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消費税法とは?課税対象や消費税の計算の仕方から申告・納付方法まで解説

シンカキャリア編集部

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更新日:2024/07/09

消費税法の理解は、あらゆる事業者にとって不可欠なスキルです。しかし消費税の計算方法、軽減税率、仕入税額控除などの基礎的な知識から、新しく導入されたインボイス制度の詳細までを説明できる人は少ないでしょう。消費税法を深く理解すると、スムーズな業務遂行と適切な税務処理ができるようになります。経理・財務分野でのキャリアアップを考えるなら、専門的な資格の取得も視野に入れましょう。この記事では、消費税法の基本から応用までを分かりやすく解説。さらに消費税法能力検定についても解説します。

目次

消費税法の理解は、あらゆる事業者にとって不可欠なスキルです。しかし消費税の計算方法、軽減税率、仕入税額控除などの基礎的な知識から、新しく導入されたインボイス制度の詳細までを説明できる人は少ないでしょう。

消費税法を深く理解すると、スムーズな業務遂行と適切な税務処理ができるようになります。経理・財務分野でのキャリアアップを考えるなら、専門的な資格の取得も視野に入れましょう。

この記事では、消費税法の基本から応用までを分かりやすく解説。さらに消費税法能力検定についても解説します。

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消費税法とは?

消費税法は、商品やサービスの取引に対して課される消費税の課税対象、納税義務者、税額の計算方法などを規定したものです。1988年に制定されて以来、税率の変更や特例措置の導入など、改正が行われてきました。

消費税は間接税の一種で、消費者が負担し事業者が国に納付します。所得税や法人税などは担税者自身が納付する直接税です。消費税法は、その他の税法に比べて学習範囲が限られているものの、実務上の重要性が高いため、税法の中でも人気のある分野です。

2019年には消費税率が10%に引き上げられ軽減税率制度が導入されるなど、社会的な関心が高まっています。2020年と2021年の改正では、法人に関する申告期限の特例、居住用賃貸建物の消費税控除制度、輸出物品販売場制度などが見直されました。

2022年には適格請求書発行事業者の登録手続きや消費税の請求書等保存方式に関する改正が行われています。

消費税法は、経理の専門家やビジネスパーソンにとって不可欠な知識のため、身につけることで実務で役立ち、転職で優位性を得られるでしょう。

参考:e-Gov法令検索「消費税法」

消費税の仕組みとは?

消費税法では消費税の対象となる取引、納税義務者について定めています。どのような取引が課税または非課税の対象となるのかについて理解することが大切です。消費税の基本をおさえることで、経理や会計の知識を高めることができるでしょう。

課税取引と非課税取引

消費税法では、課税取引と非課税取引に分かれています。課税取引は事業者が事業として対価を得て行う取引です。非課税取引は消費税の対象外とされる特定の取引で、土地の譲渡や有価証券の取引などが該当します。

課税取引

消費税の課税取引について解説します。基本的に、国内で事業者が事業の一環として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供は消費税の課税対象です。商品の販売、運送、広告など、対価を得て行われるほとんどの取引が含まれます。

外国から商品を輸入する際も、輸入時に消費税が課税されるため注意が必要です。国内での消費に伴う税金として、輸入品にも公平に課税されます。

非課税取引

消費税法では、特定の取引に非課税の扱いが与えられています。非課税取引は、消費税が課税に適さない性質を持つものや、社会政策的な配慮から免除されているものです。

主な非課税取引には以下のようなものがあります。

  1. 土地の譲渡、貸付け(一時的なものを除く。)など
  2. 有価証券、支払手段の譲渡など
  3. 利子、保証料、保険料など
  4. 特定の場所で行う郵便切手、印紙などの譲渡
  5. 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
  6. 住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
  7. 外国為替など
  8. 社会保険医療など
  9. 介護保険サービス・社会福祉事業など
  10. お産費用など
  11. 埋葬料・火葬料
  12. 一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付けなど
  13. 一定の学校の授業料、入学金、入学検定料、施設設備費など
  14. 教科用図書の譲渡
  15. 住宅の貸付け(一時的なものを除く。)※1

(※1)参考:国税庁「消費税のしくみ」

上記の非課税取引は、消費税法の下で特別に定められており、事業者はこれらの取引について消費税を課す必要はありません。

課税事業者と免税事業者

消費税の納税義務者となる「課税事業者」と、納税義務のない「免税事業者」に分けて、特徴と条件を解説します。

課税事業者

消費税の納税義務者である「課税事業者」について解説します。課税事業者とは、特定の基準期間内の課税売上高が1,000万円を超える事業者です。この基準期間は、個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度です。

課税売上高が1,000万円以下の場合でも、特定期間内の課税売上高が1,000万円を超えれば、その課税期間で課税事業者となります。特定期間は、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日、法人は前事業年度の開始日から6ヶ月間です。

免税事業者

免税事業者とは、課税売上高が特定の基準を満たさない事業者で、消費税の納税義務が免除されます。基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者が対象です。

この基準を満たさない事業者は、その年(または事業年度)に消費税の納税義務がなく、免税事業者として扱われます。免税事業者でも、課税事業者となることを選択できます。

消費税の軽減税率

消費税の軽減税率は、特定の商品やサービスに低い税率を適用する制度です。軽減税率は、2019年10月の消費税率引き上げに伴い導入されました。

具体的には、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」に適用されます。軽減税率は、生活必需品に対する消費者の税負担を軽減することが目的です。

軽減税率の対象となる飲食料品は、食品表示法に基づく食品で酒類は除外されます。テイクアウトや宅配などで提供される食品も含まれますが、外食やケータリングは対象外です。一定の要件を満たす食品と非食品がセットになった「一体資産」も、軽減税率の適用対象となり得ます。新聞に関しては週2回以上発行され、定期購読契約に基づいて提供されるものが対象です。売店での単発購入や電子新聞は、標準税率が適用されます。

軽減税率の導入は消費者にとっては税負担が軽減されるメリットがありますが、事業者には適用条件に合わせたシステム改修などのコストが発生します。

軽減税率の対象品目や適用条件は政策の変更により変わる可能性があるため、事業者は最新の情報に注意が必要です。消費者にとっても、購入時の消費税率を理解し、適切に利用することが求められます。

消費税の計算方法

消費税の計算方法を理解することは、事業運営において重要です。消費税の国税計算方法に焦点を当て、「原則課税(一般課税)」「簡易課税制度」「みなし仕入率」という3つの基本的な計算方式を解説します。

それぞれの方式には特徴があり、事業の種類や規模によって適切な方法を選ぶことが大切です。各計算方法の概要と適用条件を解説します。

国税の計算方法

消費税の国税計算には、「原則課税(一般課税)」「簡易課税制度」「みなし仕入率」という3つの主要な方法があります。各方法は異なる計算式を用い、事業者の規模や業種によって適用されるシステムが異なります。

原則課税(一般課税)

原則課税(一般課税)は消費税の計算方法の基本形です。原則課税では、課税期間中に発生した課税売上げにかかる消費税額から、同じ期間中の課税仕入れ等にかかる消費税額を差し引いた額が最終的な消費税額となります。

  • 課税期間中の課税売上に係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額

この計算では、異なる税率ごとに課税売上げと課税仕入れを区分して計算した後に合計します。中小事業者の場合、2023年9月30日まで、売上税額の計算において簡易課税制度の特例が適用されることもあります。

課税仕入れ等に係る消費税額を差し引くためには、帳簿や請求書などの保存が必要です。これにより、正確な課税額の計算と適切な消費税の納税が可能となります。原則課税の方法は、消費税を的確に計算し納税義務を果たすために事業者にとって重要な知識です。

簡易課税制度

簡易課税制度は、中小事業者の消費税計算を容易にするための制度です。簡易課税制度では、課税期間中の課税売上にかかる消費税額に、事業の種類に応じた一定の「みなし仕入率」を乗じた金額を課税仕入れ等に係る消費税額として計算します。

  • 課税期間中の課税売上に係る消費税額-(課税期間中の課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額

簡易課税制度は、課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択可能で、納税事務の負担を軽減します。みなし仕入率は事業種別に設定されており、たとえば、卸売業は90%、小売業や農林漁業(飲食料品譲渡事業)は80%、製造業等は70%などです。

ただし、簡易課税制度の使用は必ずしも有利とは限らず、実際の仕入れに含まれる税額を具体的に計算しないため、特定の状況では原則課税よりも不利になる可能性があります。事業者は自身の状況に合わせて最適な課税方法を選択することが大切です。

みなし仕入率

みなし仕入率は、簡易課税制度における重要な要素です。みなし仕入率を使用することで、事業者は納税時に利用する消費税の仕入れ税額を簡易に計算できます。みなし仕入率は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が利用可能で、事前に届出が必要です。

事業区分に応じて、次のようなみなし仕入率が設定されています。

  • 第1種事業(卸売業):90%
  • 第2種事業(小売業等):80%
  • 第3種事業(製造業等):70%
  • 第4種事業(その他):60%
  • 第5種事業(サービス業等):50%
  • 第6種事業(不動産業):40%

卸売業を営む事業者の場合、売上にかかる消費税額の90%が仕入れにかかる消費税額とみなされます。この制度により、実際の仕入れごとの消費税計算の手間を省くことが可能です。

2種類以上の事業を営む場合は、課税売上高を事業の種類ごとに区分し、各事業区分ごとの課税売上高に係る消費税額にみなし仕入率を掛けて計算する必要があります。簡易課税制度は中小事業者の消費税計算を効率化するための便利な仕組みです。

地方消費税の計算方法

地方消費税の計算方法は、消費税額に地方消費税率を掛けることで算出します。

  • 消費税額 × 地方消費税率 = 地方消費税額

現行の地方消費税率は「78分の22」と設定されており、全体の消費税率10%のうち、国税が7.8%、地方税が2.2%という割合を意味しています。

地方消費税は、各都道府県や自治体に支払われる消費税の一部であり、地域の財政資源として重要な役割を果たしています。例として、消費税の納付税額が100万円であった場合、地方消費税の納付税額はその22%、22万円です。

地方消費税の計算方法は、消費税の国税部分と地方税部分を明確に区分し、各自治体への適切な税収配分を可能にするために設けられています。地方消費税の適用により、地方自治体は自らのサービスやインフラ整備などの財源を得ることが可能です。

区分経理と仕入税額控除とは

区分経理と仕入税額控除の概念は、課税事業者が消費税計算において、取引ごとの適切な税額を把握し控除を行うための基礎です。

2023年9月までは「区分記載請求書等保存方式」で管理され、10月からはより詳細な「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」に移行しました。より透明で正確な消費税計算と申告ができる制度となっています。

2023年9月までは「区分記載請求書等保存方式」

2023年9月までの「区分記載請求書等保存方式」は、課税事業者が仕入税額控除を適切に受けるために重要です。

事業者は区分経理に対応した帳簿を整備し、請求書に「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」などを記載する必要があります。

免税事業者は仕入税額控除を受けることはありませんが、課税事業者との取引で区分記載請求書等の提出を求められることがあるため対応が必要です。

区分記載請求書等保存方式は、消費税の軽減税率制度やインボイス制度に対応するために設けられたもので、2023年9月までの適用となっています。

2023年10月以降は「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」

2023年10月以降「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入され、課税事業者はこの制度に基づいて仕入税額控除を受けることになりました。インボイス制度では、課税事業者が仕入れに関する消費税額を控除するためには、適格請求書を保存する必要があります。

適格請求書とは、売手が買手に対して適用税率や消費税額等を明示する書類を指します。電子データも含まれ、請求書・領収書・レシートなど、形式は問われませんが、必要な記載事項が増えるため、注意が必要です。

具体的には「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」などを記載することが求められ、正確な消費税額の計算と記録ができます。

インボイス制度の導入により、課税事業者はより正確な消費税管理が求められます。異なる税率の取引が混在する場合には、適切な適格請求書の管理が重要です。

免税事業者も課税事業者との取引において、適格請求書の交付を求められる場合があります。

消費税の申告・納付方法

消費税の申告・納付には以下の種類があります。

  • 確定申告・納付
  • 中間申告・納付
  • 届出

それぞれの違いを解説します。

確定申告・納付

消費税の申告と納付は、個人事業者は翌年の3月末日まで、法人は課税期間の末日から2ヶ月以内に行う必要があります。申告する際には、消費税と地方消費税の合計額を所轄税務署に提出します。

納付方法は、電子納税(e-Tax)、振替納税、クレジットカード、コンビニ納付、窓口納付の5つです。還付申告書を提出する際には、消費税還付申告に関する明細書の添付が必要です。

中間申告・納付

中間申告・納付は、直前の課税期間の消費税額が48万円を超える事業者が必要とされるものです。48万円超400万円以下の場合、年1回の中間申告が必要で、消費税額の2分の1を納付します。

400万円超4,800万円以下の場合は、年3回の中間申告で4分の1ずつ納付し、4,800万円超の場合は年11回の中間申告で12分の1ずつ納付が求められます。

地方消費税額もあわせて納める必要があり、直前の課税期間の消費税額が48万円以下の事業者でも自主的に年1回の中間申告・納付を行うことが可能です。期限内に正確な申告・納付を行わないと、加算税や延滞税の対象になる可能性があります。

納付方法は、電子納税(e-Tax)、振替納税、クレジットカード納付、コンビニ納付、窓口納付の5つの方法があります。

届出

消費税法において、事業者が届出を行う必要がある主なケースは以下の通りです。

課税売上高の変動: 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたり、1,000万円以下になった場合、事業者は「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を提出。

特定期間の課税売上高: 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、事業者は「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」を提出。

新設法人: 資本金または出資金が1,000万円以上の新設法人は、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出。

免税事業者の課税事業者選択: 免税事業者が課税事業者を選択する場合、またはその選択を取りやめる場合、「消費税課税事業者選択(不適用)届出書」を提出します。この選択には、通常2年間の変更禁止期間が設けられています。

簡易課税制度の選択: 簡易課税制度を選択する場合やその選択を取りやめる場合、「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書」が必要です。こちらにも2年間の変更禁止期間があります。

課税期間の特例選択: 課税期間の特例を選択、変更、取りやめる場合、「消費税課税期間特例選択・変更(不適用)届出書」を提出。

法人税申告期限の延長: 「法人税の確定申告書の申告期限の延長の特例」を受ける法人が消費税の確定申告の申告期限を延長する場合、「消費税申告期限延長(不適用)届出書」が必要です。

これらの届出は、事業の状況や選択に応じて適切に行われる必要があり、税務上の適正な管理を確保するために重要です。

消費税法に関わる資格・消費税法能力検定とは?

消費税法に関する知識を深め、実務に応用できる能力を認定する「消費税法能力検定」について紹介します。

消費税法能力検定は、公益社団法人全国経理教育協会によって主催され、消費税の会計処理や税務処理に関する知識の習得度を評価するものです。消費税法能力検定では、税務署への書類作成や日常業務での応用的な税務処理など、消費税計算に関する幅広い知識が問われます。

消費税法能力検定は、税務会計能力検定試験の一部として位置づけられており、経理・財務部門でのキャリアアップや専門知識の習得に役立つ資格として認識されています。就職や転職を目指す方々にとっては、経理・財務職への道を切り開く重要なステップとなるでしょう。

消費税法能力検定は、税務会計の分野での専門性を証明する資格として、また他の経理・財務関連資格取得への基礎としても重要です。消費税法能力検定を取得することで、消費税法に関する知識を深め、経理・財務の実務において役立つでしょう。

参考:SYNCA「消費税法能力検定とは?試験の概要や難易度、取得するメリットも解説」

消費税について学べば実務やキャリアアップに役立つ

消費税法は、商品やサービスの提供にかかる税金の法律です。消費税を理解し適切に処理することは、経理業務において重要です。消費税の計算方法には原則課税と簡易課税制度があり、事業の性質や規模に応じて選択します。軽減税率や仕入税額控除の適用なども重要なポイントです。

2023年9月までは区分記載請求書等保存方式が適用され、10月からは適格請求書等保存方式(インボイス制度)へ移行。インボイス制度により消費税の仕入税額控除を受けるためには、適格請求書の保存が必要です。

消費税法能力検定は消費税に関する専門知識を証明する資格で、実務に直結する知識やスキルを身につけることができ、就職やキャリアアップに役立つでしょう。

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