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IRという言葉について耳にはするものの、詳しい内容には自信がない人は少なくありません。近頃、IRは企業活動で重要視されているポジションであり、会社内での役割を知ると転職の幅が広がるでしょう。
この記事では、IRが注目される理由や、転職するために必要なスキルを解説します。
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IRとはなにか?
IRとは「Investor Relations(インベスター・リレーションズ)」の略で、株主や投資家に企業の経営状況を提供する活動のことをいいます。IRの大きな目的は、株主や投資家へ自社についてよく知ってもらい、企業経営の根源となる資金調達に繋げることです。
IR担当者を企業内に置くことで株主や投資家との良い関係を築き、スムーズな経営活動を目指せるようになります。
広報とIRの違い
広報とIRは情報提供という共通点がありますが、伝える先や内容が大きな違いといえます。
業種 | 対象 | 情報の内容 |
---|---|---|
広報 | マスコミや世間一般向け | 商品や企業に関する広い情報を伝える |
IR | 投資家・株主向け | 投資判断に関する情報を伝える |
広報は世間一般に対する商品や自社についての情報を伝える職種であることに対し、IRは株主や投資家に向けた活動を行う職種です。ただ、広報とIRは情報提供という分野で共通していることから、両者の連携が必要な場合もあります。
なぜ今「IR」が注目されているのか
今IRが注目されている理由の一つに、東証の市場再編で企業が受ける影響が挙げられます。2022年の東証市場の再編により、今までのブランド力を維持できなくなった企業は少なくありません。これからの企業がブランド力を高めるための方法の一つとして、有効とされている手段がIRだと考えられているのです。
IRを通して財政の透明性や経営方針の発信を行うことで、世の中から信頼できる企業との評価が高まります。長いスパンで取り組みを行い、企業の成長に繋げていくことがIRに期待されている役割です。
企業がIR情報を開示する理由
大まかな概要を理解したところで、なぜ企業がIR情報を開示するのか気になるところです。IRがもたらす良い効果を知り、企業内での役割を理解しましょう。
理由①:法律や証券取引所の規定のため
企業には、金融商品取引法や会社法といった法律に基づいて、IR情報を開示する義務があります(法定開示)。また、証券取引所のルールで開示もします(適時開示)。
規程通りにIRを行わないと、企業活動に制限が出るようなペナルティを受けるケースもあります。IR担当者含め経営者は、規定に違反しないように注意しなければなりません。
理由②:自社の魅力をアピールするため
IR情報の公開により、自社の魅力を感じてもらい新規株主の獲得に繋がるとも考えられます。企業の株主になってもらうには、自社に将来性があると感じられるような取り組みが必要です。
株主が投資判断をする際に必要な情報として、企業理念や経営方針、財政状況などを明らかにします。情報をわかりやすくアピールし、魅力を感じてもらうことで新たな株主獲得に繋げていくのです。
理由③:自社の社会的価値を高めるため
企業のステークホルダーに対し、自社の魅力を伝えて社会的価値を高めるためです。企業は顧客や地域、行政など投資家以外にもさまざまなステークホルダーとのやり取りで成り立っています。
IRを通して企業の活動状況を伝えていくことは、自社の社会的価値の向上に繋がる取り組みです。ステークホルダーと今後も長く付き合っていくための、信頼関係を築くために必要な活動ともいえるでしょう。
IRの業務内容
企業がIRを行うにあたって、具体的な業務内容が気になるところです。IRの業務内容を知り、株主や投資家とどのように関わっているかを理解しましょう。
1.自社の財務状況を投資家や株主に提示
株主や投資家が自社への投資を検討する際に必要な、以下のような情報を提示します。
- 決算報告書
- 有価証券報告書
- 財政状況
- 企業理念
- 商品知識
情報の提示方法は、主に企業説明会やホームページへの掲載などが挙げられます。説明会で自社の強みをアピールしたり、わかりやすいホームページ設計を提案することもIRの業務の一つです。
2.決算関連の報告書やレポートを作成・発行
決算説明会で使用する、会社の財政状況をまとめた報告書やレポートの作成もIRの仕事の一つです。財政状況のほかに経営計画の進み具合や、将来的な戦略についての内容をまとめます。株主や投資家を含めたステークホルダーに対して経営状況をわかりやすく伝えるために、必要な情報を盛り込んだレポートの作成が必要です。
また、ステークホルダーがどのような情報を求めているかを、あらかじめ調査をする場合もあります。
3.投資家向けの広報活動
株主や投資家向けの広報活動として、ウェブサイトやコンテンツを利用した情報発信を行う場合もあります。近頃では、企業の公式ホームページのほかにIR情報専用のサイトを開設するケースは少なくありません。
株主や投資家がホームページから知りたい内容にアクセスできるよう、常に新たな情報を掲載しておくことが必要です。サイトからの問い合わせ対応もIR担当者が行うことで、情報の一貫性を保つ働きがあるでしょう。
4.投資家や株主の意見を経営陣へ伝える
日頃から投資家や株主の意見に耳を傾け、必要な情報を経営陣へ伝えることもIRの仕事の一つです。投資家や株主とのやり取りが多いIRは、会社内では気づけない重要な意見を耳にすることも少なくありません。
IR担当者がそれぞれから出た意見をまとめ、企業上層部に伝えることでより良い会社運営に貢献できます。株主たちとのコミュニケーションを通し、企業活動の潤滑剤のような役割が期待されるでしょう。
IRの業務に必要とされる能力は?
企業の成長に貢献するポジションであるIRに、必要とされる能力が気になるところです。広い経営知識や、社内外の人と関係を構築するスキルが求められるでしょう。
1.コミュニュケーション能力
IRとして社内外の人とやり取りをする上で、コミュニケーション能力は欠かせません。コミュニケーションスキルは、関係構築能力とも言い換えることができます。
IRのコミュニケーション能力が高いと、株主や投資家との普段からのやり取りを通して信頼関係を築けるものです。関わりの中で重要な情報を取り入れ、企業上層部にスムーズに伝えられるとより良い会社経営に繋がるでしょう。
2.プレゼンテーション能力
株主や投資家に対して、自社の経営状況を伝える際にプレゼンテーション能力が必要です。IRは各種説明会において、ステークホルダーに対し自社の状況をわかりやすく伝えるスキルが求められます。
株主や投資家などから投資に値する企業だと思ってもらうには、ただ単に事実を述べるだけでは自社の魅力は伝わりません。相手に理解してもらえる話の組み立て方で、引き込まれるプレゼンテーションが求められます。
3.高い語学力
企業に海外投資家が多いケースでは、株主や投資家とのコミュニケーションで高い語学力が求められます。これから海外進出を目指す企業でも、語学スキルを備えた人材を求める傾向が強まるでしょう。
語学レベルとしてはステークホルダーからの問い合わせ対応や、資料作成など業務全般を行えるビジネスレベルが基本です。ビジネス会話が行える上、経営全般の内容を相手にわかりやすく説明するスキルも求められます。
4.経営管理に関する知識
IRは株主や投資家対応の窓口ともいえるため、経営管理全般の知識を持っている必要があります。IRが扱う情報のレベルは株の知識から企業経営全般まで幅広く、自社についてよく知っておかなければなりません。
株主や投資家へ企業について尋ねられた時、専門用語を噛み砕いて説明するスキルも必要です。誰にでもわかりやすい説明ができるIR担当がいると、企業に関心を持ってもらえる可能性が高まると考えられます。
5.財務・経理に関する知識
会社の財政状況と大きな関わりを持つIRにとって、財務や経理に関する知識が必要です。株主や投資家への企業説明会では、決算書などの資料を用いて財政状況を伝えます。
会社の数字が変化した理由を読み解き、プレゼンテーションするためには会計に関する知識が必要です。会計担当と連携して仕事を行うケースもありますが、自身でもある程度の知識を持っていると臨機応変な対応で役立ちます。
IRへ転職するためにすべきことは?
IRへスムーズに転職するために、すべきことが気になる人も多そうです。IRとして企業が求めている人材像を知り、今からできることを始めましょう。
1.実務経験を積む
IRへ未経験で転職するためには、近い分野の実務経験を積んでおくことが必要です。IRで働く上で必要な知識を備えておくことで、転職時のアピールポイントとなります。会社内の経理や財務、広報などの部署へ異動ができそうであれば、希望を出してみるのも一つの方法です。
異動が難しそうであれば、IRの要素がある部署へ一度転職することも視野に入れましょう。働きながらIRに関連する要素を学ぶことで、入職後の業務理解がスムーズになると考えられます。
2.語学力を磨く
ビジネスレベルの語学力を磨いておくことも、IRへの転職で有利になるポイントの一つです。海外投資家が多い企業や、グローバル進出を目指している会社ではビジネスレベルの外国語が話せる人材を求めています。
特に、今後需要が増えると考えられるIRでは、貴重な人材として扱ってもらえる可能性が高いです。語学力に自信があり、仕事で活かしたいと考える人は就職面接で積極的にアピールしましょう。
3.セミナーや勉強会に通う
セミナーや勉強会の参加や情報収集によって、IRの仕事への理解を深めることも転職における重要な点です。IRの仕事では株主や投資家との関わりが多いため、世の中の流れを知り順応していく必要があります。
日頃からインターネットや新聞などで世の中の動きをチェックし、IRに関わりの深そうな事柄をキャッチする癖をつけておきましょう。セミナーや勉強会があれば積極的に参加すると、知識を養えて人脈作りにも役立ちそうです。
IRへの転職に有利な資格
IRへの転職に有利な資格があれば、前もって知っておきたいものです。実務に役立つ資格を取得し、転職活動で積極的にアピールしましょう。
TOEIC Listening & Reading Test
IRの求人を出す上場企業では、社内文書読解レベルであるTOEIC700点以上を求めるケースが多いようです。IRのような社内の重要な書類を扱うポジションでは、英語を用いて内容を説明できるレベルを求められるのでしょう。
また、TOEICで出題される英文はビジネスシーンを想定されたものが多く、海外投資家を相手とする実務に役立ちそうな内容です。TOEIC700点レベルは別な企業への転職にも役立つので、挑戦してみる価値があります。
▶︎TOEIC Listening & Reading Test
CIRP検定
CIRP検定とは、IRの担い手を養成することを目的とした特定非営利活動法人が実施する民間資格です。IRとして働く上で必要な資本市場に関する基礎知識や、考え方を測る内容となっています。CIRP検定を受験すると実務に役立つ知識を養え、就職面接でのアピールポイントとしても効果を発揮しそうです。資格や学歴など関係なく誰でも受けることができるので、自身の知識レベルの確認としてチャレンジしても良いでしょう。
▶︎CIRP検定
財務報告実務検定
財務報告実務検定とはIRが仕事で触れる会計知識を学べる資格のことで、以下のような内容を学べます。
- 財務諸表の作成
- 開示書類に関する内容
- 財務報告
会計における知識は、IRが株主や投資家へ情報提供を行う上で欠かせないスキルです。資格取得すると、実務で扱わなければならない知識をスムーズに取り込めるでしょう。受験資格は特になく、誰でもチャレンジできます。
▶︎財務報告実務検定
IRは狭き門ながら企業における需要は高まっている
IRは企業を資力面から支える上で、今後期待が高まるポジションといえます。求人は上場企業がメインになるため倍率は高いと考えられますが、就職試験では知識やポテンシャルのアピールが重要です。自身がIRとして企業にどう貢献できるか考え、今からできる準備を行い転職に繋げましょう。