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会社運営において、システム回りの業務を行う情報システム部の重要性が高まっています。しかし、少人数のスタッフがIT全般を支える状況、となってしまっている企業は少なくありません。
この記事では、情報システム部の業務過多や人員不足となっている理由から、解決方法まで解説。最後まで読んでいただければ、情シスの業務改善や人員不足に繋がるヒントを得られるでしょう。
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一人情シスとは
一人情シスとは、情報システム部門(情シス)の業務を1〜3人程度の少人数、あるいは1人だけで担当する状況を指します。社内のシステム構築、保守運用、IT機器の管理など多岐に渡る業務を一手に引き受け、事実上の「ITなんでも屋」となっているケースが多いです。
人材不足が顕著な小規模企業で見受けられ、従業員数が多い企業でもIT知識を持つ人材が不足している場合に起きます。
業務範囲の広さや業務量に対して人材が不足しているため、働き手に過大な負担がかかるため「一人情シス」は問題視されています。
一人情シスの問題点
- システムトラブルの際の対応が遅れる
- 新しいシステムの導入が滞る
- 保守がおろそかになる
一人情シスは、上記のように組織全体の生産性や業績に影響を与える問題です。
一人情シスが抱える課題
一人情シスは、多くのタスクが一人のシステム管理者に集中するため、大きなリスクを抱えています。システムのトラブル対応が遅延し、業務のスペシャリスト化が難しくなり、専門技術のアップデートが追いつかなくなる可能性もあるでしょう。
一人情シスが抱える具体的な課題
- 業務量の増加
- トラブル対応の遅延
- 業務の俗人化
- スキルアップの困難
- 前任者からの引継ぎが不十分
上記の課題を理解するためには、それぞれの項目においてどのような困難があるのかを知ることが大切です。
業務量の増加
業務量の増加は一人情シスにおける深刻な課題となっています。情報システムはもともと多岐にわたる管理・保守の業務を行う部門です。業務量が一人にのしかかると、システム企画やセキュリティ管理などのコア業務以外の業務に時間を割かなければなりません。
従業員からの「パスワードを忘れた」「パソコンが固まった」などの些細な問い合わせへの対応(ヘルプデスク対応)も個別に行う必要が出てきます。情シス部門以外の業務も兼任している場合、すべてのタスクが適切にこなせなくなる危険性が高くなるでしょう。
また、一人ひとりの業務量増加が進むと、労働基準法で定められた労働時間をオーバーし法的なリスクも高くなります。
トラブル対応の遅延
一人情シスが直面する一つの課題として、システムトラブル時の対応遅れがあります。多岐にわたる業務に専念する一方、システムエラーや障害が発生した場合に対処が遅くなりがちです。
小規模なチームであればあるほどトラブル対応の遅延は顕著になり、迅速な問題解決が困難に。テレワーキングの増加は外部からのシステムアクセスが増え、必要なセキュリティ対策も拡充させています。
情報漏えいやウイルス感染のリスクが高まる中で、十分なセキュリティ対策が欠けてしまう可能性もあると言えるでしょう。トラブル対応時の遅延は企業にとって大きな損失となり得ます。
業務の俗人化
業務の俗人化は、情報システム部で顕著な課題です。一人情シスでは専門的な業務に没頭するあまり、業務が他のメンバーに共有されにくくなります。
専任の担当者がいない場合、急なシステムの不具合に対応できず業務が一時停止する事態も発生するでしょう。業務の俗人化は業務効率の低下だけでなく、システムの安定性にも影響を与え、会社全体の業績にも響く可能性があります。
業務の代替手段を確立し、万が一の事態にも柔軟に対応できる体制を整えることが、一人情シスの課題を乗り越える鍵です。
前任者からの引継ぎが不十分
情シス部門では多岐にわたる業務が存在し、すべての詳細やノウハウが文字データやマニュアルとして整理されていない場合も少なくありません。
一人情シスの担当者が離職すると、後任者が苦労するシーンが想像できるでしょう。業務範囲の広さからくる情報の多さは、後任者への十分な引継ぎを困難にさせます。
また、専門的なスキルやノウハウ、組織独自のシステムの運用方法などの文字にできない業務の引継ぎも課題です。情報不足は、新しい担当者が業務をスムーズに進める際の大きな障壁となるでしょう。
解決策としては、後任者がスムーズに業務を進められる体制を作ることが重要です。業務プロセスを可視化し、マニュアル化するとともに定期的な情報共有の場を設け、知識の蓄積を図る取り組みが求められます。
スキルアップができない
一人情シスはスキルアップの機会が限られています。情シス部門は常に進化するIT技術を学ぶ時間とリソースが不可欠です。業務の多さから学びの時間が捻出できず、新しい技術や情報の更新が遅れがちとなります。
相談できる先輩社員や仲間のいない環境は、自身のスキル向上への道を険しくし、スキル自体が向上しないことに焦りや手詰まりを感じることも増えてくるでしょう。
一人情シスが増加している原因
一人情シスが増えることは企業としても一つのリスクとなります。一人情シスが増加している背景を知り、解決していくことが大切です。
一人情シスが増加している原因
- IT人材が不足不足している
- 情シスへの理解が不足している
- クラウドサービスへの移行している
それぞれ解説します。
IT人材不足
国内では多くの企業がIT人材不足に頭を抱えています。IT人材の確保は企業にとって切実な課題となっており、これが一人情シスを生む大きな原因の一つです。
IT人材側も情シスの厳しい現状を知っているため、応募を避けることもあります。採用できたとしても、業務の負担が大きすぎて早期に退職してしまうケースも多いです。
ITスキルを持つ社内SEを採用することは、企業にとって多大なコストがかかる面もあり、業務と情シス業務を兼任する「ゼロ情シス」となっているケースもあります。今後はIT人材を確保し、彼らが持続可能なキャリアを築ける環境作りが不可欠です。
情シスへの理解不足
情報システムへの理解不足が、一人情シスの増加を招いている側面もあります。経営者層の中で情シスの重要性を十分に理解していない場合が多々あり、必要な予算や人員が割り当てに消極的なケースが多いです。
近年、IT技術は日進月歩で進化し、その管理や運用は複雑化しています。情シス部門の業務量や範囲が拡大しても、一人で対応し続ける状態が慢性化。人材不足が続くことで、新しい技術やツールの導入が遅れ、さらに業務の効率化が難しくなる悪循環を生み出しています。
問題解決のためには、経営層が情シスの役割と重要性を深く理解し、適切な投資や人材確保を図ることが大切です。情シス部門も自身の業務や課題をわかりやすく経営層や他部門に伝えるスキルが要求されます。
クラウドサービスへの移行
クラウドサービスへの移行も、一人情シス増加の一因となっています。クラウドサービスの普及により、データ管理やアプリケーション運用を外部ベンダーに委ねる形が主流となってきました。
サーバー管理や日々のメンテナンス業務が減少し、情シス部門の手が空く一方リソース削減の流れが生まれ、情シス部門が縮小されるケースが見受けられます。
しかし、業務量が削減されたと思い込み情シス部門のリソースが削減され、一人情シス化に繋がります。
新たなサービスを導入しようとすることで、情シスは対応に追われてしまい負担は軽減されていないことも多いです。クラウドサービスを上手く活用し、効率的な運用を実現するには、情シス部門のスキル向上と、企業全体との連携が重要となります。
一人情シスの対策方法
一人情シスの対策方法について解説します。
一人情シスの対策
- 業務範囲を明確にする
- ITアウトソーシングを活用する
- 外部の勉強会に参加する
- ツールを導入する
一人情シスの状況は企業の発展においてもリスクとなり得ます。対策を行い、適正な情シスの運用を行える環境構築が大切です。
業務範囲を明確にする
一人で情報システムを担う場合、業務範囲の明確化は不可欠です。まずは、コア業務とノンコア業務を明確に区別しましょう。コア業務は情報システム部の主要な役割であり、ノンコア業務は外部に委託するなどして、主要な業務に専念できる環境を作ることが大切です。
次に、業務範囲を明確にする手段として、マニュアルやFAQを整備します。社内の業務プロセスを標準化させることも業務の俗人化を防ぐでしょう。
業務プロセスの明確化は、ミスの防止や業務の効率化にも寄与し、情報システム部に対する他部署からの理解を深める材料ともなります。
一人情シスの厳しい環境では、経営層とのコミュニケーションも不可欠です。業務範囲やリソースの不足、必要な投資について、リアルな現場の声を経営層に適切に伝え、理解を得ることも、持続可能な情報システム運用のための重要なポイントとなります。
ITアウトソーシングを活用する
ITアウトソーシングは、情報システム部の業務を外部の専門企業に委託することで、内部リソースの負担軽減と専門的なサポートを得る手段です。
アウトソーシングは、内部でのスキルやリソース不足を補ううえで効果を発揮し、コストを抑えることも可能にします。外部のプロに一部の業務を任せ、内部の担当者が戦略的な業務やコア業務に集中できる環境を構築できるでしょう。
業務を明確に分析し、どの領域を社内でコントロールすべきか、どの領域を外部に委託すると効率がいいのかを見極めることがアウトソーシングの成功につながります。
外部の勉強会に参加する
外部の勉強会への参加は、一人情シス対策として効果的です。車内にいるうちは業務に追われてスキルアップが望めません。専門知識を深めるため外部のセミナーや研修会への参加は一人情シスの対策となるでしょう。
上司や経営層に勉強会の重要性を理解してもらうために、身につく技術や情報が、どのように会社の業務に貢献するのかを説明することも大切です。得られた知見を社内でシェアするなど、参加の価値を高める工夫も行う様にしましょう。
ツールを導入する
一人情シスの対策方法として導入するべきツールについて解説します。ツールを活用することで仕組み面から問題を解決しやすくできるでしょう。
メール配信システム
一人情シスの対策には「メール配信システム」の利用がオススメです。一斉メール配信で頻出する誤送信やスパム扱いのリスクを軽減しながら、重要な社内情報を確実に全員に伝えられます。
手動での配信に比べ、タイムリーに情報を共有できるため、作業の効率化にも寄与。システムの導入にはコストが発生しますが、ミスによるリスクを低減し、安定したコミュニケーションを保つ手段として有効です。
IT資産管理ツール
情報システムの運営には「IT資産管理ツール」がオススメです。このツールは、ハードウェアやソフトウェアの情報を一括で把握し管理できます。
どの端末に何のソフトウェアがインストールされているのか、ファイルの操作はどうなっているのかといった、貴重な情報を自動で収集。トラブルが起きた際、その原因を速やかに見つけ出す手がかりとして、収集された情報を利用できます。
情報管理・共有ツール
情報管理・共有ツールは、社内で利用されるファイルや文書を一元的に整理し、メンバー全員でアクセス・編集ができる仕組みです。GoogleドライブやDropboxはこのタイプのツールとしてよく知られ、リモートワークの現場でも役立っています。
情報管理・共有ツールは、すべての重要情報を1つの場所に集約。情シスの専門家ではなくても社員が直面するトラブルを迅速に解決できる環境を整えます。
社員自身が必要なデータに簡単にアクセスし、共有できる文化とシステムを育てることで、情報システム部門の負担軽減と、業務フローのスムーズ化が期待できます。
FAQツール
社員が直面する疑問や問題を解決支援するFAQツールは、一人情シスの負担軽減に効果的です。社内FAQツールとは、スタッフの頻繁な問い合わせ内容をデータベース化し、疑問を持った際に自ら答えを探せる仕組みを提供します。
情報システム部への直接の問い合わせが減り、手が空く時間が生まれます。社内の悩みや疑問が自己解決できる環境を作ることで、情シスへの依存を減らし、スムーズな業務進行に寄与するでしょう。
コミュニケーションツール
コミュニケーションツールの導入は、業務の時間を効率よくするツールです。SlackやChatworkのようなツールはリアルタイムでの情報共有が可能で、メールと違い冒頭のあいさつも不要。
社員同士で問題解決の進捗を共有したり、写真やファイルを即座に送り合うことで問題が起きた際の状況把握が迅速に行えます。
コミュニケーションツールは、情報のやりとりをスピーディにするだけでなく、必要なデータを一元管理することで、後から情報を探しやすくするメリットももたらしてくれます。
コミュニケーションツールの導入は、一人情シスが抱えるタスクの効率化を図る手助けとなるでしょう。
RPAツール
RPAツールは、一人情シスの大きな支えになります。RPA、すなわちロボットプロセス自動化は、繰り返しの手作業をロボットが代わりに行うものです。
データの入力や集計、定型メールの作成といった業務を自動で進め、時間の節約につながります。データ入力・集計・分析、社内システムからのデータダウンロード、Webサイト上の情報収集などの業務をRPAすることで情報システム部の作業負担を軽減できるでしょう。
対策を行えば一人情シス問題は解決できる
一人情シスは情報システム部が1人で全業務を担当する状態です。業務の多さと専門性からくる過労やミスの増加は企業としての大きな課題となっています。
一人情シスの問題は対策を行えば解決が可能です。
一人情シスの対策
- 業務範囲を明確にする
- ITアウトソーシングを活用する
- 外部の勉強会に参加する
- ツールを導入する
一人情シスの問題を軽視すると、後々大きなトラブルに繋がりかねません。一人情シスの背景を理解し、早期に対策を行っていることが大切です。