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公認会計士の独立は難しいと聞くものの、なぜなのか理由をよく知らない人は少なくないでしょう。難しいと言われる理由や独立後の仕事内容がわかると、公認会計士としての開業のポイントが見えてくるでしょう。この記事では、公認会計士の独立の難しさや失敗しないための対策を解説します。
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公認会計士の独立が難しいと感じるポイント
公認会計士は名の知れた資格であるにもかかわらず、なぜ独立が難しいのか気になるところです。公認会計士には、企業への就職とは違った難しさがあることを理解しましょう。
参考:公認会計士とは?|資格を取得する方法や仕事内容、年収・やりがい・将来について解説
顧客獲得のノウハウが少ない
独立直後は顧客獲得のノウハウが少なく、思ったように仕事を得られないという理由です。監査法人などの組織にはある程度決まった顧客がいますが、独立後は自分で一からクライアントを探す必要があります。どのような客層をターゲットにし、いかなる方法で集客を行うかを戦略的に考えなければ商売に繋がりません。集客方法はインターネット広告や知人からの紹介などさまざまですが、ノウハウに慣れるまでは仕事が取れず苦労する人が多いようです。
営業に慣れていない
独立したての人は営業に慣れていないため、自身のアピールポイントをクライアントに伝えられずチャンスを逃しがちです。特に大きな監査法人だと、顧客数が安定しており必死に営業をかける必要はありません。相手のニーズのリサーチや自分の売り込みをしなくても、ある程度仕事をもらえて対価を受け取れます。独立直後は営業に慣れておらず、いざ問い合わせがあっても仕事を受けられないというパターンは少なくないようです。
仕事量が増える
公認会計士として独立すると、身の回りのことを全て自分でやらなければならず仕事量が自ずと増えるものです。組織に所属していれば、日頃の連絡対応や経理業務などは事務員がやってくれるため、公認会計士は自身の仕事に集中できます。しかし、独立すると身の回りの手続きをしてくれる人がいないため、働きながら事務作業を行わなければなりません。ケースによっては本業以外の作業が増え、時間外労働が増えることを知っておきましょう。
公認会計士の独立後の年収
公認会計士の独立後の年収は、平均して1,000万円ほどと言われています。一方、求人ボックス(※1)によると、企業内公認会計士の年収は648万円でした(2023年8月時点)。会社員の平均と比べると、公認会計士の年収は独立後のほうが高いと言えます。ただし、独立後の年収は実力が反映されるため、中には会社員時代の給与を下回る人もいれば、平均の倍以上を稼ぐ人もいるでしょう。
(※1)参考:求人ボックス 給料ナビ 「公認会計士の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)」
公認会計士の独立後の主な3つの仕事内容
公認会計士として独立する前に、実際にどのような仕事ができるのか知りたい人は多そうです。今までの経験を活かした業務だけでなく、新たなフィールドにもチャレンジできるでしょう。
税理士業務
公認会計士は試験を受けなくても税理士登録を行えるため、資格を取得し税務を行うケースが多いです。納税は国民の義務であるため、税金に関する業務は景気にかかわらず個人や企業などから一定の需要があります。税理士法人を設立すれば、公認会計士の専門的な業務と税務を組み合わせて行えるため、幅広いニーズに応えられるでしょう。ただし、0から税務をスタートする場合は、税理士事務所などである程度経験を積む必要があります。
コンサルティング業務
公認会計士の経歴を活かして、企業を相手にコンサルティング業務を行うケースもあります。以下は、公認会計士がコンサルタントとして活躍できるジャンルの一例です。
- 財務・会計
- IPO
- M&A
- 経営全般
財務や会計、IPOやM&Aなどのスキルの習得は、監査法人にいながらチャレンジする人も少なくありません。経営全般のコンサルティングは、公認会計士としてのスキルだけでなく企業の戦略を考えられるほど幅広い知識が必要となります。
監査法人の非常勤業務
独立して間もない頃は、監査法人の非常勤業務をしながら生計を立てる公認会計士も珍しくありません。会社を退職していざ開業したとしても、すぐに自力で収益を上げるのは優秀な人でも難しいものです。自分の事業が安定するまでは、一定の需要がある監査法人でアルバイト的に働くという方法も視野に入れておきましょう。監査法人の非常勤業務の日当は高くて5万円ほどであるため、繁忙期のタイミングになるべく高時給の求人へ応募するのがポイントです。
公認会計士として独立する3つのメリット
公認会計士として独立すると、実際にどのようなメリットがあるのか気になるところです。年収や働き方など、企業に所属するよりも自由度が高い点を知りましょう。
メリット1:収入アップが目指せる
公認会計士として独立が成功した場合、企業に所属するよりも収入アップを期待できます。高収入を目指して公認会計士になったものの、会社員では給料に伸び悩む人も少なくありません。企業に雇われているうちは、どれほど真剣に働いてももらえる給与に上限があります。公認会計士として独立すると、仕事の量や内容を自由に決められるので収入に限りがありません。働いた分だけ年収アップの可能性があるので、仕事のモチベーションにも繋がるでしょう。
メリット2:仕事・クライアントを選べる
公認会計士として独立すると、企業勤めとは違い仕事やクライアントを自ら選べます。監査法人でのクライアントは大手企業がメインであり、業務も監査に限られることが事実です。チャレンジしたい仕事があっても、事業形態上挑戦が難しいケースのほうが多いでしょう。公認会計士として開業すると、事業内容や関わるクライアントを自由に決められます。仕事にも主体性が生まれ、クライアント企業の成長に直接携わる貴重な経験ができるはずです。
メリット3:ワークライフにあった働き方
独立後の働き方によっては、会社員では実現できなかったワークライフバランスを叶えられます。特に、監査法人では激務であるケースが多く、将来性を心配する人も多いでしょう。公認会計士として長く働き続けるには、仕事の仕方を見直すタイミングも必要です。公認会計士として開業すると決定権は全て自分になるので、仕事の内容や量を自由に設定できます。公認会計士を続けながら、会社員時代には叶えられなかった生活を手に入れられるでしょう。
公認会計士として独立するデメリット
公認会計士として独立する場合、いい部分だけでなく気をつけたい点があることも事実です。企業内公認会計士としては感じることのない、不安定さや孤独があることを知りましょう。
デメリット1:収入が安定しない
公認会計士として独立後しばらくは、収入は安定しないものと思ったほうがよいでしょう。既述の通り、開業したての頃はクライアントが少ない上、受注できる仕事も限られます。収入が安定しないだけでなく、企業に勤めていた頃の給与に届かない日々が続くかもしれません。ただし、収入の不安定さは独立すれば誰もが一度は通る道であり、着実に信頼を積み上げていけば一定の売り上げを見込めます。なるべく早く収入が安定するように、後述する対策を徹底しましょう。
デメリット2:大きな監査は難しい
監査法人でチャレンジできるような、大きな監査に取り組む機会は少なくなるでしょう。個人事務所は大規模会社と比べると、どうしてもマンパワーや知名度が劣りがちです。したがって、受注できるプロジェクトも大企業と比べると規模が小さくなります。公認会計士としてさまざまな企業ケースに触れたい人は、会社勤めのほうが向いているかもしれません。逆に、独立するまでは企業に所属しながら、大規模な監査に積極的にチャレンジするのがおすすめです。
デメリット3:孤独を感じる
公認会計士以外にも言えますが、独立するにあたって孤独との戦いはつきものです。企業に勤めている場合はチームでの活動が多く、困ったことがあっても仲間にすぐ相談できます。同僚や上司の働きぶりを見ながら切磋琢磨できるのは、企業内公認会計士ならではの特権です。独立すると決定権は全て自分になるので、どう判断すればよいかわからず悩むことが増えます。なるべく孤独を感じないように、公認会計士のネットワーク作りを今のうちから始めましょう。
公認会計士の独立で失敗しないための対策
公認会計士の独立で、なるべく失敗しない方法があるなら知っておきたいものです。企業で働く特権を最大限に活用し、独立前の準備を行いましょう。
独立に必要なスキルを磨く
公認会計士の独立に必要なスキルは、企業で働きながら身につけるのがおすすめです。以下は、監査以外で公認会計士が独立する前に身につけたいスキルです。
- M&Aアドバイザリー
- IPOコンサル
- 税務
ただし上記は、監査法人に所属しながら経験するチャンスがなかなか得られないスキルでもあります。M&AアドバイザリーやIPOコンサルは、スポット的にチャンスが訪れたら積極的に挑戦しましょう。税務に関しては、一度税理士法人へ転職しスキルを磨く方法が最も効率的だと考えられます。
集客準備を整える
監査法人に勤めながら、集客準備としてネットワーク作りをしておくことも重要です。独立後に一から人脈を作るのと、企業に所属しながら集客準備をするのとでは滑り出しのスピードが異なります。会社の肩書きを背負いながら人脈を作れるのは、企業内公認会計士だけの特権です。仕事で出会う人々との繋がりを大切にしながら、日々の業務に真剣に取り組みましょう。なお、SNSを上手に活用して、隙間時間で幅広いネットワーク作りを行う人もいるようです。
税理士事務所を経験する
前述した通り、税理士としてのスキルを身につけるために税理士事務所を経験するのも良いでしょう。税務のスキルは景気に関係なく一定の需要があるため、習得する公認会計士は多いものです。公認会計士と税理士のスキルの掛け合わせは企業からのニーズが高いため、独立の際は積極的に検討しましょう。独立が決まっている場合は、早めに税理士登録を行うとスムーズに開業できます。
独立の注意点を理解してから開業準備をしよう
公認会計士は独立する人の多い士業の一つで、実際に社会でのニーズが高いことも事実です。しかし、企業内公認会計士としての経験が長いというだけでやみくもに開業すると、失敗に終わる可能性があります。独立の滑り出しがスムーズになるように、今いる企業でさまざまな仕事にチャレンジしましょう。
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