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労災(労働災害)とは?種類や給付される労災保険、加入手続きや申請方法について解説

シンカキャリア編集部

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更新日:2025/03/18

仕事中などにケガをしたり、業務に関連して病気になった場合には、労災保険の給付を受けられる可能性があります。万が一のときには心強い制度ですが、労災という言葉は知っていても、詳しい内容は知らないという人がほとんどではないでしょうか。この記事では、労災と労災保険の概要、労災の種類、労災保険の給付の種類について解説しています。対象となる人や、労災保険の申請方法、注意点なども詳しく説明しますので、理解を深め、いざというときに役立ててください。

目次

仕事中などにケガをしたり、業務に関連して病気になった場合には、労災保険の給付を受けられる可能性があります。万が一のときには心強い制度ですが、労災という言葉は知っていても、詳しい内容は知らないという人がほとんどではないでしょうか。

この記事では、労災と労災保険の概要、労災の種類、労災保険の給付の種類について解説しています。対象となる人や、労災保険の申請方法、注意点なども詳しく説明しますので、理解を深め、いざというときに役立ててください。

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労災とは(労働災害)

労災(労働災害)とは、労働者が業務に従事することによって被った負傷や疾病、死亡などを指す言葉です。建設現場での転落などによるケガから、「過労死」など職場での過重負荷による疾病や、パワハラなどの心理負荷による精神障害なども含まれます。

また、通勤中や出張中の事故なども労災の対象です。これら業務に関わる傷病などが労災であると認定されると、治療にかかる費用や療養のための生活補償を受けられる「労災保険」のことを労災と略して呼ぶこともあります。

労災保険とは

労災保険とは、労働者が業務上の事由や通勤中に起きた負傷、疾病、障害、死亡に対して、労働者や遺族に支払われる給付金制度のことです。正式には「労働者災害補償保険」といい、労働者やその遺族の生活を守るための社会保険です。

労災による傷病に対する治療費などの補償を行うだけでなく、その後の社会復帰の促進や労働者への福祉の充実を目的としています。ほかの社会保険と違って、保険料は全額事業主が負担しますし、健康保険の傷病手当金などと比較しても補償は手厚いです。

労災保険を単に労災と略すこともあり、1人でも労働者を雇う事業者は加入が義務付けられています。ここでいう労働者には、正社員だけでなくアルバイトやパートタイマーも含まれます。

労災保険が適応される労災の種類

労災保険が適用となる労災は、大きく以下の3つに分けられます。それぞれについて労災と認定されるための要件などが決められています。

業務災害

労災で最も多いのが業務災害です。業務災害とは、従業員が業務に従事している際に負ったケガや病気、障害、死亡などのことです。

以下のような場合に業務災害と認められます。

  • 労働時間中または残業中の業務行為
  • 事業所の施設、設備などに要因がある
  • 出張中や業務目的の外出中に発生した負傷
  • 業務に関わる有害物質へのばく露
  • 過度な作業負荷が要因となる病気

労働時間中の負傷であっても、個人間のもめごとで殴られたり、故意によるケガなど、業務に起因しない場合は労災とは認められません。

参考:厚労省「労災保険給付の概要」

複数業務要因災害

複数業務要因災害(※1)は、複数の事業場で働く労働者が労働時間やストレスなどの業務負荷により負った傷病のことです。ここでは脳や心臓の疾患、精神障害などが認定の対象です。

ダブルワークの推進などにより複数の事業所で働く人は増加しています。その状況に鑑みて令和2年にはすべての勤務先の賃金を合計した額を元に給付金が算定されるようになり、より手厚い補償となりました。

(※1)参考:厚生労働省「労働者災害補償保険法の改正について」

通勤災害

通勤災害は、職場への通勤中や帰宅中に負う傷病のことです。通勤災害の場合は、合理的な経路と方法を使用した、業務に必要な移動であることが認定のポイントです。

以下のような場合に通勤災害とみなされます。

  • 就業のために住居から事業場への移動
  • 事業場からほかの事業場への移動
  • 単身赴任先の住居と帰省先の住居間の移動

合理的な経路や方法を逸脱・中断した場合には対象外となりますので、注意が必要です。例外的に、日用品の購入やそれに準ずる行為があった場合については認められています。

労災保険の保険料

労災保険の保険料は、企業が全額負担することになっています。保険料の額は、従業員の賃金の総額に、業種ごとに決められている労災保険料率をかけて算出します。保険料率は「2.5/1,000から88/1,000」となっており、事故が発生しやすく、労働災害リスクが高い業種ほど保険料率は高い設定です。

労災保険料率の例

金属鉱業

88/1,000

林業

60/1,000

船舶製造または修理業

23/1,000

農業または海面漁業以外の漁業

13/1,000

通信業、放送業、新聞業

2.5/1,000

参考:厚生労働省「労災保険料率表」

労災保険の給付の種類

労災保険の給付は以下の種類に分けられます。治療にかかる医療費が無料になったり、長期間支給される年金なども用意されています。

療養(補償)給付

労災による疾病の治療を受けるための治療費の給付のことです。診察・薬剤・入院費などの医療費や、病院に通う交通費、居宅での看護などに対して支払われます。

指定の医療機関での療養であれば、労災保険から医療機関へ直接医療費が払われるため、無料で診察が受けられます。それ以外の医療機関で治療を受ける場合でも、後日その治療費の受給が可能です。

休業(補償)給付

休業(補償)給付は、労災による療養のため働くことができず、賃金を得られない場合に給付されます。労災によって働けなくなった日の4日目から、休業1日につき給付基礎日額の80%(保険給付60%と特別支給金20%)が支給されます。

業務災害の場合、休業3日目までは平均賃金の60%が企業から支払われる休業補償の対象です。休業(補償)給付は、特別支給金がある分、健康保険の傷病手当金よりも受け取る額が大きくなっています。

傷病(補償)年金

傷病(補償)年金は、労災による療養を始めてケガや疾病が1年6ヶ月を経過しても治っておらず、かつ傷病が傷病等級第1〜3級に当てはまる場合に支払われます。重い症状があり、治療を継続する必要があると認められると支給が受けられます。

症状が固定し、これ以上治療しても効果が望めない場合は「治癒」状態とされ、完全に回復していなくても支給の対象外です。

参考:厚労省「労災保険 休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金 の請求手続」

障害(補償)給付

障害(補償)給付は、労災を原因とするケガや疾病が治っても、一定の障害が残った場合に支払われます。対象になるのはこれ以上治療を続けても症状が改善されず、固定した状態(治癒)になったときです。

支払われるのは障害等級(※2)により、毎年支払われる年金と、1回限りの一時金に分けられます。

(※2)参考:厚生労働省「障害等級表」

介護(補償)給付

労災が原因のケガ・疾病で介護を受けている場合には、介護にかかった費用などが支給される制度もあります。これは、傷病(補償)年金、または障害(補償)年金を受けており、所定の障害等級にあてはまり、実際に介護を受けている人が対象です。

介護の必要な程度と傷病・障害の等級などから判断され、給付内容が決定されます。対象となる場合であっても、病院に入院していたり、施設などに入所している場合は十分に介護サービスが受けられているものとして支給は受けられません。

遺族(補償)給付

労災により労働者が死亡した場合、遺族には原則として遺族(補償)給付が支給されます。遺族(補償)給付には毎年受け取れる年金と、1回限りの一時金の2種類があり、遺族(補償)年金を受け取れる条件に当てはまらない遺族の場合は、遺族(補償)一時金が支払われます。

また、労災により死亡した人の葬祭をする人に支払われる葬祭給付もありますが、こちらは葬儀を行なった人が支払い対象です。

二次健康診断等給付

二次健康診断等給付とは、企業が指示する定期健康診断などで脳や心臓疾患関連の一定項目に異常が認められたとき、二次健康診断の受診費と特定保健指導料が給付される制度です。

これは、それ以前に脳や心臓疾患の症状を有していない、特定の検査項目で異常所見があると診断された場合に対象となります。

二次健康診断等給付は年に1回、無料で受診できます。

労災保険の加入対象者と加入手続き

ここでは労災保険の加入対象者と加入手続きについて説明します。

加入対象者

労災保険は基本的に事業に使用されるすべての労働者に対して適応されます。事業者は1人でも従業員を雇用していれば労災保険に加入しなくてはなりません。

加入対象者は雇用形態や事業規模、雇用期間、労働時間などは関係なく、正社員からアルバイト、パートタイマーなども含まれます。ただし、一部対象外となる場合もありますので以下で紹介していきます。

適用者となる者(※3)

  • すべての一般労働者
  • 船舶所有者に雇用されている船員労働者
  • 派遣労働者
  • 海外出張者

適用者とならない者

  • 企業や法人の代表兼、業務執行権を有する役員
  • 事業者と同居している親族
  • 海外派遣者

労災保険は雇用保険とあわせて労働保険と呼ばれており、雇用保険は「週の労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある」などの条件に当てはまる場合に加入対象となります。

(※3)参考:大阪労働局「労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲」

特別加入制度と対象者

労災保険には、事業者や自営業者など原則労災保険に加入できない人でも、特定の条件を満たすことで加入が認められる「特別加入制度」があります。特別加入が認められているのは以下の人です。

特別加入制度の対象者

  • 中小事業主
  • 一部の一人親方及び自営業者
  • 特定作業従事者
  • 海外派遣者

労災保険の加入手続き

労災保険の適用事業所となった場合には、企業は労災保険への加入手続きを行う必要があります。従業員を雇用し、事業を開始した日から10日以内に「労働保険関係成立届」を労働基準監督署に提出しましょう。

保険関係成立日から50日以内に「労働保険概算保険料申告書」により保険料を申告・納付する必要があります。以降は年に1回「年度更新」の際に、1年分の保険料を申告・納付しなくてはなりません。

労災保険の申請方法

ここでは労災保険の申請方法について説明します。被災した労働者本人は療養中で手続きをすることが難しいため、事業主が代わって手続きするのが一般的です。

請求書を入手する

まずは労災保険の請求書を入手します。給付内容ごとに請求書フォームが違うため、目的の給付に応じた請求書の様式を確認し、厚生労働省のホームページや労働基準監督署から取り寄せましょう。

基本的には請求書を印刷したものに記入しますが、直接入力できるファイルもダウンロードできるようになっています。

請求書を作成する

労災保険請求書の作成は企業、労働者本人のどちらが行っても問題ありません。事故の発生状況や症状・ケガの様子など必要事項を正確にわかりやすく記入します。請求書のダウンロード先の記入例などを参考にして記入することも可能です。

最後に、事故の発生状況が記載内容通りであるかを事業主が証明する欄があるので、確認してから署名してもらいます。万が一、事業主の署名がもらえない場合には、労働基準監督署に相談してみましょう。

添付書類と請求書を提出し結果を待つ

でき上がった請求書と、給付の種類に応じた添付書類とをあわせて労働基準監督署に提出します。療養(補償)給付や二次健康診断等給付に関する関係書類は病院経由で提出となりますので、手続きは不要です。

労働基準監督署では請求内容の調査が行われ、その結果労働災害と認定されると保険が給付されます。

労災保険の注意点

労災保険の受給に関しては以下の点に注意が必要です。

併給調整によって減額され支給されることがある

労災の給付と公的年金からの遺族年金・障害年金は並行して受給できます。ただし、その場合は労災の給付額は併給調整によって両年金の合計額よりも減額となります。併給調整とは両制度から受け取る年金額の合計が被災前の賃金よりも高くなることを防ぐためのものです。

それでも労災の対象とならず公的年金の給付のみのケースよりは手厚い保障となるでしょう。

全損害が補償されるわけではない

労災保険給付は一律ではなく、治療日数や賃金額に応じて支給されます。そのため、支給される金額が従業員の実際の損害には足りないこともありえます。また、慰謝料なども労災保険の補償対象ではありません。

このように労災では全損害が補償されるわけではないことを覚えておきましょう。

労災による給付制度を理解して安心して業務に取り組もう

仕事中などで業務に関連して傷病を負った場合、労災の対象となり、申請して認められると給付金を受け取ることができます。これにより労働者は安心して業務に就くことができ、もしも労災に遭ってしまった場合も生活が補償されます。

労災の概要を知っておくと、被災した場合にも治療費や生活費をすべて自分で負担する必要がないことがわかり、しっかり治療に専念できます。労災内容を理解して、いざというときに役立ててください。

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