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近年人気のあるキャリアコンサルタントですが、「実際にキャリアコンサルタントになるにはどうしたらいいのか」「キャリアコンサルタントはどんなスキルが必要なのか」とお悩みの方もいらっしゃると思います。
この記事ではキャリアコンサルタントを目指している方のために、業務内容や求められるスキル、また試験内容など、キャリアコンサルタントはどういうものか、どうしたらなれるのかを解説していきます。
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キャリアコンサルタントとは?
キャリアコンサルタントは「キャリア=今まで仕事で培ってきた経験」を「コンサルティング=専門知識を持って相談にのる」する職業です。
この場合、「キャリア」は仕事の経歴や経験値だけでなく、生活や生きがい、価値観も含まれ、相談者は学生や転職希望者のみならず、在職者、また組織の場合もあります。個人の特徴や能力、仕事の経験値などを把握し、その方の興味のある方向やライフスタイルに沿ってどのような職業や業務が合っているかのアドバイスや指導を行います。
名称独占資格
キャリアコンサルタントは「経営コンサルタント」とは全く別のものです。経営コンサルタントは特に資格がなくても名乗れますが、「キャリアコンサルタント」を名乗るには資格が必要です。
キャリアコンサルタントは2016年に国家資格として法制化された比較的新しい資格です。登録試験機関が行う「キャリアコンサルタント試験」に合格した後、キャリアコンサルタント名簿に登録されなければ名乗ることができない肩書なのです。これは「名称独占資格」と言われています。
ちなみに「業務独占資格」ではありませんので、「キャリアカウンセラー」「キャリアアドバイザー」などという肩書でキャリアコンサルティングを行うことは可能です。
資格の難易度
キャリアコンサルタント試験は厚生労働大臣の指定を受けた登録試験機関が実施しています。実施しているのは「日本キャリア開発協会(JCDA)」と「キャリア・コンサルティング協議会」という二つの団体で、どちらの試験機関で受けてもかまいません。
試験は学科試験と実技試験の両方があり、合格率は学科試験で60%~80%程度、実技試験で60%程度となっています。行政書士や社会保険労務士など、ほかの国家資格と比較すると合格率は高く、難易度としてはそれほど高くないといえるでしょう。
キャリアコンサルタントの需要が高まる背景
政府が推進している「働き方改革」により、以前と比べ働き方は多様化しており、それに伴いキャリアコンサルタントの需要は高まっています。
働く人の一人ひとりが自分自身のキャリアについて真面目に向き合うようになっています。また、政府も多様化する働く側のニーズに応え、さまざまな働き方を選択できるような労働環境を実現しようとしています。女性や障がいを持つ方、また育児や介護をしながら働きたいなどのニーズに合わせ、企業側も就業機会の拡大やキャリア形成、職業能力の向上に対して支援を行うよう求められています。
働き方の多様化、また多様な人材の能力開発を支援する仕事としてキャリアコンサルタントは重要視されています。
キャリアコンサルタントの仕事内容
では次にキャリアコンサルタントの具体的な仕事内容について解説していきます。大きく分けると5つの仕事に分類することができます。
①キャリアカウンセリング
悩みや問題点を明確にし、相談者が希望する方向に自ら舵を切れるよう支援するのがキャリアカウンセリングです。
キャリアコンサルタントに相談する方は、キャリアについて色々な悩みを抱えています。キャリアカウンセリングにあたって必要なのは、相手の立場に立って話をよく聞き、個々の仕事に対する意識や状況を把握することです。安心して話してもらえるよう相談者に信頼されることが必須です。
これまでの経歴やスキル、自信を持っているところなどを詳しくヒアリングすることで相談者自身も自分のキャリアを再認識することができるでしょう。
②キャリアサポート
相談者が自分の意志で職業を選択し、希望する職業に就くまで支援やアドバイスをするのはもちろんですが、実際にはよりきめ細かいサポートが必要とされます。
希望の職業が決まったら、就職までにするべき行動をスケジュール化します。応募する企業の洗い出し、応募にまつわる書類の作成など相談者の目標に応じて行動計画を立てていきます。また、履歴書、職務経歴書、応募書類などの作成サポートやチェックも重要な仕事です。さらに就職後、職場に適応できるようにサポートすることも必要になります。
③情報提供
相談者にとって有益な情報を提供することもキャリアコンサルタントの重要な仕事です。労働市場や求人事情の情報はもちろん、「実際にはどういう仕事なのか」「どういう労働環境なのか」「業界の慣習」などの情報を事前に提供することでミスマッチや就職後のトラブルを避けることができます。
実際にその仕事に就いたときに、「こんな仕事だと思わなかった」などと期待と現実のギャップに悩むことのないよう、ポジティブなことだけではなく、ネガティブなことも含め、多様な情報を提供することが大切です。
④ファシリテーション
ファシリテーションとは会議や会合などをスムーズに進行させることです。司会進行に近い業務と言えます。キャリアコンサルタントは相談者を個別に支援するだけでなく、組織、つまり学校や企業などの団体での研修やセミナーなどを進行する業務も担います。
キャリアコンサルタントに期待されるファシリテーションは司会や議長のように無機質に進行するのではなく、参加者から意見を引き出したり、参加者が目的を達成するために支援したりすることです。
⑤ジョブカード作成の支援
ジョブカードの作成支援もキャリアコンサルタントの仕事です。ジョブカードは、厚生労働省の「ジョブ・カード制度」に基づく書類のことで、自分のキャリアを整理するためのものです。ジョブ・カード制度とは、ジョブ・カードを使用し、求職活動や職業能力開発などに使用する制度のことです。
ジョブカードの内容はキャリアプランシート、職務経歴シート、職業能力証明シートの3種類のシートからなっており、これまでのキャリアの棚卸しと、今後自分がなりたい方向などを記入します。
キャリアコンサルタントに求められるスキル
キャリアコンサルタントは相談者のキャリアについて支援したり指導したりする立場ですから、多様な知識が必要なのはもちろんですが、コミュニケーション能力も重要視されるため、知識以外にも必要とされるスキルがあります。
①傾聴のスキル
キャリアカウンセリングだけに限ったことではありませんが、カウンセリングの基本は「傾聴」です。
よく話を聞き、相談者が何を考え、何をしたいと思っているのかを理解するために、相談者の信頼を得られるような真摯な態度で聞くことが大切です。カウンセラーが豊富な知識を持っていたとしても、信頼されていなければ相談者の悩みや希望を聞き出すことは難しいですし、聞き出せなければどんな情報を欲しがっているのかもわかりません。
まず、相手を受け入れる姿勢を大事にすれば、相談者も安心感を持って気持ちを話してくれます。
②柔軟な思考と冷静な分析力
キャリアコンサルタントは様々な個人や企業のカウンセリングを行います。ですから、それぞれに合わせられるよう、多方向に柔軟な考え方をすることが大切です。
自分の考えを押し付けるのではなく、相談者を尊重し、相手の意見に耳を傾けて相談者が望んでいる方向へ導いてあげることが重要です。
また、相談者は自分の悩みや不満自体をつかめていない場合もありますので、相談者の話を冷静に分析し、言葉にできていない本質の部分まで引き出してあげましょう。相談者の希望とスキルが著しく離れている場合などは、冷静に分析して難しいことも伝えねばなりません。
③言語化力
キャリアコンサルタントは相談者に寄り添う姿勢や、真摯な態度で耳を傾けることはもちろん大切ですが、相談者の意見を引き出し、アドバイスしていく際に、それぞれに合った適切な言葉をチョイスすることも重要です。
たとえば、言葉のチョイスを間違えるだけで「売り言葉に買い言葉」となりケンカに発展することもあります。それで信頼を失ってしまうこともありますので、いかに考えをうまく言語化し、「相手に伝わる言葉を選択できるか」もキャリアコンサルタントに必要な能力です。
④豊富な知識と向上心
相談者が希望する職業は業界も職種も多種多様なので、キャリアコンサルタントはそれに応えられる豊富な職業知識が必要とされます。
キャリアコンサルタント自身が経験豊富であればなおよいですが、個人が経験できる職業は職業全体でみればほんの一部です。キャリアコンサルタントとして業務を遂行するためには様々な職業や労働環境、またその働き方の知識を豊富に持つだけでなく、さらに日々自分自身をブラッシュアップしていく向上心を持つことが大切です。
キャリアコンサルタントになるには?
では次にどうしたらキャリアコンサルタントになれるのかを解説していきます。前述のようにキャリアコンサルタントは「名称独占資格」なので、まずキャリアコンサルタント試験に合格し、名簿に登録する必要があります。
①受験資格を満たす
キャリアコンサルタント試験は誰でも受験できる試験ではなく、受験資格を満たした人のみが受けられます。受験資格のある人は以下4つのうち、いずれかを満たしている人です。
- 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
- 労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した者
- 上記の項目と同等以上の能力を有する者
②キャリアコンサルタント学科試験・実技試験に合格する
キャリアコンサルタント試験は学科試験と実技試験の2つがあり、両方に合格しなければキャリアコンサルタントにはなれません。ですが、片方だけしか受からなかった場合でも、次回の試験で合格すれば資格は取得できるシステムです。
学科試験の内容
学科試験は筆記試験になります。方式は4択のマークシート方式で、問題数は50問、試験時間は100分です。合格基準が70点と明確に決められているので、それ以下の場合は不合格となります。
問題の内容は、
- 職業能力開発促進法その他関係法令に関する科目
- キャリアコンサルティングの理論に関する科目
- キャリアコンサルティングの実務に関する科目
- キャリアコンサルティングの社会的意義に関する科目
- キャリアコンサルタントの倫理と行動に関する科目
などが出題されます。
実技試験の内容
実技試験は論述試験と面接試験の2つに分かれています。論述試験は記述式で、逐語記録を読んで問題に回答する形式です。試験時間は50分です。
問題数は日本キャリア開発協会の場合は1~2問、キャリアコンサルティング協議会の場合は1問になります。面接試験はロールプレイと口頭試問で、計20分の試験時間です。
内容は、受験者がキャリアコンサルタント、試験官が相談者として面談するロールプレイングです。ロールプレイの時間が15分、その後5分間の口頭試問があります。
③名簿に登録
キャリアコンサルタント試験に合格したら、厚生労働省に備えるキャリアコンサルタント名簿へ登録する必要があります。
登録は厚生労働大臣が指定登録機関として指定した「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会」が行います。登録するためには手数料が必要となり、以下の金額ががかかります。
- 登録手数料8,000円(別途登録免許税9,000円が課税)
- 登録証の再交付または訂正料2,000円
4.5年毎の更新
キャリアコンサルタントの登録を継続するためには5年ごとに更新する必要があり、更新するためには講習を受ける必要があります。講習は2種類あり、どちらも受講する必要があります。
A:キャリアコンサルティングを適正に実施するために必要な知識の維持を図るための講習(知識講習)につき8時間以上
B:キャリアコンサルティングを適正に実施するために必要な技能の維持を図るための講習(技能講習)につき30時間以上
なお、キャリアコンサルティングの実務に従事した場合など、10時間以内のBの技能講習を受けたものとみなされるケースもあります。
キャリアコンサルタントの資格を活かせるフィールド
キャリアコンサルタントは働き方の多様化に伴い、様々なフィールドでニーズが増えています。ここでは主に活躍できるフィールドをご紹介します。
企業の人事部
キャリアコンサルタントは人材の能力開発を支援する役割を担うことから、企業での人事部からのニーズが増えています。人事の業務は社員の採用はもちろんですが、既存社員の能力開発や適材適所の人材配置など、多岐にわたります。
人事部では人事、労務の知識があることが必須ですし、カウンセリングスキルを持っていることにより、社員の悩みを解決するサポートができるので、キャリアコンサルタントが活躍できる場所だと言えます。
人材関係の企業
人材派遣会社、人材コンサルタントなど、人材関係の企業もキャリアコンサルタントの資格を生かせるところです。主に転職、就職のアドバイスがメインの業務になります。
カウンセリングスキルを活かして、登録者の希望する職業を把握し、登録者のキャリアやスキルから登録者に合ったアドバイスをします。登録者の希望と企業のニーズをすり合わせて適材適所に就職支援する仕事はまさにキャリアコンサルタントに適した仕事だと言えるでしょう。
教育機関
大学、専門学校などの教育機関もキャリアコンサルタントが活躍しているフィールドです。最近はキャリア支援に尽力している大学も多く、就職支援センターやキャリアセンターと言われる学生の就職を支援する部署があります。就職課とも言われます。
「どのような職業に就きたいのか」「どんな仕事に向いているか」など学生が自分の得意分野や適性を理解できるようにカウンセリングや就職指導しが主な業務で、履歴書やエントリーシート作成支援や面接時の指導などもします。
公的機関
キャリアカウンセラーが最も活躍しているフィールドはハローワークや公共職業訓練、ジョブカフェなどの公的機関と言われています。
ジョブカフェは「若年者のためのワンストップサービスセンター」と言い、都道府県がメインで設置する若者向けの就職支援施設です。ハローワークは転職者のほとんどが一度は足を運ぶ場所であり、若年層から年配の方まで幅広い年代が来るので、幅広い知識と高いカウンセリングスキルが求められます。
フリーランス
キャリアコンサルタントは資格を持っているので、企業などに就職せずフリーランスとして独立することも可能です。
一般的には一般企業や公的機関などと業務委託契約を結んでキャリアカウンセリングを行うことが多いです。実績を作っていけば学校や団体等でキャリア教育の指導や、講演会などで収入を得ることも可能です。個人事業主になるので、時間的にフレキシブルな働き方も可能ですが、フリーランスの場合は自分で直接契約を取らなければならないので、人脈づくりや営業活動も必須になってきます。
キャリアコンサルタントの平均年収
ではキャリアコンサルタントはどのくらいの年収があるのでしょうか。「労働政策研究報告書」によると、2017年の時点ではキャリアコンサルタント資格保持者の年収で最も多い層は「200万~400万円未満」となっています。
次に多い層は「400~600万円未満」となっていますが、この収入はキャリアコンサルタント資格保持者のものではありますが、「キャリアコンサルティング以外の収入を含む」ため、就業形態によって年収が大きく異なります。
キャリアコンサルタントは需要がさらに高まっていく職業
少子化傾向やコロナ禍の影響で社会環境は近年急速に変化しています。また終身雇用や年功序列も崩れつつありますし、非正規雇用の増加など不安定な雇用に不安を抱える方も多くなっています。
個人個人で働き方やワークバランスを考え直し、多様な価値観が認められる時代になってきており、その中でキャリアコンサルタントは重要視される存在になっています。
今後の自分のキャリア形成をどうすればいいか悩む方が増加する中、キャリアコンサルタントの資格を取得し、転職することも視野に入れてはいかがでしょうか。