勤務し続けることで、年収を大幅にアップすることが可能です。
(※6)参考:人事院「民間給与の実態(令和4年職種別民間給与実態調査の結果) 表7 職種別、年齢階層別」
管理部門に必要なスキル
管理部門は、専門職であり会社を支える職種です。バックオフィスという名の通り、直接利益を上げる活動には携わりませんが、従業員が働く環境や、資金・資産、経営を管理する重要な位置付けのため、多くの業務を担当しています。業務の企画、進行、タスク管理などの能力とともに、マネジメント力やコミュニケーション能力も求められます。
営業職、企画職と同様かそれ以上のスキルがないと、管理部門は務まらないといっても過言ではありません。
パソコンスキル
管理部門では、一定以上のパソコンスキルが必須です。経理や人事では、資金管理、人材管理の分野でデータ入力、分析、書類作成が求められます。また、総務はさまざまな事案について企業全体への周知をしたり、備品を管理したりという業務があります。
経営企画や財務では、財務諸表をもとに、データを分析し施策を策定する業務に携わります。
管理部門では、文書作成、データ分析を行うことが多いため、業務には、Excelならば他データ抽出や関数が自在に扱えるレベル、Word、PowerPointでは提案書や契約文書等が難なく作成できるスキルが求められます。
コミュニケーション力
管理部門には、高度なコミュニケーションが必要です。管理部門の各部署には、社員、経営者、役員、投資家や株主、金融機関などとコミュニケーションする機会が頻繁にあります。これらのコミュニケーションは、通常のビジネスに求められるプレゼンテーション能力やヒアリング能力とは違って、しっかりと話を傾聴し、折衝や調整を成功させるためのコミュニケーションです。
人事、経理、総務は、従業員と経営の利害が衝突するような内容の対話をしなければならない局面もあります。また、経営企画や法務、財務は会議の主導権を握りながら折衝を有利に進める必要があります。
普段から、書籍で学んだり、先輩たちの交渉・折衝術を聴いたりして、高度なコミュニケーション能力の習得に努めましょう。
タスク管理能力
管理部門ではマルチタスク状態で複数のプロジェクトや業務が進行することが多いです。それだけに、多数の業務を管理する能力が求められます。
タスク管理は、業務に必要な項目で整理し、抜け漏れのないタスクブレイクダウンを行いガントチャートにより進行管理をするのが理想です。業務やプロジェクト全体像をつかみ、タスクとして細分化する能力が必要です。
すべての業務を棚卸ししてタスクに落とす作業に慣れることで、複数の業務を滞りなく進行することが可能になります。また、その能力を発揮することで、プロジェクトのリーダーになることが可能です。
マネジメント能力
管理部門は、リーダーシップとマネジメント能力が問われます。管理部門の多くの業務は、チームワークであり、アシスタントを含めた複数で向き合うことになります。
入力やデータ整理などの業務から、その結果を分析し課題を抽出する業務、課題が明確になったら、それを解決する業務、とプロジェクトには多くの仕事が絡みます。それらを遅延なく執行しながら、チームの工数を削減し作業効率を上げる工夫とアイデアを出し、チームメンバーの業務管理を行うことが、マネージャーの仕事です。
管理部門は、利益を生み出す部署ではなく、予算を使う部署ですので、予算管理も重要です。人材採用のコストを抑制したり、経理業務の工数を削減したり、マネージャーとして工夫できることは多いので、積極的に取り組みたいものです。
リスク管理スキル
管理部門は経営に近い部署ですので、その活動が経営リスクに直面する可能性もあります。
具体的には、新卒採用の際の面接で不適切な質問や態度があった、会計処理に対する解釈が国税当局と食い違った、などです。あらゆる炎上リスクをリストアップし、そのようなことが起きないように管理することが、管理部門には求められます。
また、財務状況、事業の予実管理、TOBを仕掛けられるなど、経営の安定性にかかわるリスク回避も、管理部門が常に考慮し、防衛しなければならないことです。
考え得るリスクを想定する想像力、それを回避するためのルール設計、トラブルが発生した際に損失を最小限に抑える問題解決力が、管理部門には求められます。
管理部門の仕事内容を理解し、キャリア構築のイメージを持ち転職に役立てよう
管理部門は、営業のように個人の成績が明確で、それによる報奨や給与アップにつながるような部署ではありません。しかし、会社を影から支える重要な業務を担っています。各職種ともに、専門性が求められ、求められるスキルや知識が必要ですので、未経験から転職する際にはよく職種の特徴を把握して準備してください。
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