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横領とは?
横領とは、「自己が占有する他人のものを不法に領得する意思を外部に発現する行為」と解されるのが通例です。占有は、自分の手元にあり、支配したり持ち去ったりできる状況を指します。領得は、他者の所有するものを自分のものあるいは第三者のものとするため取得することです。
つまり、他人の財産が手元にあるのをいいことに消費したり奪ってしまうことを横領といいます。横領罪が成立するのは、相手から信頼されて委託されている物である点がポイントになります。
横領罪は「不法領得の意思が確定的に外部に表現されたとき」に成立する犯罪ですので、預かった時計を質店に持って行ったが査定価格が安すぎて中止した場合は横領罪には問われません。
業務によって会社のお金などを扱う経理担当者などは、会社の財物を占有している状態です。会社の信用を受けて財物を委託されているため、それを管理する大きな責任があり、横領行為に及ぶと重い罪に問われます。
横領と着服・窃盗・背任の違い
横領と混同されやすい言葉に着服・窃盗・背任があります。ここではそれらと横領の違いについて解説します。
横領と着服の違い
横領が刑法上の用語であるのに対し、着服は「不正な手段でごまかして自分のものにする」という意味の一般用語です。横領は、法律上、自分が占有していることや所有者のものを勝手に処分することを表す証拠や評価が必要になります。
しかし、着服の場合はそのような厳密な証拠などはいりません。そのため、着服したとされる行為によって、横領罪が成立するケースもあれば、成立しないケースもあります。刑法で裁かれないとはいえ着服が発覚した場合は、賠償するなど相応の責任を問われるのが一般的です。
横領と窃盗の違い
横領と窃盗は他人の物を奪う点で似ていますが、窃盗罪は他人の財物を窃取したときに成立する犯罪類型で、横領罪とは別の罪になります。横領と窃盗の違いは、財物が自分の占有下にあるか(自分が預かっている他人のものなのか)、他人の占有下にあるか(他人が持っている他人のもの)で決まり、前者が横領で、後者が窃盗です。
たとえば、人の持っているバッグを盗む行為(ひったくりや置き引き等)は窃盗ですが、預かったバッグを持ち去った場合は横領になります。両者は委託信頼関係の有無にも差があります。窃盗の場合は基本的に所有者との信頼関係は不在です。
奪った物の占有権源の所在が紛らわしいような場合には、個別の事情を総合的に考慮して窃盗罪か遺失物等横領罪かが決定されることになります。
横領と背任の違い
横領と背任は、相手の信用を裏切るという点で似ているため、違いが分かりづらい罪状です。背任罪は、「他人のために事務を処理するものが自己もしくは第三者の利益を図る目的、または本人に損害を与える目的で任務に背く行為をし、財産上の損害を与えた場合」に成立する犯罪です。
物の不法領得については横領罪、その他の背任行為については背任罪となります。背任罪が成立するのは、単に任務に背いただけでなく、自分や第三者の利益のため、または損害を与える目的であった場合になります。
たとえば、取引先への便宜を図るため、会社が決めた卸売価格より低い金額で販売する行為は背任です。横領罪では特定の財物が客体とされるのに対し、背任罪では全財産規模で財産上の損害を与えたことが問題視されます。
横領は3種類に分類できる
横領は単純横領罪(委託物横領罪)・業務上横領罪・遺失物等横領罪の3種類に分類されます。それぞれ内容とどのような場合に成立するのか、その要件を解説します。
単純横領罪
横領罪(単純横領罪・委託物横領罪)とは、「自己の占有する他人のものを領得したとき」に成立する犯罪類型です(刑法第252条第1項)(※1)。これは他の2種類と区別するため単純と呼ばれます。預かった金銭を使ってしまったり、自分のものにしてしまう行為のことで、時計や貴金属など預かっている物を勝手に売却する行為も横領です。
相手から委託されて占有している物に対して行う犯罪ですが、自分の所有物に対しても問われることがあります。たとえば、自分の財産であっても公的機関から「保管」が命令されているものは自由に処分することはできません。命令を破って勝手に処分すると単純横領罪となりますので注意しましょう。
(※1)参考:法令リード「刑法」
単純横領罪の成立要件
単純横領罪の成立要件は、以下の2点です。
- 自己の占有する物
- 横領行為
対象物が物、つまり財物であることが要件であり、財産権など「財産上の利益を目的とする権利」などは対象外です。単純横領罪における「自己が占有」とは、物を事実上支配していることに加え、法律的に支配していることも含まれます。また、占有する物が他人の委託に基づく他人の物であることも必要です。
横領行為とは、「不法領得の意思を実現する一切の行為」を指すとされています。所有者でないのに売買、贈与、費消、抵当権の設定を行った場合など、幅広い行為が横領行為に該当します。
業務上横領罪
業務上横領罪は、業務上自己が占有する他人の物を横領したときに成立します(刑法第253条)。会社が注意しなければならないのが、この業務上横領罪です。経理担当者などは日頃から会社のお金を取り扱っていて、送金や引き出しは自由にできる立場です。
会社のお金を規定や指示に従い管理するのではなく、自分のものにしてしまうと業務上横領罪になります。また自分のものではなく第三者に勝手に渡してしまう行為も業務上横領罪です。会社から信用され、責任を持って仕事に取り組む立場ですので、業務で占有しているものを領得した場合は、他の場合より重い罪になります。
業務上横領罪の成立要件
業務上横領罪の成立要件は、以下の3点です。
- 自己の占有する他人のもの
- 横領行為
- 業務上の占有者であること
成立要件の2つ目までは、単純横領罪と同じです。業務上横領罪が成立するためのポイントは、3つ目の業務上の占有であるかないかです。業務とは「委託を受けて物を管理・占有・保管することを内容とする事務」を意味します。代表的なものには、経理担当者や質屋、倉庫業者などが当てはまります。
業務上横領罪に問われるのは、経理担当者が会社の金品を自分のものにしたり、倉庫で預かっている物品を勝手に売買するなどの行為です。業務上占有しているものを領得する行為は、他の場合に比べ重い責任を負った上での横領となるため、その分罰則も厳しくなっています。
遺失物等横領罪
遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)とは、遺失物や漂流物、その他占有を離れた他人の物を領得したときに成立する犯罪類型です(刑法第254条)。横領罪の大半は所有者から頼まれて占有している状態で起こります。しかし、そのような背景がなくとも成立するのが、遺失物等横領罪です。
遺失物等横領罪には落とし物を自分のものにしてしまう行為や、誰かが置いていった自転車に乗り去る行為などが当てはまります。他の横領より小規模になりますが、犯罪を意識しないで気軽な気持ちで行えるため、比較的件数の多い犯罪となっています。
遺失物等横領罪の成立要件
遺失物等横領罪の成立要件は以下の2点です。
- 遺失物や漂流物など他人の占有を離れた他人のもの(占有離脱物)
- 横領行為
遺失物等横領罪の成立のポイントは、物を占有するにあたって所有者から委託されていないことが要件です。所有者が誰であるかはっきりしない場合もあり、横領罪の中でも比較的軽い罪状といえます。そのため、罰則には罰金刑も挙げられており、懲役なしで済む可能性があります。
各横領罪の罰則と公訴時効期間
横領罪の罰則は種類ごとに定められています。また、横領罪には公訴時効期間がありますが、これも種類によって違います。横領罪を犯したとしても公訴時効期間が過ぎてしまうと罪を問うことができません。捜査機関の対応ができなくなるので、刑事告訴も難しくなります。
単純横領罪の罰則と公訴時効期間
単純横領罪の法定刑は、5年以下の懲役です。法定刑に罰金刑が挙げられていないので、執行猶予付き判決を得られなければ実刑判決で刑務所に収監されることになります。横領の額を問わず実刑となるため、重い罰則といえるでしょう。
単純横領罪の公訴時効期間は5年です。時効の起算点は3種類とも同じで、横領が終わったときになります。横領行為が複数回行われた場合は、最後の横領を行ったときを起算点とします。
業務上横領罪の罰則と公訴時効期間
業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役です。横領罪としては最も重い罪となり、単純横領罪と同じく罰金刑はありませんので、執行猶予がつかなければ実刑が確定します。
公訴時効期間も単純横領罪より長い7年です。業務上横領罪は長期間、複数回にわたって行われることが多い犯罪です。この場合も時効の起算点は最後に横領行為を行ったときになります。
横領は企業にとって大きなダメージとなりますので、しっかりとした管理体制やチェック方法を用いて、早期に問題が把握できるようにしておくことが肝心です。
遺失物等横領罪の罰則と公訴時効期間
遺失物等横領罪の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料です。横領罪の中では唯一罰金刑の適用があり、最も軽い罰則になっています。
公訴時効期間も一番短い3年です。遺失物等横領罪の場合の時効の起算点は、遺失物を手にしたときです。ここでは手に入れた金品などの費消や売却などせず、家にずっと置いていた状態であっても、遺失物横領罪が成立します。
横領が発覚したらどうなる?
横領したことが発覚した場合、逮捕や勾留されたり、会社を解雇される可能性があります。また、横領によって取得した物の賠償責任も問われます。
逮捕や勾留される可能性がある
横領が発覚したら、被害者は被害届や告訴状を提出します。被害届や告訴状が提出されたら逮捕や勾留される可能性があります。必ず逮捕・勾留されるとは言えないものの、横領の金額が大きい場合や長期的に犯行が行われた場合は逮捕される確率が高いでしょう。
業務上横領罪の罰則は10年以下の懲役で、3年を超える懲役の場合は執行猶予がつかずに刑務所に収監されることになります。逮捕・収監されると社会的に大きなダメージを受け、仕事も信頼も無くしてしまう可能性があります。また、逮捕歴があると将来的にも制約がかかることが多いでしょう。
会社から解雇される可能性がある
多くの企業は刑事罰を受けると懲戒解雇事由に当たると規定しています。横領罪は刑事罰の対象となる犯罪であり、横領が発覚すれば解雇の中でも最も厳しい処分である懲戒解雇が免れないでしょう。
判例では、1万円を横領した社員の懲戒解雇が有効とされた事例がありました。企業にとって横領は避けがたい大きなリスクであり、会社の期待を裏切った代償として厳しい処分を課されるのは当然のことといえるでしょう。
民事責任を問われる可能性がある
横領が発覚したら、横領罪による刑事罰だけでなく民事責任も問われる可能性があります。民事責任とは、被害者が被った損害に対して賠償責任を負うことで、横領した物を全額返済できれば示談で済む可能性が高くなります。
横領したものを誰かに売ったり、ギャンブルで使い込むなどして返済できない場合は告訴状や被害届を提出され、逮捕される可能性が高まるでしょう。横領罪は故意で加えた不正行為なので自己破産してもそれに基づく損害賠償責任からは逃れられません。
払えないほど多額の損害賠償を請求されても、いざとなれば自己破産すればいいなどと安易に考えないようにしましょう。
横領が発覚して逮捕されそうな場合や逮捕された場合にすべきことは?
横領が発覚したら、被害者に対して謝罪をし、横領した金額の弁償が必要です。すぐに弁護士に相談し、相手との話し合いの際には間に立ってもらうようにすると、示談交渉がスムーズに進みます。弁護士の的確な対応により示談だけで済むと、逮捕・勾留を避けることが可能です。
横領の事実があるにもかかわらず、否認したり逃げたりすると心証が悪くなり、示談だけで済まなくなる可能性が高くなります。横領した金額が大きい場合は分割して返済できるかどうか、相手と相談しましょう。
もしも「横領するつもりはなかった」「所有者のためになると思った」などの事情がある場合は、不法領得・横領行為への該当性を争う余地があります。その場合にも弁護士に相談し、納得のいくような処理方法を仰ぎましょう。
横領は重い刑罰の対象となることもあると覚えておこう
横領罪は、会社のお金を使い込んだり、落とし物を自分の物にした場合などに問われる犯罪です。横領の内容により、遺失物横領罪のように罰金で済むような比較的軽い刑罰と、業務上横領罪のように10年以下の懲役を言い渡される可能性のある重い刑罰に分けられます。
横領によって逮捕や勾留されることになれば、社会的な信用も仕事も失う可能性が大きく、人間関係も破綻するかもしれません。また、業務上横領が発覚すると、被害者である企業の経営にも大きな影響があり、損害賠償額も多額になる可能性があります。
持っているものを懐に入れるような、手軽にできる犯罪であっても、仕事や人生設計に大きなダメージとなることをよく覚えておきましょう。もし、自分の行っていることが横領罪に当たるかもしれないと不安な気持ちになる場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。