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「法務部ってこれから本当に不要になるの?」AIやDXによる業務自動化や企業再編での縮小といった現実があり、法務部の将来に不安を抱く方は少なくありません。
この記事では、法務部門がなくなると言われる理由やその必要性を解説します。今後求められる能力やキャリアの活かし方も紹介するので、参考にしてみてください。
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法務部が「なくなる」と言われる背景
まず、法務部が「なくなる」と言われる背景について紹介します。将来を見通すうえで大切な視点となるため、確認していきましょう。
AI・DXによる業務効率化と自動化の進展
AIやリーガルテック(法務業務を支援するITツール)の普及により法務業務は効率化され、一部業務が自動化されつつあります。そのため、「法務部がなくなるのでは?」という声があがっているようです。
たとえば契約書のチェックやひな形に沿った契約書作成は、いまやAIが代行できる領域となっています。これにより、人が丁寧に行っていた業務が短時間で済み、法務部の存在意義そのものに疑問が生じている状況です。
とくに単純な業務に費やしていた時間が削減されると、その分「法務部が縮小する」という見方が広まるのも無理はありません。ただし、これはあくまで一部業務に過ぎない点に注意が必要です。リスク判断や複雑な契約交渉といった高度な判断が求められる業務は、依然として人材が必要とされます。
企業規模や経営環境による法務部門の縮小・統廃合
中小企業では人手不足やコスト面から法務部門を設置しないケースが多く、大企業でも合併・買収時に法務部門の統廃合が起きることがあります。法務部を持つほど業務量がない、あるいは人件費がかかり過ぎるからです。その結果、社長や管理部門の社員が兼任する形で対応する会社も少なくありません。
また大企業でも、M&A(企業の合併・買収)後に法務部が統廃合されるケースが現実にあります。二重に存在する部署を一つにまとめ、人員が整理されることはよくあることです。
ただし、こうした流れがあっても法務業務そのものが不要になるわけではありません。逆に法務知識を持つ人材にはニーズが集まりやすく、今後は外部委託やプロジェクト単位で活躍する場が増えていくと考えられています。
法務部がなくなる=法務人材が不要になる、という単純な図式にはならない点を理解しておきましょう。
法務部がなくなるリスクとデメリット
法務部がなくなることには見過ごせないリスクとデメリットが潜んでいます。企業活動そのものに悪影響を与えかねません。以下で詳しくみていきましょう。
法的リスク管理の弱体化
法務部がないと、契約書の不備・法令違反・トラブル発生時の対応困難など、法的リスクが高まります。
法務部がある企業では、契約書の整備から法令順守(コンプライアンス)に至るまで、専門家が一元管理する体制が整っています。一方で、法務部がない場合、契約書に記載漏れや誤解を招く表現が紛れ込みやすくなり、法令違反やトラブルが後から発覚するリスクが増えるでしょう。
たとえば納品後に契約条件が食い違っていたことが発覚し、相手方から巨額の損害賠償を請求されるケースもあります。つまり、法務部がないことで契約や取引に潜むリスクが見落とされやすくなり、それが企業にとって大きな痛手となりかねません。
業務の属人化とノウハウの蓄積不足
法務業務を他部署や経営層が兼任すると、判断の統一やノウハウの継承が難しくなります。法務に関する知見が少ない社員がその場しのぎで対応すると、判断がその人次第となり、統一感が失われがちです。
そのうえ、担当者が退職すれば法務に関する知識や過去事例も一緒に失われます。大規模な契約更新や取引先とのトラブル対応がその場しのぎとなり、毎回ゼロから調べ直さなければなりません。
結局のところ、法務がチームとして機能していないと蓄積されるべきノウハウが消えてしまい、長期的に見ると大きな損失となるでしょう。
本業への影響と業務効率の低下
法務専任者がいないとほかの部署に負担がかかり、本業への影響と業務効率の低下が避けられません。とくに営業や管理部門などが法務業務を兼任すると、本来の業務に割くべき時間が削られてしまいます。その結果、全社的にスピード感が落ち、新規事業の立ち上げや取引先との交渉に支障が出る可能性もあるでしょう。
たとえば本業が忙しいときに契約書レビューに時間を割かねばならない状況が続けば、社内からも不満が出やすくなり、生産性が著しく低下します。
以上のことからも、法務部がなくなることには大きなデメリットが潜んでおり、軽視できないリスクがあるといえます。
法務部の将来性と必要性
法務部は法規制に対応するだけでなく、企業成長を支える重要な部署です。以下で法務部の将来性と必要性を紹介します。
企業活動に不可欠な法務機能
法治国家である日本では、契約・取引・コンプライアンス対応など、法務業務は今後も必須であり、法務部の需要は安定しています。契約や取引には必ず法令に則った対応が求められ、きちんとした法務体制がなければ企業はリスクにさらされる可能性があるでしょう。
そのため法務業務は、今後も安定した需要が続き、なくなるどころかますます重要性が増していきます。たとえ業務が一部自動化されたとしても、人間の法解釈や高度な交渉力は置き換えられないでしょう。
法務人材の慢性的な不足と求人増加
法務経験者は依然として人材不足で、企業の積極採用や求人増加が続いています。日本では法務経験者の数が足りていないため、企業が積極的に採用を進める傾向が強い状態です。
実際に人材紹介会社でも法務人材に対する求人は増え続けており、待遇や年収も向上傾向です。そのため法務に携わる方には今後もキャリアアップや転職市場で有利に働くチャンスが十分にあります。
AI・アウトソーシング活用で進化する法務部門
法務業務はAIやクラウドサービス、法務アウトソーシング(LPO)を活用することで、さらに戦略的で高度な業務にシフトしています。単純な契約書レビューや文面作成は自動化できても、リスク評価や複雑な交渉は専門家にしかできません。その分、法務担当者にはITスキルや外部リソースとの調整力が今後ますます求められるでしょう。
業務が効率化されることで、法務部は単なるバックオフィスから企業経営を支える戦略的部署へと進化していきます。
今後の法務部に求められるスキルとキャリア戦略
これからの法務部には、ただ法的な専門知識だけでなく、企業成長を支えられる複合的な力が必須となっています。今後の法務部に求められるスキルとキャリア戦略について確認していきましょう。
最新の法律知識とITリテラシーの習得
法務担当者が長く活躍するには、法改正への対応力とITスキルが不可欠となります。なぜなら、近年は契約書やコンプライアンス関連業務に法テクノロジー(リーガルテック)が導入され、業務プロセスがどんどん自動化されているからです。
たとえば、法令データベースから自動で法改正点を取り込み、それに応じて契約書テンプレートを修正するツールも出てきています。そのため、法務担当者には法改正のキャッチアップ力に加え、これらツールを使いこなす基本的なITリテラシーが必須となるでしょう。
経営視点・グローバル対応力の強化
経営視点と国際感覚を養った法務担当者は今後ますます市場価値が高まるでしょう。企業が成長するに従って、法務部門は単なる契約書レビューにとどまらず、経営リスクの早期察知と適切な対応策を提案する役割を担っています。
さらに、M&Aや海外展開が増えれば、英語を使った契約交渉や現地法規への対応が求められる場面も増えます。そのため、法務にとどまらず「経営視点」「英語や現地法知識」という広い視野がこれからのキャリアに大きな武器となるでしょう。
アウトソーシングや外部専門家との連携力
外部リソースを活用しつつ、社内の法務体制を維持・強化する調整力も重要です。社内リソースだけに頼らない柔軟な体制作りが、法務部の進化に欠かせません。
企業が法務業務を効率化するためには、専門性の高い業務を法務事務所やLPO(法務アウトソーシング)に委託する動きが増えています。その中で法務担当者に求められるのは、外部専門家と円滑にやりとりできるコミュニケーション力と、業務を分解し的確に切り出すマネジメント力です。
たとえば契約書の一次レビューだけを外部委託し、自社でリスク判断に注力する体制を整えれば業務がぐっと効率化できます。このように、社内外のリソースを有効活用する力は、今後ますます重要性を増していくでしょう。
法務部はなくならないが「進化」が必須
法務部は業務形態が変わっても今後なくなることはありません。AIやアウトソーシングが普及する一方、法務部には企業戦略に深く関わる専門家として、より高度で戦略的な役割が求められていきます。
そのためには最新法令に通じ、ITツールを使いこなし、経営視点やグローバル感覚を養うことが不可欠となります。継続的にスキルアップし、変化に柔軟に対応する姿勢が、法務部の未来を切り拓くカギとなるでしょう。
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