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公認会計士試験の対策をこれから始める人にとって、合格に必要な勉強時間が気になるところです。科目の内容や勉強時間を確保したい理由を理解すると、自分にとっての公認会計士合格までの道のりがわかるでしょう。
この記事では、公認会計士試験の概要や合格までに必要な勉強時間について解説します。
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公認会計士になるためのステップ
公認会計士を目指す人にとって、合格から就職までの全体的な流れが気になるところです。公認会計士になりたいすべての人は、以下の3ステップを踏む必要があります。
- 公認会計士試験に合格する
- 実務経験を積む
- 公認会計士名簿に登録
この章では公認会計士へのなり方を解説するので、試験合格後の流れまで理解しましょう。
公認会計士試験に合格する
公認会計士になる最初のステップとして、毎年行われる試験への合格が必要です。試験は短答式試験と論文式試験の2段階で、両方とも通過すれば公認会計士に合格となります。
短答式試験は年2回行われ、どちらかに合格すると論文式試験への受験が可能です。論文式試験が不合格だった場合でも、申請により2年間は短答式試験を免除できます。まずは短答式試験合格を目指して学習に励むと、後々効率が良いでしょう。
実務経験を積む
公認会計士の登録には実務経験が求められるため、まずは監査法人に就職します。監査法人とは企業の監査を行える唯一の団体のことで、公認会計士の独占業務です。監査法人で働きながら仕事の基礎を身につけ、公認会計士登録を目指します。
公認会計士の合格者は、BIG4と呼ばれる大手監査法人に就職するケースが多いようです。国内の監査業務シェアの8割を占める上、所属する公認会計士が非常に多いと言われています。
公認会計士名簿に登録
公認会計士として仕事をするには、日本公認会計士協会への登録を行わなければなりません。登録には以下の3つの要件すべてのクリアが必要で、通常3年間かけて条件を満たします。
- 監査法人で2年間実務経験を積む
- 補習所に3年間通う
- 修了試験に合格する
監査法人に就職しながら補習所に通うと、3年目に修了試験へのチャレンジが可能です。修了試験は公認会計士試験より合格率が高く、再受験もできます。
公認会計士試験について
公認会計士の勉強を始める前に、試験の概要について気になる人も多そうです。試験の概要を理解し、学習の準備をスタートしましょう。
受験資格
公認会計士はほかの難関試験とは異なり、学歴に関係なく誰でもチャレンジできる国家資格です。ほかの難関資格である医師や弁護士になるには専門大学を卒業しなければなりませんが、公認会計士の受験に学歴は関係ありません。高卒者や大学在学中の取得を目指す人もいると言われるほど、幅広い層が受験できる資格です。会計や経理経験者が次のキャリアを目指す際に、公認会計士の取得を考えるケースも多いでしょう。
公認会計士の試験内容・形式
前述した通り、公認会計士の試験は短答式試験と論文式試験の2段階です。ここでは、それぞれの試験に関する内容を解説します。
短答式試験
短答式試験とは、公認会計士の基礎知識をマークシート形式で問うテストです。会計や企業法にまつわる内容が4科目出題されるので、それぞれの内容をまんべんなく勉強し試験に臨みます。
短答式試験は年に2回、5月と12月に行われるため、一度不合格になっても半年後に再受験が可能です。一年のうちに2度チャンスがあるので、自身の転職スケジュールに合わせての受験ができるでしょう。
論文式試験
短答式試験に受かったら、次は毎年8月に行われる論文式試験への合格を目指します。短答式試験のマークシート形式とは異なり、各科目への理解度を文章で測るテストです。複数の科目を3日間に渡って受験し、11月の合格発表に名前が載っていれば公認会計士への一歩を踏み出せます。
仮に論文式試験が不合格だった場合でも、申請すれば2年間は短答式試験の免除が可能です。
試験の日程
短答式試験は毎年5月と12月、論文式試験は8月下旬の3日間に渡り実施されます。短答式試験は年に2回行われるため、どちらかに合格すれば論文式試験の受験が可能です。
論文式試験は短答式試験の合格者のみが受験でき、毎年8月下旬の土・日・月曜日にテストが開催されます。試験は全国10カ所以上で開催されるため、あらかじめ日程と会場を把握した上で受験に挑みましょう。
受験料
公認会計士試験の受験料は、短答式試験と論文式試験の両方合わせて19,500円です。公認会計士試験の願書を提出する際に支払いが必要となるので、お金を忘れずに用意しましょう。
受験料を支払ったものの試験を受けなかった場合、返金はできないのであらかじめ注意が必要です。また、論文式試験に不合格だった場合、翌年に再受験する際にも同額を支払います。
公認会計士試験の難易度・合格率
公認会計士・監査審査会(※1)によると、令和4年公認会計士試験の論文式試験の合格率は7.7%でした。論文式試験の受験者4,067名のうち、1,456名が合格したことになります。
また、公認会計士は医師や弁護士と並ぶ難関試験とされており、出題の難易度が高い資格です。試験は相対評価のため、点数での合格ラインが明確にあるわけではありません。毎年全体の上位7〜11%ほどが、公認会計士試験に合格しています。
(※1)参考:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験の合格発表の概要について」
公認会計士試験の勉強時間
難関資格である公認会計士試験に合格するには、一体どれほどの勉強量が必要なのか気になるところです。公認会計士に一度で合格するために必要とされる、一般的な勉強時間を理解しましょう。
1年で合格した人の場合
公認会計士に1年で合格する人の場合、年間で2,500〜3,000時間の勉強が必要と言われています。日単位で単純計算すると、毎日休みなく学習しても7時間〜8時間半ほどの勉強量が必要です。
2年以上かけて合格した人の場合
公認会計士に2年以上かけて合格する人の場合、2年間で4000時間の勉強が必要と言われています。日単位で単純計算すると、休日もすべて含めて毎日5時間半の勉強量が必要です。
状況別の必要勉強時間
公認会計士合格までに自分がどれほど学習したら良いか、いまいちイメージが湧かない人も多そうです。ここでは学生と会社員の場合とで必要な勉強量を紹介するので、自身の状況と照らし合わせて理解しましょう。
学生の場合
学生生活と両立しながらの試験勉強を想定すると、合格には1年半〜2年ほどを見込みたいところです。1年半で合格するための勉強時間を3,500時間とすると、1日6時間半ほどの学習量が求められます。2年で4000時間勉強し合格を目指す場合は、1日5時間半ほど学習すると良いでしょう。
会社員の場合
フルタイム会社員の場合は勉強時間が限られるため、2年以上の学習で合格を目指す人が多い傾向にあります。平日9時から18時に勤務し24時就寝だとすると、勉強に費やせるフリータイムは多くて3時間ほどです。平日にプラスして休日に10時間ほど学習すると4000時間確保でき、2年での合格が見えてくるでしょう。
公認会計士試験合格までの年数
公認会計士試験合格には、平均して2〜4年かかると言われています。前述した通り、公認会計士試験に一度で合格するには生活時間の多くを学習に費やさなければなりません。
ほとんどの受験者が合格までに最低2年はかけているので、一度で通過できなくても諦める必要はないでしょう。毎日コンスタントに学習し、自身に足りない知識を一つひとつ身につける姿勢が大切です。
科目別の勉強時間と学習方法
公認会計士試験の対策をスタートする際、必要な学習量や方法についても気になるところです。ここでは、短答式試験と論文式試験で出題される科目や、必要な勉強時間について解説します。
短答式試験の科目別勉強時間と学習方法
短答式試験は、公認会計士として必要な知識をマークシート方式で問うテストです。ここでは、短答式試験に出題される科目や必要な勉強時間、学習方法を解説します。
①財務会計論
短答式試験の財務会計論における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 600時間〜750時間 |
出題範囲 | 簿記・財務諸表論・会計に関する理論 |
財務会計論は出題範囲が広いため、合格に必要な学習時間は多めに設定されています。中でも、簿記2級レベルの出題は全体の30%以上を占めるため、財務会計論全体の重要な得点源です。簿記2級の内容を優先して進めながら、ほかの科目を反復学習する方法が効果的でしょう。
② 管理会計論
短答式試験の管理会計論における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 300時間 |
出題範囲 | 原価計算・管理会計 |
管理会計論は財務会計論同様、原価計算や管理会計など簿記2級の範囲が出題されます。財務会計論の学習が進むにつれ、管理会計論の理解も捗るでしょう。中でも、原価管理基準は出題数が多く、得点に繋がりやすいため重点的な勉強がオススメです。
③監査論
短答式試験の監査論における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 170〜200時間 |
出題範囲 | 財務諸表監査・中間監査・四半期レビューや内部統制監査の理論、制度及び実務 |
監査論は理論問題のみの出題であるため、公認会計士試験の中でもボリュームが少ない科目と言われています。問題集や模試を繰り返し解き、よく出る出題形式は確実に点数に繋げられるようにしましょう。効率的に学習していると得点しやすく、空いた時間をほかの科目の勉強にも当てられます。
④企業法
短答式試験の企業法における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 300〜400時間 |
出題範囲 | 会社法・商法・金融商品取引法・監査を受けるべきこととされている組合その他の組織に関する法 |
企業法は公認会計士の中でも範囲が広い上、短答式試験ではボリュームが最も多いと言われています。全体像の把握までが大変であるものの、知識問題がメインなので慣れると点数が安定する科目です。模試や問題集を繰り返し解き、苦手な部分が見えてきたら集中的に反復練習しましょう。
論文式試験の科目別勉強時間と勉強方法
論文式試験とは、公認会計士として必要な知識の理解度を文章で測るテストです。ここでは、論文式試験に出題される科目や必要な勉強時間、学習方法を解説します。
①会計学(財務会計論)
論文式試験の財務会計論における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 200〜250時間 |
出題範囲 | 簿記・財務諸表論・会計に関する理論 |
財務会計論では、短答式試験と同じく計算問題と理論問題が出題されます。計算問題は記述式になりますが、短答式試験対策の延長と捉えて学習して良いでしょう。理論問題は短答式試験と内容が異なるため、テキストの読み込みや問題集の反復練習が求められます。
② 会計学(管理会計論)
論文式試験の管理会計論における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 200時間 |
出題範囲 | 原価計算・管理会計 |
管理会計論の出題は、短答式試験の内容と大きく変わりありません。短答式試験の内容が記述式になったと捉え、文章での回答の仕方を覚えておくと良いでしょう。短答式試験を突破した人なら、論文式試験も問題なくクリアできると考えられます。
③監査論
論文式試験の監査論における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 150〜200時間 |
出題範囲 | 財務諸表監査・中間監査・四半期レビューや内部統制監査の理論、制度及び実務 |
監査論は、論文式試験の中で最もボリュームの少ない科目と言われています。短答式試験で監査論の基礎ができている人は、論文式試験でもそこまで苦労せず突破できるでしょう。試験対策では知識のおさらいはもちろん、文章の書き方に慣れるように心がけます。
④企業法
論文式試験の監査論における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 200〜300時間 |
出題範囲 | 会社法・商法・金融商品取引法・監査を受けるべきこととされている組合その他の組織に関する法 |
企業法は、論文式試験の中でも学習ボリュームの多い科目と言われています。また、短答式試験とは出題内容が異なるため、本番前に集中的に対策したい科目です。短答式試験とは気持ちを改め、新しい知識を得るつもりで問題集の反復練習に取り組みましょう。
⑤租税法
論文式試験の租税法における学習時間の目安や、出題内容は以下の通りです。
学習時間の目安 | 330〜400時間 |
出題範囲 | 租税法総論及び法人税法、所得税法などの租税実体法 |
租税法は論文式試験で新たに加わる科目で、計算問題と理論問題の両方が出題されます。論文式試験の中では最もボリュームのある科目であり、学習時間は多めの設定が必要です。法人税法や所得税法、消費税法などについて、問題集の繰り返しで力をつけていきます。
⑥選択科目
論文式試験には選択科目があり、民法・経済学・経営学・統計学から1つ選んで問題を解きます。それぞれに必要な勉強時間は、民法か経済学なら400時間ほど、経営学か統計学なら200時間ほどです。好きな科目を選べるため、受験者の8割は学習ボリュームの少ない経営学を選択します。統計学を選んでもいいですが、数字がたくさん出てくるので苦手な人は注意しましょう。
なぜ公認会計士試験は勉強時間がこれほど必要なのか
公認会計士試験の勉強時間をたくさん取らなければならないのは、以下の3つの理由からです。
- 試験範囲が広い
- 専門性が高い
- 競争試験のため
短答式試験で4科目、論文式試験で6科目をクリアしなければならず、必然的に勉強量が増えます。概論だけでなく計算方法の理解を求められる科目もあり、専門性の高さも勉強量が増える理由の一つです。また、公認会計士は順位の高い人から一定の人数が合格していく競争式試験と呼ばれています。明確な合格ラインがなく、毎年ボーダー点数が変動するためライバルに勝つことを意識しながらの学習が必要です。
公認会計士試験は難易度の高い問題を解き切り、ライバルに差をつけるためにたくさんの勉強時間が求められます。
それでも公認会計士資格を取得する理由
公認会計士は相当な努力を要する資格ですが、それでも取得を目指す人が絶えない理由が気になるところです。取得すると将来的な安定感があり、苦労した分の見返りが大きいことを理解しましょう。
高額収入が見込める
公認会計士資格を取得すると、入社後に高収入が見込めます。国税庁(※1)によると、令和3年の1年間に働いた人の平均給与は443万円でした。一方、求人ボックス(※2)によると、2023年8月23日時点での公認会計士の平均年収は648万円です。公認会計士は、日本全体の平均給与より1.5倍多く収入を得られることがわかります。
年収幅は広く1,155万円以上もらう人もおり、公認会計士は日本全体で見ると高収入を得られる仕事と言えるでしょう。
(※1)参考:国税庁 民間給与実態統計調査 17ページ 「2 平均給与」
(※2)参考:求人ボックス 給与ナビ 「公認会計士の仕事の年収・時給・給料」
社会的信用度が高い
公認会計士は専門性の高い国家資格で、取得すると社会的信用を得やすい傾向にあります。人の価値は肩書きだけでは測れないものの、年齢が上がるにつれ社会的な立場や地位で判断される場面は少なくありません。公認会計士は広く知られた難関資格であるため、実社会において信用度が高い傾向にあります。社会的信用度が高いと、住宅ローンの借り入れやクレジットカードの審査において有利に働くでしょう。
キャリアプランの選択肢が多い
公認会計士を取得すると、これからの社会人生活においてキャリアプランの選択肢が広がります。高収入で社会的地位があるにもかかわらず、不安定な仕事であれば継続は難しいものです。公認会計士が行える法定監査は大きい企業に実施義務がある業務で、仕事がなくなることはまずありません。また、公認会計士との肩書きがあると転職や独立が比較的しやすく、今後仕事に困ることは少ないと考えられます。
公認会計士試験合格のためのポイント
今から公認会計士を目指すなら、合格に近づけるポイントを知っておくに越したことはありません。公認会計士試験には攻略法があり、ポイントを押さえると最短での合格を狙えるでしょう。
公認会計士の受験学校を利用する
公認会計士の受験学校を利用し、ポイントを押さえた学習で効率アップを図るという方法です。公認会計士試験を独学で突破しようと考える人もいそうですが、合格者の自己学習の割合は10%にとどまります。公認会計士試験の出題範囲は非常に広いため、最短での合格を目指すならテストの傾向を捉えた学習が必要です。受験学校を利用すると、試験のプロが効率よく指導してくれるためテンポよく合格に近づけるでしょう。
論文式試験の選択科目は『経営学』を選ぶ
論文式試験の選択科目には経営学を選び、効率よく得点を稼ぐ方法がオススメです。論文式試験には選択科目があり、経営学・経済学・民法・統計学の中から受験する科目を自由に選べます。選択科目にこだわりがなければ、学習ボリュームの最も少ない経営学を選びましょう。出題範囲が限られており、ひと通り対策ができればあとの時間をほかの科目の勉強に当てられます。
理論問題よりも計算問題の対策をする
公認会計士試験では、理論問題より計算問題の対策に重きを置くと効率良く勉強できます。短答式試験・論文式試験どちらにしても、計算問題の比重が大きいです。出題範囲の広い計算問題が解けないと、そもそも公認会計士試験に合格できません。また、計算問題を先に進めていくと、あとから理論問題の理解力が格段にアップします。まずは計算問題をたくさん解き、少しずつ理論問題とリンクさせていく勉強法がオススメです。
効率化と勉強時間の確保で公認会計士合格を目指そう
公認会計士は誰でも目指せる資格でありつつも、年単位で勉強時間の確保が必要な難関試験です。1日の生活時間は限られるので、いかに効率よく点数を稼げるかが課題となります。勉強時間を十分に確保し、効率を重視しながら公認会計士試験を攻略しましょう。