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「経営法務の仕事は法務とどう違うの?」このような疑問を持っている方は少なくありません。経営法務とは企業の経営判断を法的観点からサポートする専門職のことです。単なる契約書チェックやコンプライアンス対応にとどまらず、経営戦略や事業展開に深く関わる特徴があります。
この記事では、経営法務について詳しく解説します。仕事の魅力や必要なスキル、将来性をまとめたので、新たなキャリアの一歩として、ぜひ参考にしてください。
経営法務とは?
経営法務は、単なる法律対応ではなく、経営戦略に寄り添う「攻めの法務」です。企業活動を支える法的リスク管理の枠を超え、事業判断に関与しながら経営そのものに貢献していきます。ここでは、経営法務の基本についてみていきましょう。
経営法務の基本的な役割
経営法務の役割は「経営判断の意思決定を法的側面から支えること」です。従来の法務が担ってきた契約書のチェックや法令順守だけでなく、M&Aや新規事業の推進など、会社の成長戦略そのものに法務の立場から関与します。
たとえば、株式上場を目指す企業では、証券取引法への対応、内部統制の構築など多くの法的論点が絡んでくるでしょう。経営法務はこうした複雑な局面において、リスクを見極め、最適な進め方を提案します。つまり、経営陣にとって「相談相手」であり、「実行のパートナー」でもあるのが、経営法務の役割です。
経営法務と一般的な法務の違い
一般法務は、契約や社内規定の整備といった業務が中心です。一方、経営法務は経営者から経営に関する相談を受け、必要に応じて弁護士などの外部専門家と協力しながら、適切な経営判断をサポートします。「これから何が起きるか」に備え、ビジネスの方向性を理解しながら法的に最適な意思決定を導く立場です。
たとえば、M&Aでは、事業デューデリジェンスを通して法的リスクを洗い出すだけでなく、取引スキームそのものの設計から提案します。このように、経営法務はより戦略的で経営層に近いポジションで活躍する点が、大きな違いです。
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経営法務に必要なスキルと知識
経営法務の現場では、法律知識だけでは務まりません。経営の理解や、組織との連携力も含めた多面的なスキルが求められます。以下で、経営法務に必要なスキルと知識についてみていきましょう。
法的知識の基礎
法的知識の基礎は、経営法務に欠かせない知識です。経営判断には、常に法的リスクが付きまといます。たとえば新商品を発売する際には、特許や商標など知的財産権の確認が必要です。また、労務や取引契約では、労働基準法や民法の理解が欠かせません。
さらに、法律は日々改正されており、最新の法改正や判例に対するアンテナも重要です。法令知識を体系的に理解し、それをどうビジネスに落とし込むかが、経営法務の土台となります。そのため、法務のプロフェッショナルとして信頼されるには、法的知識が必要といえるでしょう。
経営戦略に関連する知識
経営法務の特徴は経営戦略に関与することにあります。たとえば企業が海外展開を検討している場合、単に現地の法律を調べるだけでは不十分です。為替リスクや政治リスク、取引スキームの設計までを理解し、事業戦略と整合性のある法的アドバイスが求められます。
このため、SWOT分析やファイブフォース分析といった基本的な経営分析手法の知識、さらには財務・会計の初歩的な理解があると、より説得力のある提案が可能になるでしょう。経営戦略を理解できるスキルが必要です。
コミュニケーション能力
経営法務では「説明力」と「関係構築力」が成否を分けるでしょう。経営層や各部門と日常的に対話するポジションである以上、難しい法律の内容を相手に合わせて分かりやすく伝える力が必要です。たとえば、新しい社内ルールを導入する際には、現場の混乱を避けるため、背景や意義を丁寧に説明し、理解と納得を得る必要があります。また、弁護士や行政、取引先との交渉の場に立つこともあるため、論理的に話を組み立てる力や相手の主張を正しくくみ取るヒアリング力も欠かせないでしょう。
経営法務における「中小企業診断士」の資格
経営法務では、法務知識に加えて「経営の視点」が欠かせません。その力を体系的に学び証明できる資格として、「中小企業診断士」は非常に有効です。ここからは、経営法務の仕事に役立つ中小企業診断士の資格について解説します。
中小企業診断士資格を活かした経営法務の実務
経営法務では、事業計画の検討や業務改善の提案、M&Aの支援など、経営と密接に関わる場面があります。中小企業診断士の資格を取得すれば、財務・人事・マーケティング・経営戦略などの知識を体系的に学習できるため、実務に活かせるでしょう。とくに、試験科目の中の「経営法務」では、ビジネスに関わる法律の知識を習得します。
これにより、法的助言にとどまらず「ビジネスの課題をどう解決するか」という観点で法務を組み立てる力が身につきます。中でも、内部統制やコンプライアンスを経営全体から設計できるのは、経営法務として大きな強みになるでしょう。資格があることで、より戦略的かつ実務的な提案が可能になります。
中小企業診断士資格取得のメリット
この資格はキャリアの幅を大きく広げる武器でもあります。経営と法務の両方に明るい人材は希少であり、社内外からの信頼性が高まるでしょう。また、法務職にとどまらず、経営企画やコンサルティング業務への展開も可能になるため、将来の選択肢が格段に増えます。
中小企業診断士に合格するための勉強時間の目安は1000時間程度といわれており、過去問を中心に計画的に学習を進める必要があるでしょう。通信教育などの勉強法を検討するのもおすすめです。簡単に取得できる資格ではありませんが、実務に活かせる知識が身についたり、信頼性が高まったりするなど、経営法務の仕事を目指す方には多くのメリットがある資格といえるでしょう。
経営法務の仕事に向いている人の特徴
経営法務の仕事には、どのような資質を持つ人が向いているのでしょうか。以下で向いている人の特徴を3つ紹介します。
法的知識を深く学びたい人
経営法務の仕事は、知識欲が強く、法律を学び続けられる人に向いています。経営法務では、日々変化する法改正や判例に対応するため、継続的なインプットが欠かせません。また、契約や会社法だけでなく、知財や労務、デジタル関連の法務など、扱う範囲も広がっています。
深く掘り下げて学ぶ姿勢がある人ほど、実務での対応力や信頼が高まります。新しい知識を得て実践に活かすことに楽しさを感じられる人は、経営法務に適した素質を持っているといえるでしょう。
経営視点を持っている人
経営法務の現場では「ビジネスの全体像をとらえる力」が必要です。たとえば、単に「この契約にリスクがある」と指摘するだけでなく、「このリスクを回避しつつ、事業にとって有利な形にするにはどうするか?」という視点が求められます。
このような思考を支えるのが、経営視点です。財務や組織、事業計画に関する知識をもとに、ビジネスと法務を橋渡しできる力がある人ほど、経営法務で活躍できます。
コミュニケーション能力が高い人
コミュニケーション能力が高い人は経営法務に向いています。たとえば、現場から「こんな契約条件で進めたい」と相談を受けたとき、一方的に否定するのではなく、その背景や意図を理解しつつ、法的に安全な代替案を提示する能力が必要です。
また、経営層と専門用語を使わずに法的リスクを伝えたり、外部弁護士との調整をスムーズに進めたりするには、相手に応じた話し方や説明力が問われます。人との信頼関係を築ける人は、法務の枠を超えて組織全体で価値を発揮できるでしょう。
経営法務のキャリアパスと将来性
企業活動が複雑化・グローバル化する中で、経営法務の重要性は年々高まっています。その専門性を活かせば、多様なキャリアパスが開け、将来の安定性も期待できるでしょう。ここからは、経営法務のキャリアパスと将来性について紹介します。
経営法務担当者から経営層へのキャリアアップ
経営法務の経験は、将来の経営層候補へのステップになります。法的知識に加えて、経営戦略や事業判断に関与する立場で働くため、経営陣と視座を合わせる機会が多く、実務を通じて経営力が身につくでしょう。とくに、M&Aや事業再編などの経験を積めば、経営層としての信頼も厚くなります。
また、社内での昇進だけでなく、法務・経営に精通した人材として、他社への転職や起業・独立といった道も開けます。法務にとどまらない経営人材としてのキャリアアップが可能です。
経営法務の将来性と市場のニーズ
経営法務の需要は今後ますます拡大していくでしょう。近年では、ESG(環境・社会・ガバナンス)やDX(デジタル変革)への対応、サイバーセキュリティ、グローバル対応など、新たなリスク管理領域が企業に求められています。これらはすべて法的視点が不可欠です。
また、スタートアップから大手企業まで、成長志向の企業ほど法務の戦略的活用を求めています。リスクを避けるだけでなく、事業の推進力としての法務が、経営の武器になる時代です。
法務部門の重要性の高まりとキャリアの安定性
従来は契約管理や法律相談が中心だった法務ですが、今や「事業の成否を左右するブレーン」として、経営層からの信頼と期待が高まっています。そのため、企業内での地位向上や待遇改善も進んでおり、キャリアの安定性が増しているといえるでしょう。
また、法務人材の転職市場は活況で、中でも経営法務の経験者は即戦力として高く評価されます。変化の激しい時代だからこそ、経営と法律の両方を理解したプロフェッショナルの価値は今後も高まり続けるでしょう。
経営法務を学び、専門家としてキャリアアップを目指そう
経営法務は、法律と経営の両面から企業を支える専門性の高い分野です。実務を通じて多様なスキルを身につければ、将来のキャリアの幅も広がります。今こそ経営法務を学び、戦略法務のプロとして一歩踏み出しましょう。
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