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パワハラとは、職場内での優位性や立場を利用して労働者に嫌がらせを行う行為のことをいいます。労働者の労働環境を、心理的・身体的にも安全を保つよう、多くの企業がパワハラに対する対策を行っていますが、実際にはまだまだ多くの労働者がパワハラの被害にあっています。パワハラがきっかけで、精神的にも身体的にも労働ができない状態に陥ってしまう労働者も少なくありません。
そこで、今回はパワハラに悩む労働者に向けて、パワハラを回避するための手段の一つでもある転職について解説します。この記事では、パワハラで退職した際の影響や、退職時にすべきことについてもまとめているので、転職を考えている人は参考にしてください。
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パワハラの定義とは
パワハラとは、パワーハラスメントの略です。職場内での優位性や立場を利用して、労働者に対して業務の適正範囲を超えた?責や嫌がらせを行う行為をいいます。
パワハラのほとんどは、加害者自身がパワハラだと認識せず行為を行っていることが多いです。また、被害者も「仕方ない」「業務ができなかった自分が悪い」とパワハラだと認識せず、我慢してしまう人は少なくありません。
しかし「嫌がらせ」行為はパワハラです。以下では、パワハラの定義を解説するので、身の回りで起こっている行為はパワハラなのか、一度認識を改めてみましょう。
参考:厚生労働省「労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止対策義務化)について」
①優越的な関係を背景とした言動
「優越的な関係」とは、職場内での肩書や職位における上下関係ではなく、専門性や経験、学歴などの要素が関係します。職場におけるパワハラで多いケースが「地位の優位性」です。職場では、上司や先輩から、部下や後輩に対してのパワハラが多いでしょう。
一方、部下が上司に対してパワハラを行う場合もあります。一般的に「パワハラ」と聞くと、上司が部下に対して圧力をかけているイメージがありますが、部下がわざと上司に嫌がらせを受けているかのように振る舞うパターンもあります。上司の立場をわざと悪くするような行為も「自分の地位を利用した行為」であり、パワハラです。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
業務適正の範囲を超えている行為は、パワハラに該当します。
厳しい指導をしても、その指導内容が業務と関係があることであれば、パワハラにはなりません。しかし、業務とは関係のない個人的な命令や叱責はパワハラに該当します。具体的には、金銭的な共有や注意指導の際に土下座を強要する行為です。これらはすべて、業務の適正範囲を超えた「命令」であり、パワハラに該当します。
業務の適正範囲内であるかを判断する際には、以下の項目で確認をしてみましょう。
- 言動を受けた労働者の問題行動の有無
- 言動の内容
- 言動が行われた経緯
- 言動の頻度・態様
- 言動の目的
③労働者の就業環境が害される精神的・身体的苦痛を与える言動
労働者に対して精神的・身体的に苦痛を与える言動や、労働者の職場環境が不快になる行為もパワハラです。
具体的には、急に大声で怒鳴ったり、必要以上に失敗に対して責める行為などがあります。これらの行為は、パワハラを受けた従業員だけでなく、周囲の従業員にとっても圧力を感じる行為です。その結果、周囲の従業員にとっても仕事に悪影響が出る可能性があり、言動を起こした本人に悪気がなくても、周囲が不快に感じればパワハラに該当します。
ここでいう労働者とは、雇用形態を問わないので注意しましょう。正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの職場で働くあらゆる雇用形態が対象です。
パワハラの典型的6類型
パワハラにもさまざまな種類があります。以下では、パワハラに該当する6つの種類を紹介します。パワハラについての理解を深めるために役立ててください。
①身体的な攻撃
身体的な攻撃のパワハラとは、暴力行為のことをいいます。具体的には「殴る」「蹴る」などです。他にも、「胸ぐらをつかむ」「たばこの火を近づける」という身体的に対しての暴力行為や、「ゴミ箱を蹴る」などのモノにあたって威嚇する行為も含まれます。
また、「立ったまま営業電話をさせる」なども、身体的な攻撃のパワハラに該当します。
例
- モノを投げつける
- 足蹴りをする
②精神的な攻撃
精神的な攻撃とは、暴言によって相手を精神的に苦しめる行為をいいます。「怒鳴る」「侮辱する」「大勢の前で必要以上に叱責する」などがその例です。これらは「言葉の暴力」といい、従業員が精神的に追い込まれやすいパワハラであり、精神障害を発生する従業員は少なくありません。
例
- 人格否定
- 必要以上に長い時間の激しい叱責
- 大勢の前で大声・威圧的な叱責
③人間関係からの切り離し
「無視」「隔離」「仲間外れ」などは、人間関係からの切り離しであり、パワハラに該当します。従業員が職場で孤立するように仕向ける行為です。
仕事上必要な連絡先をあえて教えなかったり、デスクを対象の労働者だけ離れた場所に設置するなども含まれます。
例
- 対象の労働者だけを仕事から外し、長時間別室に隔離する
- 同僚が集団で無視、職場で孤立させる
④過大な要求
過大な要求とは、対象の労働者が持つ能力を超えた仕事を強要することをいいます。明らかに終わらないであろう仕事量を押し付ける行為や、達成不可能な課題を課して評価を落とすなどがその例です。これらは、従業員の長時間労働にもつながる行為であり、パワハラに該当します。
例
- 新入社員に対して必要な研修を実施せず、到底対応できないレベルの業績目標を課す。達成できなかったことに対し、厳しく叱責する。
⑤過小な要求
過大な要求に対し、過小な要求もパワハラです。過小な要求とは、能力や経験に見合わない雑用ばかり与える行為をいいます。たとえば、営業職の従業員に1日中掃除をさせるなどです。本人のやる気を否定し、あえて仕事を与えない行為と捉えておきましょう。
例
- 嫌いな労働者に仕事を与えない
- 管理職に誰でもできる雑務のみをさせる
⑥個の侵害
個の侵害とは、労働者のプライベートに対して過度に干渉する行為です。具体的には、交際相手についてや、休日の過ごし方について必要以上に聞く、相手の意志を無視して退社後に個別連絡を取るなどがあります。また、対象の従業員に対して性的な意味合いが含まれる行為もパワハラに該当します。
例
- 労働者を職場外でも干渉、監視する
- 労働者の個人情報や家族関係、交際相手についてしつこく聞く
パワハラ被害にあったときは
実際にパワハラ被害に遭遇した際、どのような対処をすればいいのでしょうか。以下では、パワハラ被害にあった際にするべき処置について解説します。この記事を参考にパワハラに対して適切な対応で解決を目指しましょう。
社内や社外の窓口で相談する
社内に相談窓口があれば、相談してみましょう。
企業には「労働施策総合推進法」により、相談窓口設置の義務があります。そのため、ほとんどの企業に社内相談窓口が設置されている企業が多いです。窓口であれば、相談がしやすく処置も早いというメリットがあります。
一方、社内相談窓口だと運用の仕方によっては相談したことが加害者に伝わり、パワハラが過激化する可能性を心配する人もいるでしょう。その際は、社外の相談窓口に相談するのがオススメです。中でも総合労働相談コーナー(※1)は、各都道府県労働局など379か所に設置されている相談窓口であり、国が設置しているため秘密厳守で対応してくれます。
(※1)参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
異動や配置転換を申し出る
パワハラの加害者との接点を減らすために、会社に異動願を出すことも検討してみましょう。直接の接点が減れば、パワハラから逃れられます。異動願を出す際は、加害者に知られないよう、慎重に会社に交渉しましょう。
また、加害者と上司・部下の関係であれば、上司の変更を申し出ることも可能です。その際は、人事部に理由をしっかりと説明し、内密に対応してもらうようにしましょう。
休職する
パワハラを受け、心身に不調が感じられる場合は、休職も考えましょう。身体的にも精神的にも不調を感じているときに働いてもいい成果は出ません。無理に働き続けた結果、適応障害やうつ病につながる可能性もあります。
休職は悪いことではありません。勇気をもって休職をしてみるのもパワハラ対策の手段だと認識しておきましょう。
パワハラが原因で退職する前にすべきこと
パワハラが原因で退職する際には、適切な処理をするようにしましょう。具体的な処置については、以下で解説をします。これから退職を考えている人は、以下の内容を参考に退職準備をしてください。
証拠や記録を残しておく
パワハラを受けたことを証明するために、情報を残しましょう。具体的には、以下のようなものがパワハラ証明に役立ちます。
- 暴言や人格否定をされた音声データ
- パワハラにあたるメールやメッセージ履歴
- 被害内容を記録した日記
これらのデータは、リアルなパワハラ被害を証明できるものです。パワハラを受けた事実を第三者に正確に伝えることで、適切な対処をしてもらえるようになります。
退職は1ヶ月前には伝える
パワハラを理由で退社したい場合は、少なくても1か月前までに退職を会社に伝えましょう。
急に退職してしまうと、業務の引継ぎや後任がいないまま抜けることになってしまう可能性があります。会社に迷惑がかかる状況を作ってしまうと、円満に退職ができなくなってしまいます。そのため、最低でも1か月前までには退職を伝えることが理想的です。
どうしても今すぐ辞めたいという場合は、その理由を会社に相談してみましょう。一般的には、退職意思を伝えてから2週間で退職はできます。
精神障害がある場合は労災申請する
パワハラが原因で、適応障害や精神障害、睡眠障害などが発生した場合は、労災申請をしましょう。
労災認定は、申請後すぐに承認されないことが多いです。特に精神障害やうつ病は、労災で認められるには、会社に原因があることを証明しないといけません。仮に証明されても、認定まで半年から1年程度かかることが一般的だといわれています。時間がかかる恐れがあるので、できる限り早めに申請するのがオススメです。
ちなみに、労災申請は退職後でもできます。
転職先を決めておく
在籍中に次の転職先を探しておきましょう。退職する前に、新たな職場が決まっていれば、安心感があり精神的にも余裕が生まれます。
ただし、退職後すぐに次の就職先に務めてしまうと失業手当は受け取れないので注意してください。失業手当を受け取らなければ、退職理由や退職手続きにストレスを感じる必要がないというメリットはあります。
転職先を探す際、一人では不安という方は転職エージェントを利用するのがオススメです。
上司に退職意向を伝えるには
上司や会社へ退職意向を伝えるのは、次の就職先が決まってからにしましょう。
あまり早い段階で転職することを伝えてしまうと、パワハラがエスカレートしたり、業務が降られなくなる可能性があります。そうならないためにも、次の転職先を決め、心に余裕を持った状態で退職の意思は伝えるのがオススメです。
その後しっかりと業務の引継ぎや、退職手続きを行えば、会社と円満に退職ができます。
パワハラが原因の退職は「自己都合」か「会社都合」か?
パワハラが原因で退職する人や退職を考えている人は多いと思います。もし、パワハラが原因で退職した場合、退職理由は自己都合なのか、会社都合なのか気になる人は多いのではないでしょうか。
以下では、パワハラが原因で退職した場合について解説します。気になる方は以下を参考に理解を深めてください。
パワハラが認められた場合は会社都合退職
退職理由が明らかにパワハラだと認められた場合は、会社都合により退職になります。
厚生労働省の「パワーハラスメント定義について」(※2)では、職場のパワハラを以下の3つの定義で定めています。
- 優越的な関係にもとづいて行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
上記のとおり、パワハラは雇用側の責任とみなされるため、パワハラを理由に退職した場合は、会社都合となります。しかし、企業にとっては会社都合での退職を認めてしまった場合、同時にパワハラを認めたことになります。そのため、労働者からパワハラを原因に退職を申し出された際、自己都合の退職を促すケースも少なくありません。
(※2)参考:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」
自己都合退職を迫られた場合
仮に、会社にパワハラでの退職を自己都合退職で手続きするよう促されても、失業保険の受給開始日を変更してもらえる可能性があります。
自己都合による退職でも、ハローワークに退職の正当な理由によるものと認められた場合は「特定理由離職者」としての扱いになります。その結果、給付制限なしに、失業手当を受けることが可能です。
特定理由離職者とみなされるには、精神病や心身の障害、負傷などの条件があります。基本的に、パワハラが原因で怪我をしたり精神病になった場合は特定理由離職者とみなされるので、まずはハローワークに相談してみましょう。
パワハラが理由で退職すると転職に影響はある?
パワハラが原因で退職した場合、今後のキャリアに影響が出ないか不安を感じている人もいると思います。以下では、パワハラを原因に退職した際の転職活動への影響を解説します。不安を感じている方は、参考にしてください。
履歴書には退職理由を書かなくてもよい
退職理由がパワハラということは、履歴書に書くべきことではありません。理由は、以下のようなことが考えられるからです。
- 入社してもすぐに辞めてしまうと思われる
- すぐにパワハラ、セクハラと騒ぐのではないかと懸念される
- 自社で既存社員とうまくやっていけるか不安
履歴書に記載することで、採用担当者が誤解する可能性があります。そのため、履歴書には退職理由をパワハラとは表記せず、その他の理由で退職したことにしましょう。具体的には「スキルアップのため」「働き方を変えたいため」など、前向きな退職理由がオススメです。
面接で退職理由を尋ねられた場合
面接でも「パワハラで退職した」ということは伝えないのが無難です。書類選考同様に、面接官に誤解を与えないようにしましょう。
もちろん、面接で嘘をつく必要はありません。しかし、面接官に好印象を与えるためにも、退職理由は前向きな理由を伝えるのがオススメです。「仮にパワハラが無かったら?」と考えた際、どのような理由で退職していたか考えてみましょう。「もっと大きな仕事がしたい」「地元に戻って地元企業で働きながら地域活性化に貢献したい」など、さまざまな理由が浮かんでくるのではないでしょうか。このような前向きな発言が面接官に好印象を与えます。
面接では、ネガティブな発言よりもポジティブな発言を意識してみてください。
職場全体の問題だったことを強調する
もし、パワハラが原因で退職したことを伝える場合は、自分だけでなく職場全体の問題だったことを強調しましょう。
職場内で自分だけがパワハラを受けていたと伝えると、面接官が「本人に能力がないから」「性格に問題があるから」と誤解する可能性があります。面接官に誤解を与えないためにも、職場全体でパワハラが問題になっていると伝えるようにしましょう。
パワハラは転職で回避でして、新しい環境を手に入れよう
パワハラは、転職で回避することが可能です。社内異動や休職、相談窓口への相談などもパワハラ対策につながりますが、同じ環境では精神的に安心しにくいといわれています。思い切って、職場環境を変えるための転職をしてみてはいかがでしょうか。
パワハラを理由に退職することは、決して悪いことではありません。転職活動の際は、伝え方に注意すれば、面接官に誤解を与えることなくスムーズに転職できます。もし一人で転職活動をするのが不安な方は、転職エージェントに相談をしてみましょう。