目次
「AIや自動化で、将来社労士の仕事はなくなるのでは?」とお悩みの方もいるでしょう。とくに近年は、労務業務のIT化が進み、今後求められるスキルの変化に戸惑う方も少なくありません。
この記事では、社会保険労務士の将来性と仕事の確保方法について解説します。現状の課題から打開策までを丁寧にお伝えするので、社労士としてのキャリアに悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
社会保険労務士とは
社会保険労務士は、人事・労務・社会保険のプロフェッショナルとして企業を支える国家資格者です。近年は、就業環境の多様化や法改正により、企業側の対応力が求められる場面も増えてきました。社労士はそうした複雑化する労務分野をサポートする存在として、活躍の場を広げています。
社会保険労務士の仕事内容
社労士の仕事は大きく分けて「手続き業務」と「コンサルティング業務」です。手続き業務では、企業が労働保険や社会保険に関する書類を提出する際、その作成・提出代行を行います。これは社労士の独占業務です。
一方で、コンサルティング業務では、就業規則の整備や、労務トラブルへの対応、職場環境の改善提案など、企業の人に関わる課題全般に対して助言を行います。とくに近年は、ハラスメント対策や働き方改革への対応など、専門性が高い支援が求められる場面が増えてきており、活躍の機会が多いでしょう。
▼社会保険労務士の仕事について詳しくはこちら
社労士の年収や仕事内容|社労士がキャリアアップして年収を上げる方法とは?
社会保険労務士の仕事は本当にないのか?
「社労士は稼げない」「仕事がない」と言われることがありますが、実際はどうなのでしょうか。仕事がないといわれる理由を5つ紹介します。
理由1、依頼元が少ない中小企業の課題
多くの社労士がクライアントとするのは中小企業ですが、その数は全国で約350万社と非常に多い一方で、社労士を必要としていない企業も少なくありません。理由は、業務量が少なかったり、手続きの外注コストを避けたりする傾向があるためです。
とくに従業員数が少ない企業では、労務管理そのものが簡素化されているケースも多く、わざわざ社労士を契約してまで対応しようとしないことが少なくありません。結果として、社労士が営業をかけても契約につながらないケースが増えているのです。
理由2、過剰な競争がもたらす仕事の奪い合い
社労士試験の合格者数は年々増加していますが、一方で企業のニーズはそこまで急激に増えていません。そのため、新人社労士が既存の仕事に割り込む形となり、価格競争やサービス競争が激化しています。
とくに都市部では、事務所数の集中もあり、価格を下げなければ案件を獲得できない状況も珍しくありません。これが、仕事がないと感じる大きな一因となっています。
理由3、労務分野の複雑化
働き方改革、同一労働同一賃金、メンタルヘルス対策など、企業が対応すべき労務課題は年々複雑になっています。ところが、社労士の中には法改正へのキャッチアップができず、業務範囲を広げられないまま苦戦しているケースもあるようです。
また、専門分野を持たないまま「なんでも屋」的に業務を受けると、専門性の高い案件では信頼を得られず、継続的な契約にもつながりにくいでしょう。
理由4、非効率な小規模事務所の限界
社労士の多くは個人または数人規模の事務所で活動しています。この規模では業務の分業が難しく、営業・事務・実務をすべて一人で抱えることが一般的です。
業務効率を上げるためのシステム投資や人材採用が難しいため、大規模なクライアントへの対応や専門化が進まず、小規模案件に限られる傾向があります。この傾向は、成長が頭打ちになる原因のひとつといえるでしょう。
理由5、労務業務の自動化やITツールの導入による影響
近年では、クラウド型の労務管理ツールが普及し、企業が自社内で労務手続きを完結できる環境が整いつつあります。これにより、社労士が従来担っていた書類作成・提出代行のニーズが減少し、とくに1号業務を中心に活動していた社労士は収入減に直面しています。今後は、単純業務の代行ではなく「専門性のある助言」を求められる時代になっていくでしょう。
社会保険労務士の仕事がない理由を乗り越える方法
社労士として生き残るためには、従来型の業務に依存するのではなく、時代に合わせて進化することが求められます。以下でその方法についてみていきましょう。
労務分野を広げ、専門性を強化する
これからの社労士は「何でも屋」からの脱却が必要です。現代の企業は、複雑な労務課題に対応できる専門性の高い社労士を求めています。たとえば、ハラスメント防止、労働時間管理、外国人労働者の受け入れ対応といったニッチな分野に特化することで、他の社労士と差別化ができるでしょう。
また、労務に関するセミナー開催や人事制度構築など、コンサルティング業務への比重を高めることで、継続的かつ高単価な仕事を得る道も開けます。今後の活躍には、「労務の戦略家」としての立場が求められるでしょう。
福利厚生やメンタルヘルス分野への進出
従業員の定着率やモチベーション向上に関わる「福利厚生」や「メンタルヘルス対策」は、多くの企業にとって関心の高いテーマです。これらの支援ができる社労士は、企業から重宝されやすく、顧問契約に繋がる可能性も高くなります。
たとえば、ストレスチェック制度の導入支援や、福利厚生制度の設計・見直しなどは、今後ニーズが高まる分野です。ここに踏み出すことで、「競争が激しい手続き業務」から脱し、「提案型の専門職」として地位を確立することができます。
社会保険労務士の仕事はない?将来性を考察
社労士の将来性は、決して悲観すべきものではありません。むしろ、社会の変化に対応できる力がある人にとっては、活躍の場が広がる資格といえるでしょう。以下で社労士の将来性について紹介します。
企業のコンプライアンス意識の高まりが社労士の需要を後押し
企業にとって法令違反は致命的なリスクです。とくに近年は、労働基準監督署による調査やSNSによる内部告発など労務問題が公になるケースが増えているため、コンプライアンスの専門家として社労士を顧問に迎える企業が増加傾向にあります。
たとえば、時間外労働の適正管理、就業規則の見直し、パワハラ対策などは、実務に精通した社労士でなければ対応が難しい分野です。信頼される「外部の目」として、企業と長期的な関係を築けるポジションになりつつあります。
働き方改革の進展で社会保険労務士へのニーズが急増
「残業削減」「柔軟な勤務制度」「副業解禁」など、働き方改革は企業の人事制度を根本から見直す契機となっています。こうした改革を実務レベルで支援できるのが、社労士です。
具体的には、フレックスタイム制やテレワーク規定の導入支援、36協定の整備、人事評価制度の構築など、多岐にわたる支援が求められています。これらの働き方改革の支援は法的知識と現場理解の両方を兼ね備えた社労士でなければ務まらず、今後も高いニーズが見込まれる領域です。
ITスキルを持つ社会保険労務士が今後の活躍に不可欠
これからの社労士は、「ITに強い」ことが必須条件になりつつあります。クラウド労務ツールの活用はもちろん、顧客管理システムや、データベースを用いた効率的な業務設計など、IT活用により生産性が大きく向上するでしょう。
また、企業側からも「紙ベースではなく、システムで対応してくれる社労士がいい」といったニーズが増えています。ITスキルを武器にすれば、従来の業務効率化だけでなく、新しい分野への展開も可能になるのです。
「仕事がない」社会保険労務士にならないために
「社労士は仕事がない」と言われる時代でも、成長のチャンスは十分にあります。必要なのは、変化を恐れず学び続ける姿勢と、自分の強みを活かした専門分野の確立です。手続き業務に依存せず、提案型の社労士を目指すことで、安定したキャリアが築けるでしょう。
労務に関する記事一覧
転職者向け記事
採用者向け記事
業務に関する記事
[PR]"好条件"の管理部門転職なら
管理部門・バックオフィスで転職するならSYNCA(シンカ)。
経理、総務、法務、労務、情シスなどの職種や細やかなスキル設定により 採用企業から一人ひとりに合ったスカウト求人が直接届きます。
まずはスキルに応じたあなたの適切な年収を無料で診断しましょう。