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IT業界で働いている人やIT業界への就職を目指している人の中には「ITサービスマネージャー」という資格を聞いたことがあるのではないでしょうか。ITサービスマネージャは、IT系国家資格の一つです。しかし、比較的専門性が高い資格のため、一般的にあまり知られていません。そのため「ITサービスマネージャーってどんな資格?」「資格取得した方がいいの?」と疑問を抱えている人は多いでしょう。
そこで、本記事ではITサービスマネージャについて、資格の概要や業務内容を解説します。
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ITサービスマネージャ(SM)とは?
ITサービスマネージャとは、お客様のニーズを把握し、自社のITサービスの提供を最大化することで、IT投資効果の最大化を実現できる人材です。
ITサービスマネージャには、情報システムの安全稼働や日々の継続的改善、障害発生時の対応や品質管理など、安全性と信頼性の高いサービス提供が求められます。企業で業務システムを使って仕事するユーザーや、企業が提供するサービスを利用するお客様が、便利かつ快適にシステムを利用できるようにさまざまな策定を実施します。具体的には、運用やチェック体制の構築、新しいソフトの導入、入れ替え、さらに障害発生時のフォローです。
大手企業を中心とした事業会社のシステム部門やコンサルティングファーム、SIerなどのアウトソーシング等で活躍します。
参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「ITサービスマネージャ試験」
ITサービスマネージャ(SM)試験とは?
ITサービスマネージャ試験は、独立行政法人・情報処理推進機構が主催している試験です。ITサービスマネージャ試験は、IT系国家資格の最高峰といわれる高度情報技術者試験の一つでもあります。
システムエンジニアとして体系的な知識を身につけたい方や、ITコンサルタントやプロジェクトマネージャーなど、責任ある仕事を任されたい方であれば、取得しておきたい資格でしょう。
ITサービスマネージャ(SM)試験概要
ITサービスマネージャは、安全性と信頼性の高いITシステムの提供を担う人材です。そのため、試験ではシステムの安全的な稼働の確保や、トラブル発生時の対処法、品質管理などの知識が問われます。
以下、ITサービスマネージャ試験の概要です。
▼試験概要
試験 | 試験時間 | 出題形式 | 出題数 |
午前Ⅰ | 9:30〜10:20(50分) | 四肢択一式 | 30問 |
午前Ⅱ | 10:50〜11:30(40分) | 四肢択一式 | 25問 |
午後Ⅰ | 12:30〜14:00(90分) | 記述式 | 3問 |
午後Ⅱ | 14:30〜16:30(120分) | 論述式 | 2問 |
2023年4月以降は、試験はPBT方式で実施されています。合否は、Webサイトで受験番号とパスワードを入力すれば確認可能です。
午前Ⅰは50分/多肢選択式/出題数・解答数ともに30問
午前Ⅰ試験の出題範囲は、応用情報技術者試験と同様です。そのため、応用情報技術者試験にすでに合格している人は、合格しやすいといえるでしょう。
内容は、テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野です。1問3〜4点で問題が出題され、合格点は60点以上になります。
▼問題数(合計30問)
- テクノロジ系:17問
- マネジメント系:5問
- ストラテジ系:8問
考察問題が多く、文章問題の出題は比較的少ないと考えておきましょう。午後Ⅰ試験は、問題数が多いテクノロジ系をしっかり勉強するのが、合格のためのポイントです。
午前Ⅱは40分/多肢選択式/出題数・解答数ともに25問
午前Ⅱ試験では、コンピュータ構成要素、システム構成要素、データベース、ネットワーク、セキュリティ、プロジェクトマネジメント、システム監査、法務の9分野から出題されます。これらの配点は、各4点ずつで、それぞれ25問です。午前Ⅰ試験同様の60点以上で合格になります。
プロジェクトマネジメントの出題数は比較的少ないです。一方で、出題問題の半数以上がサービスマネジメントから出題されるため、重点的に勉強しておきましょう。
ただし、範囲が広いため受験する時期によってどの分野の出題範囲が大きいかはわかりません。まんべんなく勉強し、なにが出題されても解答できるように準備しておきましょう。
午後Ⅰは90分/記述式/3問中2問を選択して解答
午後Ⅰ試験と午後Ⅱ試験の出題範囲は同じです。
以下出題範囲です。
- サービスマネジメントに関すること
- サービスの設計・移行に関すること
- サービスマネジメントプロセスに関すること
- サービスの運用に関すること
- 情報セキュリティの運用・管理に関すること
- ファシリティマネジメントに関すること
午後Ⅰ試験では、出題範囲の中から出される3問から2問を選択し解答します。配点は、各50点で、60点以上が合格点です。
午後Ⅰ試験は、長文を読み記述で解答する問題形式のため、記述解答に慣れておきましょう。記述解答は、文字制限があり40字程度で解答する場合が多いです。なるべく簡潔に解答することを心がけましょう。
午後Ⅱは120分/論述式/2問中1問を選択して解答
午後Ⅱ試験では、午後Ⅰ試験と同様の出題範囲から2問出題されます。その中から1問選択し、解答する試験形式です。
午後Ⅱ試験は、短い文章に対して自分の考えを大論述形式で解答しなくてはいけないため、難易度がかなり高いです。また、独自の評価基準に基づき成績のランク分けが行われ、ランクAのみが合格とみなされます。ランクによって評価されるため、配点や合格点の設定はないので注意してください。
出題問題には、ITサービスマネージャの立場から考え、解答することが重要です。具体的な事例に対する知識がないと解答できない問題も多々あります。十分に知識をつけ、理解を深めるよう対策しましょう。
ITサービスマネージャ(SM)受験方法
以下は、ITサービスマネージャの受験方法についてです。
▼受験料・受験資格・試験期間・合格発表について
受験料 | 7,500円 |
受験資格 | なし |
試験時期 | 毎年4月(年1回) |
合格発表時期 | 毎年6月 |
2023年4月時点のITサービスマネージャ試験の実施時期は上記のとおりです。毎年1月中旬頃から申し込みの受付がスタートします。申込方法は、IPA公式サイトからです。
また、試験はPBT方式で実施されます。受験資格がないので、誰でも挑戦できる資格です。
合格発表は、6月頃で、合否についてはWebサイトで確認ができます。
ITサービスマネージャ(SM)資格を取得すべき人は?
ITサービスマネージャ資格は、以下のような人にオススメの資格です。
- 事業会社またはユーザ企業における情報システム部門(社内SE)
- インターネット事業会社
- クラウドサービス企業
上記のような組織に所属し、システム運用管理業務を行う担当者やリーダ、マネージャに有効です。また、これらの立場へ転職を考えている人にも有効な資格だといえます。
システム運用管理の担当者であり、ITサービスマネージャ資格を保有している人であれば、要件定義や設計などの上流工程に参画できます。
たとえ、自社で開発作業を行わない場合でも、SIerなどに開発依頼をする場合、システムに求める非機能要件など、的確に希望を伝えられます。その結果、トラブルを未然に防ぐことができ、システム構築の一役を買えるでしょう。
ITサービスマネージャ(SM)の仕事内容
システムの運用管理を担い、安全性を担保するITサービスマネージャの具体的な仕事内容について解説します。
これからITサービスマネージャ資格取得を考えている人は、仕事内容を事前に理解しておきましょう。
システムの使い方が分からないユーザへのサポート
ITサービスマネージャは、完成したシステムの利用方法がわからないユーザからの問い合わせに対応します。
本稼働したシステムの使い方がわからないユーザは多いです。業務システムやインターネット公開されているシステムなど、さまざまなシステムにおいてヘルプデスクが設置されています。ITサービスマネージャは、ヘルプデスクに集まる問い合わせに対し、ユーザがわかりやすいようにサポートする役割があります。
最近では、電話やメール。SNSなどさまざまな問い合わせ方法が増えています。問い合わせを受ける手段や受け付ける問い合わせ内容は、事前に確認をしておきましょう。
問い合わせによっては、別部門からのヘルプが必要になる場合もあります。過去の解答データをもとに対応できる場合、他部署へエスカレーションする場合など、あらゆる想定をして問い合わせ対応の準備が重要です。
上記のように、ヘルプデスクを運営に際し、必要なことをあらかじめ決めておき、運用していくのが、ITサービスマネージャの仕事の一つです。
システムの不具合を改修や改善
システムが本番稼働した後も、システムの修正は行われます。また、お客様からの希望でシステムを改修することも少なくありません。これらに対応するのも、ITサービスマネージャの仕事です。
システム改修の際は、変更作業が原因でトラブルが発生しないよう、どのようなスケジュールでどのように変更をするか事前にすり合わせをします。このような、変更作業に伴う業務を変更管理といいます。
対応が決まった変更については、プログラム修正やパッチ適用テスト完了後、リリース作業を行います。リリース完了後、問題点や追加で必要な作業がないかを確認し、問題なければ変更作業終了です。
中には、変更作業を行わないという判断を下す場合もあります。判断は、システムの状況やスケジュールを考慮してITサービスマネージャが下すため、ITサービスマネージャには的確な判断が求められるでしょう。
システムのリース計画やリリース管理
変更管理の対応が承認されたプログラムについては、リリース計画を立て本番環境に適用します。
リリース作業は、日中サービスを行っているシステムでは夜間作業になるケースが多いです。また、他のシステムと連携している場合は、他のシステムも一時停止、バッチ作業が伴う場合もあります。このような、リリース作業を行うために伴う前後の作業も含め、スケジュール管理や作業計画を立てることを、リリース管理といいます。
リリース管理には、不具合が発生した際の復帰対応も含まれます。システムに問題や不具合が発見された場合、どのように改善するか計画を事前に立て、復帰対応の手段を決めておくのです。
ITサービスマネージャが担うシステム運用管理の業務では、システムを作り上げるだけでなく、稼働後のサポートも重要な役割だといえるでしょう。
ITサービスマネージャ(SM)試験を受験するメリット
最後は、ITサービスマネージャ試験の受験メリットについて解説します。
受験メリットを理解すれば、勉強のモチベーションに繋がります。メリットを理解し、高いモチベーションを維持したまま資格取得を目指してください。
ITに関する知識やスキルを証明し転職に有利になる
転職活動の際、経験や実績以外でITに関する知識を証明するのは難しいです。そのため、求職者は、いかに職務経歴書にこれまでの経験をアピールできるかが重要といわれています。しかし、ITサービスマネージャ資格を取得していれば、資格でITに関する知識があることをアピールできるので安心できるでしょう。
企業の採用担当者は、書類選考の際候補者の経験やスキルを職務経歴で確認します。同じような経験をしている候補者がいると、どちらを合格とするか判断に悩みますが、ITサービスマネージャの資格を保有している候補者とそうでない候補者であれば、候補者を選びやすいです。
企業のIT化は、今後も加速していきます。IT企業に限らず、ITに関する知識を保有している人材は需要が高まり続けるでしょう。そういった背景からも、ITサービスマネージャ資格を保有していれば有利に転職ができるといえます。
国家試験等の一部免除
ITサービスマネージャの資格を保有していると、試験科目が一部免除になる場合があります。
情報処理技術者試験や情報処理安全確保支援士試験の合格者は、他の国家資格を一部免除で受験可能です。たとえば、中小企業診断士試験や弁理士試験、技術士試験です。その他にもITコーディネータ試験も一部免除で受験できるため、さまざまな資格を取得しやすくなるでしょう。
試験によって免除科目は違うので、自分が気になる試験について各試験のホームページを参考に調べてみてください。
ITILの知識を習得できる
ITサービスマネジメントに関するグローバルな行化標準として普及している「ITIL」という認定資格があります。これは、システムエンジニアなど現場でも重要視される資格です。
ITサービスマネージャを勉強すると、ITILに必要とされる4つの分野を身につけられます。
▼ITILの4つの分野
- People(人)
- Process(プロセス)
- Products(製品・技術)
- Partners(パートナー)
これらはITサービスマネジメントにおいて大切な要素といわれる「4つのP」です。これらのPに対して、適切な対策を打つ能力をITサービスマネージャでは学習することができると注目されています。
ITILは、ITILファンデーションを入門資格とし、上位資格に「ITILv3」、2019年にリリースされた「ITIL4」があると認識しておきましょう。
ITサービスマネージ(SM)は今後も重要なスキル
ITサービスマネージャは、システムの設計から開発、運用に関する知識やスキルを証明できる資格です。システムエンジニアやIT企業で働いている人であれば、自分がプロジェクトリーダーとして活躍できる人材だとアピールができ、キャリアアップができるでしょう。
また、今後IT企業に転職をし、活躍をしたいと考えている人にもオススメの資格です。
ITサービスマネージャで得られる知識は、IT化がますます加速する世の中で必ず役に立ちます。この記事を読んでITサービスマネージャ試験に興味を持った方は、積極的に受験してみましょう。応援しています。