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商事法務とは?仕事内容・企業法務との違い・求められるスキルも紹介

シンカキャリア編集部

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更新日:2025/05/20

商事法務の定義や契約法務との違い、実務で担う具体的な業務内容をわかりやすく解説します。求められるスキルやキャリアパス、今後の企業法務トレンドもまとめました。法務部門でキャリアアップを目指す方はぜひ最後までご覧ください。

目次

近年、企業法務の中でも商事法務の重要性が高まっています。会社法やコーポレート・ガバナンスへの対応が求められるなか、株主総会・取締役会の運営や定款整備など、専門的な業務を担う職として注目されるポジションです。

この記事では、商事法務の仕事内容や契約法務との違い、求められるスキル、キャリアの広がりまで、法務部門で働く方が知っておきたい情報を分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

商事法務とは?

商事法務は、企業の内部統治や運営を法的に支える重要な役割を担っています。以下で位置づけや定義など詳しくみていきましょう。

企業法務における商事法務の位置づけと定義

商事法務とは、企業法務の中でも、企業の内部統治や運営に関わる業務を担う領域を指します。経営判断や株主への情報開示を円滑に進めるには、法的なルールに基づいた対応が不可欠です。

たとえば、株主総会や取締役会の開催にあたっては、会社法に定められた手続きを理解し、正確に実行することが求められます。さらに、子会社の設立といった新法人の立ち上げ時には、定款や社内規程の整備を含む法定手続きを着実に行う必要があるでしょう。

これらの業務は社外からの信頼構築にも直結するため、法改正の動向を常に把握し、適切に対応する姿勢が重要です。商事法務は法的な観点から企業を支え、事業運営の安定に貢献する役割を担っています。

商事法務の役割

商事法務の役割は、企業の組織運営の安定や経営判断のサポート、ステークホルダーからの信頼確保にあります。

たとえば、株主総会や取締役会の準備・運営を通じて、企業の意思決定プロセスを法的に支援します。また、定款や社内規程の整備、子会社設立、法令遵守、情報開示などを通じて、企業の法的リスクを最小限に抑え、ステークホルダーからの信頼を確保するのも重要な役割です。

商事法務と契約法務の違い

商事法務と契約法務は、役割や業務範囲が異なります。商事法務はおもに内部向けの業務、契約法務は外部向けの業務が中心です。以下の表に、商事法務と契約法務のおもな違いを詳しくまとめました。

項目

商事法務

契約法務

業務範囲

株主総会・取締役会の準備・運営、定款や社内規程の整備、子会社設立、法令遵守、情報開示など

契約書の作成・審査、契約交渉、契約リスクの管理など

おもな対象

企業内部の統治や運営

企業と外部との契約関係

目的

企業の組織運営の安定、経営判断のサポート、ステークホルダーからの信頼確保

契約に関する法的リスクの最小化、企業の利益保護

関連法令

会社法、金融商品取引法など

民法、商法、各種契約関連法規など

必要なスキル

会社法や関連法令の知識、社内外の調整力、コンプライアンス意識など

契約書作成・審査能力、交渉力、リスク分析能力など

このように、商事法務と契約法務は役割・業務範囲が異なりますが、企業法務を支えるうえでどちらも欠かせない存在です。

商事法務の主な業務内容

商事法務は「企業の内部統治を支える業務」の中核を担っています。以下でおもな業務内容について詳しくみていきましょう。

株主総会・取締役会の準備と運営

商事法務の中核業務は株主総会・取締役会の法的手続きの整備とその実行です。

具体的には、招集通知の作成、開催通知の送付、議事録の作成など、会社法に準拠した準備が求められます。また、株主や取締役からの質疑に適切に対応できるよう、想定問答集の作成やリハーサルを行うこともあるでしょう。

一連のプロセスを通じて、企業の意思決定の正当性を社内外に示すことが可能となります。法務部門の実務力が問われる場面でもあり、慎重な対応が必要です。

定款・各種規程の整備と子会社設立

定款や社内規程の整備も商事法務の重要な業務の一つです。定款とは会社の組織運営や事業目的を定めた文書であり、法務が主体となって整備・更新を担当します。また、社内規程(例:取締役会規程、職務権限規程など)も、事業環境や法改正に応じて見直しが必要です。

さらに、新たに子会社を設立する際には、定款作成・登記手続き・取締役の選任など、商業登記法に沿った対応が求められます。これらは経営戦略と密接に関係するため、スピーディかつ正確な処理が必要です。

法令遵守と情報開示

法令遵守(コンプライアンス)と適切な情報開示も商事法務の業務です。とくに会社法や金融商品取引法などの改正に即応する能力は、商事法務担当者に強く求められます。また、有価証券報告書や株主通信などを通じた外部への情報開示も法務の重要業務であり、不備があると企業価値を毀損するリスクがあるでしょう。

正確な法的判断と、社内外への明確な伝達力が必要です。法令改正情報を日々キャッチアップし、必要な手続きをタイムリーに展開する姿勢が評価されます。

商事法務担当者に求められるスキル・知識

商事法務は、法的知識に加えて高い調整力・情報感度が求められる専門職です。ガバナンスの要となる場面では、法令順守だけでなく「社内外との橋渡し役」としてのスキルも求められるでしょう。

以下で、商事法務担当者に求められるスキルや知識を3つ紹介します。

会社法・関連法令の知識とリーガルチェック力

商事法務では「会社法を軸とした法令理解」が最も重要なスキルです。株主総会や取締役会の開催手続き、有価証券報告書の作成、登記手続きなど、すべての実務が法律の枠内で進められます。そのため、条文を正確に理解し、状況に応じて適用できる力が不可欠です。

また、定款や社内規程のリーガルチェックを行う際には、微妙な文言の違いが企業経営に与える影響を読み解く力も求められるでしょう。経験がものを言う領域ですが、日々の積み重ねで磨かれるスキルでもあります。

コミュニケーション力と社内外調整力

実務の多くは法務部門だけで完結しないため、「関係各所との連携力」が求められます

たとえば株主総会では、経営陣やIR部門、事務局と連携しながら文書の整合性やタイムラインを調整します。また、取締役会の議題調整や想定問答作成では、事業部門の意見をくみ取りつつ、法的な視点を加えて構成する力が必要です。

弁護士や司法書士など外部専門家とのやりとりも発生するため、「専門用語を噛み砕いて説明できる」能力が評価されます。

コンプライアンス意識と法改正キャッチアップ力

商事法務では、企業の将来を左右する法的リスクの予兆を見抜く力が重視されます。

ガバナンス強化の潮流やESGへの対応、非財務情報の開示義務など、企業を取り巻く法的要求は年々高度化しています。そのため、担当者は単なる法令の遵守だけでなく、それを「どう企業文化に落とし込むか」まで考える必要があるでしょう。

また、会社法や金融商品取引法などの改正に対して迅速にキャッチアップし、社内への展開をリードできる姿勢が不可欠です。継続的なインプットと、それを実務に還元する力が求められます。

商事法務のキャリアパスと今後の展望

商事法務は、専門性を活かして長期的なキャリア形成が可能な分野です。法務部内での昇進や他部門への異動、さらには企業全体のガバナンスを担うポジションへの成長も期待できます。以下で、商事法務担当者の代表的なキャリアパスを確認していきましょう。

商事法務担当者の代表的なキャリアパス

商事法務の経験は、企業の中核である法務部門内での昇進につながる強力な武器になります。

まずは担当者として実務を積んだ後、係長・課長といったマネジメント層へ進むルートが一般的です。また、商事法務の知識は総務部門や経営企画への異動後も活かせるため、社内ジョブローテーションの起点としても機能します。

さらに、上場準備企業やスタートアップでは、法務ゼネラリストとして企業成長に貢献できるチャンスも多く、キャリアの幅を大きく広げることが可能です。

法改正・企業法務トレンドと求められるスキルの変化

昨今の法務トレンドは「統治強化」「開示拡充」「サステナビリティ対応」がキーワードです。

具体的には、会社法改正により株主総会の電子提供制度が導入されるなど、手続きのデジタル化が進行中です。また、ESG関連の非財務情報を含むディスクロージャーの高度化も求められています。

このような背景から、商事法務においても「ガバナンス」「情報開示」「リスク管理」の3点を軸にスキルアップすることが重要です。法務の役割は、単なる守りから「経営を導く存在」へと変化しています。

商事法務の役割を理解してキャリアの可能性を広げよう

商事法務は、企業の法的健全性と信頼性を守る中枢的なポジションです。制度設計・運営から経営の意思決定支援、対外的な信頼の構築まで、多岐にわたる業務を通じて企業活動の土台を支えています。この経験は、他部門や他社でも通用する汎用性の高いキャリア資産といえるでしょう。

これから法務職として一歩踏み出す方も、次なるキャリアを模索する中堅層も、まずは商事法務の役割を正しく理解して次のキャリアを切り開いていきましょう。

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